1.どちらか一方が「正しい」と思うか、
2.どちらも「正しい面を持っている」と思うか。
もし、どちらも正しい面を持っていると思うならば、
3.どちらかが、どちらかよりも「より正しい」と「説明」できるか。
心理学者Kuhn氏によると、以上のような場面に出会ったとき、どう思うかによって、人は三つのタイプ(or 発達の段階)に分けられると言います。
1は、絶対主義者(absolutist)。現実とは、直接的に確かなものとして観察できると考えている。灰色はなく、白か黒。子供というのは、この状態にある。
2は、多様主義者(multiplist)。現実は直接的に観察することはできず、情報は必ず誤ることのある人々の感覚によってフィルターされ、知識というのは人の思考によって作られており、疑うことができるものと思っている。そうして何もかも決して「確か」ではないのだから、どちらか一方のみを選ぶ客観的な土台は存在せず、断言されている全てのものも、「単なる意見」に過ぎない、全ての主張が「同等の重み」を持っていると。子供達は成長するにつれ、こうした多様主義の考えを、少しずつ理解するようになる。
多様主義的考え方は、自分とは異なる意見を尊ぶ姿勢を生み、素晴らしいこと。子供達にも至らせたい地点。私自身、文化人類学を学び、多様な文化に触れる中で、この「2」のスタンスをとても身近なものと感じている。
Kuhn氏は、「2」を土台とした上に、次へと進む立場として「Evaluativist」を提示する。
3、評価主義者(Evaluativist)。「確固とした正しさ」は手に入れることができないかもしれない、それでも、「区別」をつけることはできると思っている。調べ、学び、考えることで、一方の説明は、他より「メリットがある」と区別していくことができると。
「2」から「3」へと踏み出していくこと。それまでの議論について調べ、証拠として出されたものを吟味し、考え、不確かさの中に「より良い」を築いていくこと。それは、私自身多様主義にどっぷりと浸った時代から、子供を育てる親となり、日常的に必要な姿勢として、学びつつあることでもある。
これからの世界、通信技術や交通手段がますます発達する中で、多様な考え方や価値観が、地球上のどこに暮らしていようが、ますます身近な日常に入り交ざっていくだろう。そんな中、異なる立場を尊重する「2」の多様主義を土台としつつ、「3」の評価主義を身に着けていくことは、とても大切になっていく。
心理学者Caren Walker氏は、次のような「ディスカッションの六つのルール」を小学校の高学年の子供達に学ばせていくことが、「1」から「2」へ、そして「3」へといった姿勢を培うことへと繋がるかもしれないとする。
立場を示す(State a position)
自分が同意するかしないかを考える(Figure out if you agree or disagree)
実際の事例を提示する(Present a real example)
差し出された主張に対する反例を提示する(Present a counterexample to a claim that has been proposed)
それまでに得た情報を基に、主張を練り直し、示す(Offer a revised version of the claim)
自身の主張を証拠と論理でサポートする(Support your claim with evidence or logic)
「絶対的な確かさはない」という前提の下、異なる立場や意見を尊重しつつ、その上に、「より正しく役に立つ」情報を模索していけたら、親としての自身と共に、子供達にも、そんな姿勢を身につけていって欲しい、そう思っています。
参考資料:
“Can We Raise a New Generation of Critical Thinkers?”by Gwen Dewar, Ph.D. Psychology Today
Kuhn D, Cheney R, and Weinstock M. 2000 The development of epistemological understanding. Cognitive Development 15: 309-328.
Walker CM, Wartenberg TE, and Winner E. 2012. Engagement in philosophical dialogue facilitates children’s reasoning about subjectivity. Developmental Psychology. 2012 Sep 3. [Epub ahead of print]