こうしたら、相手はどう感じるだろう?
相手の身になって感じてみる。
少しでもそう心がけてみる。
すると、世界はもう少し優しい場になるのかもしれません。
といって、共感する力って養うもの? 生まれつきの性質なのじゃない?
確かに、生まれつきの「得て不得手」はあるようですが、環境や働きかけによって、育んでいくことができるという調査研究は山のようにあるようです。
神経科学者(Neuroscientists)の Jean DecetyとPhilip L. Jacksonは、共感力には以下の要素が必要とします:
1.自身と他者との感覚の区別
2.他者の物事の見方や捉え方を理解できる
3.自身の感情的反応を調整できる
「1」と「2」は、一般的に「共感する力」として扱われるものですが、この「3」の大切さを思います。
他者の気持ちを感じる力が強くなればなるほど、痛みや悲しみも流れ込んでくるもの。そうした「不快」ともされる感覚へ向き合い調整する力が培われていないのならば、激しい感覚の波に翻弄されてしまいます。
Decety氏による、素行障害(conduct disorder:身体的攻撃性、嘘、性的暴行、動物への残虐さ、破壊行為、いじめ加害者)を持つティーン(十六から十八歳)の脳と、通常のティーンの脳を比べた実験があります。
両者に、事故や襲われた被害者のイメージを見せるのです。すると、「ミラーニューロン」と呼ばれる「他者の痛みを自分の痛みのように感じる」脳の回路の活性化が、素行障害を持つ子に「より強く」見られたといいます。そして同時に、感情を制御する脳の部位がより弱く反応したと。
つまり、問題行動を起こしてしまうのは、「相手への共感する力が弱いため」ではなく、「相手の痛みをより強く感じてしまうため」、そこへ、「自身の感情の制御力が弱い」という条件が重なる時ということ示しているとも言えます。
「不良」と呼ばれる子の「優しさ」、はっとするような感受性の鋭さ強さを思い出します。
感じ過ぎるからこそ、心を硬くする。尖った柵で囲む。
周りの人々の気持ちや思いに敏感過ぎるからこそ、部屋の外に出られずひきこもってしまう。
私自身こういった傾向があったのでよく分かります、そして我が家の子供達を見ていても。
激しい感覚の波に向き合いつつ進むことのできる力、
外から内へでなく、内から外へと働きかけていける力。
培っていけたら、そう思っています。
次回、「1」から「3」をひっくるめた「共感力を養うためのヒント」、まとめていきますね。
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参考資料:
’Atypical empathic responses in adolescents with aggressive conduct disorder: a functional MRI investigation. ’ by Decety J, Michalska K, Akitsuki Y and Lahey BB. 2009.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2819310/
‘he case for teaching empathy: Why we shouldn’t expect empathy to “just emerge”’ by Gwen Dewar
http://www.parentingscience.com/teaching-empathy.html
‘Empathy and the brain’by Gwen Dewar
http://www.parentingscience.com/empathy-and-the-brain.html