社会・国・世界

移民先生の米国市民権修得宣誓式、国を愛するということ

800px-thumbnail米国には「憲法の週(Constitution Week)」(September 17 to September 23)というのがある。1787年9月17日に制定された憲法についての教育促進を目的とした週。

 

長男長女の中学校では、アメリカ市民権収得のための宣誓式が行われた。中学校で生徒達を前に実際の宣誓式が行われるというのは稀なことなのだけれど、長男長女の通う中学校の先生の一人が、この日アメリカ市民になるということで、体育館に全校生徒800人が集まっての宣誓式となった。「生きた公民の授業」と、長男長女の社会科の授業でもこの日に向けての話し合い何度か。少しフォーマルな服を着てくるようにと指導され、地元メディアも駆けつけ(写真記事by Anchorage Daily News)。

 

15年近くアンカレッジの小中学校で教え、今はスペイン語イマージョンプログラムの8年生にアメリカの歴史とスペイン語を教えるベネズエラ出身の先生。その他、ドイツ、ドミニカ共和国、マケドニア、ブータン、コロンビア、イギリス、セネガル、メキシコ、ペルー出身の9人が、この日アメリカ市民となった。

 

今週アメリカ全土でアメリカ市民になるのは、1万8千人近くといわれる。毎年70万人近くが市民権を収得するとのこと(アラスカ人口と同じくらい!)。

 

様々な書類審査、英語でのテストやインタビューを終え、市民権収得最後のステップとなる宣誓式。宣誓の他に、来賓挨拶、州議員やオバマ氏からのビデオ、8年生ジャズバンドの演奏、愛国心についてのビデオ鑑賞があり、一時間半ほど。

 

生徒達に囲まれ、右手を胸に当て、宣誓を誓う10人。

 

宣誓(Oath of Allegiance)の内容は主にこういったもの:

 

1.以前保持したすべての外国への忠誠の放棄の誓い
I absolutely and entirely renounce and abjure all allegiance and fidelity to any foreign prince, potentate, state, or sovereignty of whom or which I have heretofore been a subject or citizen

 

2.国内外の敵からアメリカ合衆国憲法を守る誓い
I will support and defend the Constitution and laws of the United States of America against all enemies, foreign and domestic

 

3.法律が定めた場合、兵役に従事する誓い (戦闘員もしくは非戦闘員として)
I will bear arms on behalf of the United States when required by the law I will perform noncombatant service in the Armed Forces of the United States when required by the law

 

4.国家の大事の際、法律が定めた市民としての義務を果たす誓い
I will perform work of national importance under civilian direction when required by the law; and that I take this obligation freely without any mental reservation or purpose of evasion

 

そして最後は、「ですから、神よお助けください(so help me God)」 で終わる。

 

(宗教的理由により3は省いてもよい自由が与えられている。)

 

「アメリカ市民宗教(American civil religion)」という社会学の説がある。アメリカ合衆国というのは一種の宗教でもあるという見方。以下のような考えは、確かにアメリカ国内で広く行き渡った文化的現象と言えるかもしれない:

 

•アメリカは神に選ばれた国。”America is God’s chosen nation today.”
•大統領の権限は神からのもの。”A president’s authority…is from God.”
•社会的公正は法によってのみでなく宗教にもよらなくてはならない。”Social justice cannot only be based on laws; it must also come from religion.”
•神はアメリカ人の経験を通して知られ得るもの。”God can be known through the experiences of the American people.”
•建国記念日などの休日は愛国的であるだけでなく宗教的でもある。”Holidays like the Fourth of July are religious as well as patriotic.”[5]
•ゴッド・ブレス・アメリカ! ”God Bless America”
(ウキペディアより)

 

 

公立の学校では、毎朝生徒達が右手を胸に当て、次のような「忠誠の誓い」を唱える。我が家の上四人もですが、公立学校に通う子供たちは、毎日のことですから皆暗記しています。

 

“I pledge allegiance to the Flag of the United States of America, and to the Republic for which it stands, one Nation under God, indivisible, with liberty and justice for all.”
(私はアメリカ合衆国国旗と、それが象徴する、万民のための自由と正義を備えた、神の下の分割すべからざる一国家である共和国に、忠誠を誓います)(ウキペディアより)

 

こうして見てくると、市民権収得宣誓式というのは、アメリカという国家への「入信式」にも見えなくありません。そしてどんな国家というのも、大なり小なりこうした宗教的性質を持っているのではないかとも思います。

 

 

 

子供たちと、「国を愛する」ということについて、話しました。

 

お世話になり、与えられ、守ってもらうものを愛するのは、尊いこと。

それでも、他者にもまた、そんな愛するものがあるのかもしれないと覚えておく。

自身の愛するものを守るために、自身の愛するものの繁栄のために、他者の愛するものを踏みにじってもいいのかということ。

自身の愛するものと、他者の愛するものとの間で、何とかして互いが納得する着地点は見つからないかと模索していくことの大切さ。

どんな国でも、国民一人一人は温かく善き人々だったりする。そんな一人一人の温もりを決して忘れないこと。

一人一人の温もりをおきざりにして、国家を語らないこと。

 

 

生徒達に慕われてきた先生の、市民権修得を祝いつつ。

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