恋と愛と子育てと

Radarecho; photo by Dr. Bastian Niemann, Schwipp Sitzmöbel Göttingen taken in 2011, unknown artist (and lover)

スリープオーバーに自転車で遠出にと、お友達とわいわい出かけることも多くなった中学生の上の子達、皆で集まると恋愛の話で盛り上がることもあるようです。昨日は長女十二歳、男の子五人と女の子五人で映画館に出かけたり。オープンなこちら、中学校内でも放課後でも、ぴったりと寄り添う男の子と女の子の姿を見かけることもあります。

 

そんな春なひととき、少し恋愛について話してみました。

 

 

 

「男女間の愛の専門家」とも呼ばれる生物人類学者ヘレン・フィッシャー(Helen Fisher)氏は、ヒトは、「愛」の土台となる「三つの脳のシステム」を進化させてきたとします。

 

1.性欲(lust) 性的な衝動。リビドー。

2.魅了(attraction)  インテンシブでロマンティック。恋。

3.アタッチメント(attachment  長く続く相手との深い繋がり感

 

1の「欲望」は、2の「魅了」によって特定の相手に注がれるようになり、そこから3の「アタッチメント」へと発展することで、子供を家族というチームとして養うことが可能になると。

 

フィッシャー氏はこの論以前、九十年代にベストセラーとなった著作で、脳の肥大化という進化により「未熟児状態」で生まれることになったヒトの子供をある程度育てるためには「四年」必要であり、その後は再び子孫を増やすための「生殖本能(1の欲望)」が高まることから、世界各地で「四年目の離婚」が最も多い、とも。

 

現代の男女関係というのは、必ずしも「子供を作る」ということのみを目的とするわけではありませんが、あくまでも「生物学的な話」としてです。

 

 

 

fMRIでそれぞれの脳の状態を捉えると、2の魅了の脳の状態が最も強い特徴を表し、腹側被蓋野(ventral tegmental area) と尾状核( caudate nucleus) が活発になることが分かっています。とにかく寝ても覚めてもその相手のことが頭から離れず、フィッシャー氏曰く、「その人が頭の中でキャンプしている状態」。1を相手に拒絶されるよりも、2を拒絶されることの方が、ショックが大きいですよねと。

 

若かりし頃を振り返ってみてもこの2の魅了状態というの、よ~く分かります。あの、食べるものも喉を通らず、何も手がつけられない状態。あ、またはまってしまった(恋に落ちた)とため息をつきつつ、あまりにも切なくて辛くて、とにかく自分と相手を観察し、全く見えなくなってしまった欠点を書き出し、どうにかこうにか冷まして抜け出すということをしたこともあります。(笑)

 

 

 

3の「アタッチメント」状態への移行、そして「生殖本能」に振り回されることなくその「アタッチメント」状態を続かせるには、この気づくことで冷め、または、冷めることで気づく「相手の欠点や弱み」を「受け入れられるか」にかかっている、そうつくづく思います。

 

「あばたもえくぼ」な2の「魅了」状態から冷めるにつれ、今までどこにどう隠れていたの?! と見え始めるあれやこれやの欠点に弱み。それを「正常な脳」で受け入れ合うことで、自分も相手も、互いに大きく成長していく。

 

そして不思議なことに、受け入れることを続ける内に、3の深い繋がりを持ちつつ、2の恋愛状態へと行ったり来たりも可能となったりする。

 

20年以上ラブラブなカップルの脳を調べると、恋に落ちたばかりの脳と同じ2の「魅了」状態にあることが分かっているそうです。傍から見て出会った当初の面影なく、お腹は出て、髪は薄くとなっていても、全く同じ脳の状態でいる。「まるで『愛は盲目』状態が続いているようなんです」とフィッシャー氏。

 

それは、繰り返し相手の弱みを受け入れた先にある「実り」のようなものなのかもしれません。

 

 

 

フランスの哲学者ヤン・ダラグリオ氏は、「現代ほど個人の評価に焦点が向けられた時代はない。皆自分をいかに完璧に見せるかということに忙しく、人との関係さえも、自分を見せるための手段になっている」と言います。

そして、「愛とは『優しさ』だと思う。自分も相手も完璧でも何でもなく、大したことないのだと自覚し受け入れ合う。うまくいかないカップルに必要なのは、自分達はつまらない者だと笑ってしまうことだよ」と。

 

欠点を受け入れる優しさが、愛、とてもしっくりとくる言葉です。

 

 

 

相手の弱みを受け入れる愛、

 

それは子育てにとっても、最も大切なこと、そう思います。

 

子供達の弱み・欠点を底のところで受け入れている。

 

その上で、その子が持てる力を最大限発揮できるようサポートする。

 

 

 

家族というもの、それは欠けている部分を受け入れ合い、愛し続けることを学び合う場なのかもしれない、日々山あり谷ありの試行錯誤の中で、そう感じたり。

 

 

 

春うきうきな中学生二人を前に、そんなことをさらっと説明し。

いつか、燃え上がるような恋にため息つきながら、

ふと、あ、ママそういえば、あんなこと言ってたっけ、

そう思い出してくれる日もくるのかもしれないなと。

 

恋と愛と、

互いを受け入れ合う関係を築いていってくれたら、

そう願いつつ。

 

 

 

 

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*ちなみにフィッシャー氏、マッチングサイトがスポンサーとなった最新の研究では、同じような条件の人物が大勢いる中から、なぜ「この人!」と特定の人物に恋に落ちるのかについての解明に取り組んでいます。人は「四つのパーソナリティ」に分けることができ、特定のパーソナリティーが特定のパーソナリティーに惹かれるとのこと。
“Why Him? Why Her?: How to Find and Keep Lasting Love ” by Helen Fisher
(Henry Holt, January 2010)

 

 

 

参考資料:

Helen Fisher Ph.D homepage   http://helenfisher.com/about.html

‘How to Make Romance Last  The truth about what keeps marriages together’

By Helen Fisher

http://www.oprah.com/relationships/How-to-Make-Romance-Last-Helen-Fisher-Love-Column_1?_escaped_fragment_=


“ANATOMY OF LOVE: The Natural History of Mating, Marriage and Why We Stray” 
by Helen Fisher Ph.D.

“正しい愛しかたについて” ヤン・ダラグリオ
http://www.ted-ja.com/2014/04/yann-dall-aglio-love-you-re-doing-it-wrong.html

写真 by Dr. Bastian Niemann, Schwipp Sitzmöbel Göttingen taken in 2011, unknown artist  Wikimedia Commons

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