ストレス

生物人類学者がまとめた「親のストレス・マネージメント10のヒント」

ストレスがたまると、衝動的に行動してしまいやすくなります。ああ、やってしまった・・・、そう落ち込み、よけいにストレスが溜まり、再びちょっとしたことで爆発!そんな悪循環に陥ってしまうことも。
 
私自身、癖のある子供達、しかも現在「論理性を司る前頭前野が未発達なのに情動感受性を司る大脳辺縁系の発達マックス」のティーン2人&プレティーン1人に囲まれ、精神状態ぎりぎりになることも日常茶飯事。
 
今こうしてそれなりに楽しく暮らしていられるのも、10年ほど前、心身ともに崩れ落ち日常生活さえ送れなくなった体験を経、自身のメインテナンスを自分なりに心がけるようになったことが大きな助けとなっています。
 
ストレスのたまった親の対応が長期間続くと、子供の成長にも様々ネガティブな影響を与えてしまう、そう示す研究も多くあるようです。確かに、常に傍でキーキー・ガミガミ・ドンヨリされていたら、子供だってたまらないですよね。でも誰だって、そんな親でありたいなんて思っていなくて・・・。
 
子供の健やかな成長にとっても大切な親のストレス・マネージメント。今日は、生物人類学者グエン・デワー氏による「Parenting Stress: 10 evidence-based tips for improving your health and well-being(親のストレス:あなたの健やかさを改善するためのエビデンスに基づいた10のヒント)」を参考に、親のストレス・マネージメントについてまとめてみます!
 
 
 
 

1.ストレスを引き起こす物事を避ける

まずは「ストレス回路が活性化マックスとなるような因子に、不必要に自らを曝さないこと」とデワー氏。嫌な出来事に出合うと、人はより動揺するようなイメージや、不安になるような言葉などネガティブな物事に注意を向け、嫌な思い出を再生し、未来を心配しとなりがち。まずは、そんなストレス回路を発動させるような因子に、不必要に近づかないこと。
 
例えば、メディアのスイッチを切り、敵意を持っていたり無礼だったりジャッジメンタルな人々にできるだけ関わらないようにし、目的地につくまでに騒音や汚染などストレスに感じるものがあるのなら、違ったルートを用いるのがいいと。
 
私自身は、逆にストレス因子に自らを曝して免疫をつけていくのがいい、避けてばかりではストレス耐性も鍛えられないとも思うのですが、これはもう、自分の調子を見ながらということですよね。自分の力を過大評価せず過小評価せず、余裕のある時に冒険するようにして、キリキリと日常生活いっぱいいっぱいの状態では、わざわざ避けられるストレス因子に「不必要に」身を曝すこともない。バランスをみていきたいなと思います。
 
 
 
 
 

2.心地よい環境を整える

逆に、ポジティブな物事に触れることで、ストレス回路も落ち着き、ゆったり機嫌よく健やでいられると多くの研究が示しています。気の合う友達など心地よい交流、子供の笑顔に注意を向け、スキンシップをとり、楽しかった出来事を思い出し、気持ちがリフトアップするようなジョークや物語を読み、ペットに触れてみる。見知らぬ人が親切な行為をしている写真を眺めるだけで、ストレス反応が落ち着くという実験結果もあるようです。
 
心地よい環境を整え、十分に英気を養うこと。確かに、ストレス因子に振り回されることも減りますね。
 
 
 
 
 

3.「認知的共感力」にフォーカスする

共感力には、情動的共感力(affecting empathy)認知的共感力(cognitive empathy)という側面があるといいます。
 
情動的共感力とは:
相手の側に立ち、相手の気持ちを共に感じ、寄り添い、例えば相手が苦しんでいるようならば、なんてかわいそーとしゃがみこんで共に苦しむ。
認知的共感力とは:
相手の側に立ち、相手の気持ちを共に感じ、寄り添いつつ、さて、どうしたら相手がよりハッピーになれるかと考え動く。
 
心理学者Shaun Ho氏率いる実験によると:
 
母親に「子育てシミュレーションゲーム」をさせ、ホルモンテストと脳のスキャンを用い調べたところ、「情動的共感力」の高い母親ほど、悲嘆にくれた子供についての決断をしなければならない場面で、ストレスホルモン「コルチゾール(cortisol)」値がより高まり、心配やストレスに関わる脳の箇所である「扁桃体」と「視床下部 (hypothalamus)」がより活性化したと言います。
 
情動的共感力が強い親は、よりストレスに影響を受け、心配し過ぎたり、過保護・過干渉・支配的になりやすい。一方、認知的共感力が強い親は、よりストレスに影響を受けず、難しい場面での判断もより的確にできるとのこと。
 
共感力はコミュニケーションの質を高める潤滑油。それでも子供や周りの人々の情動に敏感で、優しく温もりに溢れた共感力の高いお母さんが、ストレスに溢れ、疲弊してへっとへとになってしまうというの、周りを見ても、本当によく分かります。
 
鍵は、認知的共感力を強めていくこと。子供の側に立ち、気持ちに寄り添い、それでも少し距離を持ち、より大きな全体像を眺めながら、さて、どうしたらこの子がより良くなれるのか、と考え動いていく。それが親をストレスから解放し、子供にとってもよいのだと。覚えておきたいなと思いますね。
 
 
 
 
 

4.違う角度から眺めてみる

同じ物事でも、見方を変えると全く違った気持ちになるもの。通りの向こう側に知り合いがいて、手を振ったところ、そのまま歩き去っていく。ああ気づかなかったんだと思えば、さらりと次へいけますが、ああ私のこと嫌いなんだどうせ私なんてと思うなら、気持ちも沈みます。
 
嬉しい悲しいといった気持ちの元には、どんな「考え方」をしているのかがあるといいます。そこでそうした「元の考え方」をポジティブにすることで、気持ちも変化していくとデワー氏。
 
心理学者Batenburg A 氏と Das E氏が大学生を対象にした実験では、人生に影響を与えている最もストレスフルな出来事について15分間書かせてみます。そして半分の学生に、自分の感情に向き合うようにとだけ伝え、もう半分の学生に、ストレスの原因がもたらすチャレンジと好機を分析し、ポジティブに捉え直し、ポジティブに対処する戦略を見出すよう伝えます。
 
その後、学生の感情や心理状態を調べたところ、単にストレスから受ける感情に向き合った学生よりも、ストレスの原因を認知的に見直し対策を考えた学生の方が、良い感情を持っていたと言います。
 
確かに、子供の失敗などを前にしても、今失敗しておいてよかった、ここで学ぶことでこれからの成功の土台になる、そう考えるのなら、感情的に引きずられることも少なくなりますね。状況を認知的に再評価する親は、何かがうまくいかなくても、過度に反応し、逆効果な規律を用いてしまうことも少ないとデワー氏。
 
ストレスに感じる物事を、違った角度から見つめ捉え直す。私自身、書き出して整理してみることで、随分と気持ちが切り替わることがあるなあと感じています。
 
 
 
 
 

5.かける時間を見直す

これもあれもそれも時間内に終わらせないとー! 時間的ストレス、身体強張りじっとりとした嫌な汗、胃もきりきりし出します。スウェーデンの研究者によると、父親より母親の方が時間的ストレスを感じやすく、またより高度な教育を受けたり、金銭的なストレスがあったり、社会的サポートのない女性の方が、より時間的ストレスを感じるとのこと。
 
解決策としては、「スケジュールを再考」すること。人は、習慣的に、物事を終わらせるのにどれくらい時間がかかるかを過小評価してしまいがちと示す研究もあるようです。そして小さな子供ほど、時間どうりになんて動いてはくれません。出かける寸前に、トイレ、吐く、兄弟姉妹喧嘩、怪我、駄々こね、忘れ物、とにかく色んなことをしでかしてくれます。できるだけ余裕をもったスケジュールを組むようにする、本当にこれが今必要なのかと自らに問い整理していく。時間的ストレス回避のためにも、心がけていきたいですね。
 
 
 
 
 

6.よく眠る。でも寝られないことを悩まず、受け入れ、できることをする

十分な睡眠をとることがストレス解消にいい、それは皆分かってるんですよね。とはいえ、十分に寝られないことがよけいストレスになり → ますます寝られない → ますますストレス、となってしまうこともあるとデワー氏。返って寝ることを諦めたほうが、寝られるもんなんですよと。疲労や睡眠時間や明日の心配について感情的な判断を避け、寝られないことを受け入れ、「ま、しょうがないねえ」と暖かいミルクを飲んでみたりとできることをする。不眠障害などにも、そんな方法がよいそうです。
 
娘の中にも、寝られなーい寝られなーいとよく言う子がいるんですが、「まあ、寝よう寝ようとしなくていいから、ただ横になって呼吸を感じたり身体を感じたりリラックスしてなさい」というと、スースー寝てたりしますね。
 
 
 
 
 

7.子育てクラスに参加する

特に、子供が医学的、感情的、行動面などで問題を抱える場合も、実用的なアドバイスを受けられる「子育てクラス」などに参加することが、親のストレス低減に効果的と。怒りや罪の意識やストレスを著しく減少させてくれるとのことです。
 
厳しい状況で子育てする親にとって、相談できる場や、似たような子供を持つ親同士が情報交換できる場、大切ですね。
 
 
 
 
 

8.子供自身に自らのストレスに対応する術を身につけさせる

人は生まれつき感情を自制できるものではなく、年齢を重ねるごとに身に着けていくもの。親は、子供がストレスにどう向き合うかに大きな影響を与えるとデワー氏は言います。
 
母親に、相手の立場に立ち、交渉し、怒り落ち込んでいるときに自分をどう落ち着けるかといった葛藤解決のスキルを子供に教えるよう示したところ、母親自身、自分の感情をハンドルする方法を改善できたという研究報告もあるようです。親自らストレス対策に取り組みつつ、またそれらを子供にも教えていくことで、共に改善していける。ストレス・マネージメント、親子で学んでいきたいですね。
 
 
 
 
 

9.インスパイヤリングな時を持つ

疾患を引き起こし、DNAを再プログラミングさえしてしまえるストレス。即効性のある目先の快楽ではなく、より続く深く意味のある幸福感が、こうしたストレスの毒をブロックすると分かっているそうです。
 
人生の目的や意義といったような、より深いところで感じる幸せ感に満たされる時。そうしたより深みのある喜びの時を、忙しくて時間がないと削ぎ落としてしまうのは、目の前のチョコレートを食べるのを我慢するといったこととは、全く違うのだとデワー氏は言います。自分と家族をストレスから守るためにも、忙しい生活の中に、例えばコミュニティー活動や創作活動など、自らの心の奥底に触れるインスパイヤリングな時を持ってみる。
 
私にとっては、リサーチや書くこと、詩や俳句などの言葉遊び、静かに座り沈黙を感じてみるなどが、こうした時にあたるかなと思いますね。忙しくてそんなことしてられないという自らの声を聞きながらも、少しでも生活に取り入れ、リフレッシュしていきたいです。
 
 
 
 
 

10.身体を動かす、自然を楽しむ

運動がストレスを緩和する、そう示す研究は多くあるようです。動いて汗をかくことで、くよくよと悩んでいたストレス状態もさらりと流れていく、確かにそうですよね。また自然の中で過ごすことで、緊張、怒り、混乱、落ち込みが和らぎ、機嫌が良くなり、不安レベルが低くなり、脳の新しいニューロンの成長を刺激するという研究もあるようです。
 
ただそれが「しなければ」といった強制であると、ストレス・レベルが再び上昇するとも。「自らの選択」として、楽しんでいきたいですね!
 
 
 
 

次回の記事では、引き続き「親のストレス対策」をテーマに、「ストレス低減法」として40年近くの歴史を持ち、私自身助けられている「マインドフルネス」の具体的実践法を紹介します!

 
 
写真は、家裏の森。
IMG_5623
先日は狐に出会いました!
IMG_5077
10の「身体を動かす、自然を楽しむ」を書きつつ、
子供達と犬と走ってこようかなと思ってます。
今日は25度近くまで気温が上がりびっくり!
紅葉にみとれつつ。
 
 
それでは皆様、素敵な初冬の日々をお送りください!
 
 
 

Leave a Reply

Powered by: Wordpress