アラスカから、米国東海岸に引っ越すことになりました!
夫の新しいポジションの契約が正式に成立し、ようやく公にできます。しばらくワシントンDC勤務となります。こちらは大都会といっても、少し離れると農場があったりと自然に溢れているので、勤務可能な距離で、自然に囲まれた郊外に暮らす予定です。
16年間暮らしたアラスカ。私自身、一生ここで暮らしてもいいなあと思っていたのですが、まさかこんな第二の人生のような展開があろうとは、といった気持ちです。
今のところ8月の初めから中旬の間に出発する予定なのですが、何と!約4,200 マイル (約6800km)を2週間以上かけ車で大移動の計画を立ててます。日本を2回縦断してもまだ到達しない距離ですね・・・。
家財道具を積んだトラック&自家用車での予定なので、もし実現するようなら、私も運転。運転見習い15歳長男に時々代わってもらおうと思ってます。
大移動について、どうなるか、またお知らせします!
夫についてなのですが、以前こちらでも紹介したように、小学校低学年で重度ディスレクシアと診断され、文章を読んだのが高学年、本を読んだのは高校生になってからでした。落第しそうなのを父親が学校に頼み込んで進級することも度々だったといいます。
今回、全米から200人近く応募した中1人選ばれ、長年彼が夢見る目標へまた一歩近づいたのですが、今日は、ディスレクシアを持ちつつ生きる夫の話をさせてください。具体的な改善スキルなどではないですが、ディスレクシアを持つ方、そしてディスレクシアを持つ子供さんの親御さんや関係者の方が、少しでも希望と元気を感じられますように。
落第寸前の子供時代から夢に向かってまた一歩近づいた今
6歳の時離婚しそれ以来会うことのなかった母親と暮らすため、18歳で南米チリから米国へ移住した夫。それまでディスレクシアを理由に外国語の勉強は免除されていたため、英語は全く分からなかったそうです。メキシコレストランの厨房や大学キャンパスの庭師などしながら、コミュニティーカレッジ(誰でも授業を取れるコミュニティーセンターのようなもの)で授業を取りつつ、少しずつ英語を習得していったようです。
私が出会った20代前半の頃には、アラスカ内陸部で野宿しながら、山火事を消す消防士のアルバイトをしてました。山火事になるとポケットベルで呼ばれ、ヘリコプターで運ばれていき、消火活動にあたるんです。
その後、演劇やピアノやと取っていた授業を「航空学」に絞り、アルバイトをしながら個人パイロット・インストラクター・商業パイロットなどの免許を徐々に取り、就職してからも様々な資格を取り続け、中には全米で40人しか保持していないというものまで。
最初のパイロット免許をとった時には、「読み書きできないあなたにそんなことができるなんて」と両親共に信じられなかったといいます。南米に暮らす父親は、送ったコピーを目にするまで信じなかったと。
ディスレクシアについて本人に聞いてみた
昨夜夫に少し話を聞いてみました。本人の感覚的な話です:
私:ホントに、おめでとう。
夫:ありがとう。でも、これからだからね。
私:ディスレクシアについてちょっと話を聞かせて欲しいんだよね。読み書きがうまくできなくて何度も落第しそうになった子供時代。英語も全く分からない米国での始まりから、今は書類に囲まれた職場でここまできて。ディスレクシアが治ったっていうことなのかな?今でもやっぱり困難はあるんだよね?(実際今でも手書きでは小文字がうまく書けません。)
夫:脳っていうのは、常に形成過程にあるものなんだと思うよ。そしてどこか欠損していたり弱かったりするなら、他の部分が補うような働き方をするようになっているんじゃないかな。
私:ディスレクシアの人は、字面どおり読むのが苦手な分、文脈から内容を読み取る力や、推測力や、全体を把握する力に長けているというような説明を聞くことがあるけど、そういうことかな。
夫:そうかもね。
私:暗号の背後にあるパターンを読み取るのが得意だったり、普通10のピースを手にしてやっと全体が見えるところ、1つや2つのピースから見えることがあるといったような。
夫:まあそういうこともあるのかもしれないね。欠損部分を補うために、他の部位が強くなるんじゃないかな。目が見えない分、聴覚や触覚が研ぎ澄まされたりするみたいに。この社会で生き残るためにね。
私:なるほどね。
夫:それで人の場合はね、気持ちの問題が大きい。
私:気の持ち方?
夫:例えば足が無かったとして、もうだめだと思うこともできれば、毎日あれもしようこれもしようとハッピーに暮らすこともできる。スポーツの競技会なんかに出て、足のある人だって信じられないような記録を残す人だっているよね。
私:同じ条件に見えても。
夫:何にフォーカスするかが大切だと思うよ。自分の気持ちが高まるようなことにフォーカスしていく。なんてだめなんだろう、できるわけがないという理由なんてね、どんな時でもいくらだってある。じゃあどうしたらできるだろう、できたらどんなに嬉しいだろう、そうフォーカスし続けるなら、楽しいよね。常にね、自分が何にフォーカスするのか調整していくんだよ。
傍で見ていて、仕事の技術面の努力だけでなく、時間があれば気持ち面でインスパイヤーされるような本やオーディオを聞いたりと、確かに常に気持ち面を整える努力をしているなあと思います。
ディスレクシアを持つ人々の強み
「イェール大学ディスレクシアとクリエイティビティーのためのセンター(Yale Center for Dyslexia and Creativity)」のウェブサイトに載せられた記事”In the business world, the frustrating disorder dyslexia can actually be a prime asset.”
By Chris Warren http://dyslexia.yale.edu/DYS_secretsuccess.htmlより。
ディスレクシアを持つ人々は、イェール大学神経学教授Sally Shaywitz氏曰く「学校では早く読むなどディスレクシア持ちの人々が困難を抱えることで能力をはかられる」ため、今の教育制度の中で、底辺に追いやられがちです。ディスレクシア支援団体を率いる弁護士で自らもディスレクシア持ちのEmerson Dickman氏は、読めないため小学校時代落第し、将来の成功に希望などあるのかといった不安に早い時期から直面する必要があったと言います。
それでもShaywitz氏によると「ディスレクシアは高度な認知言語的機能・論理的思考・概念的能力・問題解決能力といった強みを持っている。」とのこと。また、「ディスレクシア持ちの人々は、詳細からワークを積み上げるより、まずは大きな全体像を見てから中に入ってワークする」と。
ディスレクシア持ちの映画監督David Lowery 氏曰く、物事を理解するにも「AからBへCへと直線的なステップを踏むより、8の字形に回った方が理解できる」、投資家Charles Schwab氏とシスコシステムCEOのJohn Chambers 氏曰く、「周りが継次にステップ踏むところ、しばしば一気に解決策に辿り着く」、作家John Irving 氏曰く「本を書くとき最後の文章から始める」とのこと。
学校教育システムの中で「できない」とレッテルを貼られ踏みにじられてきた分、その後ビジネス界や様々な分野で能力を発揮するディスレクシア持ちの人々は、どんな困難からも立ち上がるレシリエンスや強靭な精神力を持っているとも言われます。
「イェール大学ディスレクシアとクリエイティビティーのためのセンター」のウェブサイトには、ディスレクシアについての様々な情報や対処法と共に、ディスレクシアを持ちつつ様々な分野で活躍する人々のサクセスストーリーが紹介されています。http://dyslexia.yale.edu/successfuldyslexics.html/
またまとめていけたらと思っています。
「ユア子育てスタジオ」でのディスレクシア記事:http://kosodatekyua.com/category/dyslexia/
新しい始まり。これからも険しい道を何度も通るでしょうが、気持ちを整えつつ、力を合わせ、その都度の精一杯で向き合っていきたい、そう思います。
昨日は、家財道具一式置いてある倉庫の荷物をトラックに乗せられる量に縮小。あれもこれも手放して。
手放すもの積んで。
今日はこれから、友人宅でガレージセールです!
それでは皆様、よい夏の日々をお送り下さい!
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