「価値観を子供達にどう伝える?」の記事の「褒める」の項目で、
八歳頃までは、行為よりポジティブなキャラクター(性格)に言及する方が有効。動詞より名詞の方が子供達に根付き易い。
と少し取り上げたのですが、子供達が伝えたい価値観をより率先して実行する「言葉がけ」について、もう少し詳しく見ていきます。
「動詞より名詞」というこのメソッドは、心理学者Christopher Bryanとその同僚による実験研究から導かれたものです。実験では、部屋の様子や状況を全く同じように設定し、話し方やジェスチャーも全く同じように、二つのグループの子供達にそれぞれこう伝えます。
1.「 Some children choose to be helpers. You could be a helper when someone needs to pick things up, you could be a helper when someone has a job to do… ヘルパーになろうとする子もいますね。誰かが何かを拾おうとしているとき、あなたはヘルパーになれるんですよ。誰かが何かをしなければいけない時、ヘルパーになりましょう!」
2. 「Some children choose to help. You could help when someone needs to pick things up, you could help when someone has a job to do… ヘルプしようとする子もいますね。誰かが何かを拾おうとしているとき、あなたはヘルプすることができるんですよ。誰かが何かをしなければいけない時、ヘルプしましょう!」
すると、その後、周りで誰かが困った状況に出会った時、1のグループの子の方が率先して手伝いをするようになったそうです。
この「動詞より名詞の方が効果がある」というのは、よりその子の「アイデンティティー」に関わるため、とされています。つまり、子供というのは「自分がどういう子なのか」ということにとても敏感に反応するのです。
「手伝うのはいいことよ」より、「手伝ういい子になれるかな?」と、その子が「どういう子かを表す言葉」の方が、その子の心に響くと。
といって、これは大人にも当てはまるようです。Bryan氏は大人を対象にした実験もしています。
「How important is it to you to be a voter? 投票者であるということがあなたにとってどれほど重要ですか?」
“How important is it to you to vote?” 投票するということがあなたにとってどれほど重要ですか?」
と言葉をかけられた場合、前者の方がより投票する人が多かったとのこと。
「アイデンティティー」に関わることとなると、人はより敏感になるんですね。
人は、人との関係の中で自分というものを確立していくものだからかもしれません。
このメソッドは、こうした「人の性質」をうまく活用して、子供にも教えていくということです。
「誰が手伝える優しい子になれるかな~?」
「手伝ってあげられたら、とても親切ね」
そうポジティブなアイデンティーティーを示し。
ただ、この「アイデンティティーを探し求める人の性質」を、「知性や才能」などを伸ばすために用いる場合には、注意が必要とされています。
「あなたは本当に賢いわ!」「なんて頭がいいの!」「まるでピカソのよう!」
などの言葉をかけられると、子供達はこれらの「アイデンティティー」を損なうことを恐れ、より難しい課題を避けるようになる、という実験結果があります。
知性や才能については、「親切な子!」などそこへ到達したモデルを示すより、そこへ至る「努力」を褒めるのが最も効果的であるとされています。
「あなたはなんて賢いの!」より、「最後までやり遂げられたなんて偉い!」といったようにです。
すると、失敗を恐れず難しい課題にもどんどんチャレンジし、最後までやり遂げるのでより伸びるというのです。
「親切さ」というのは、小さな「親切な行為」を積み重ねることで身につき、本当に親切な人になっていくという面があります。それでも知性や才能は、そうそう一筋縄ではいきません。努力を続け、難しい課題にチャレンジし打ち克ち、再び努力を続け、その長い道のりと共に、少しずつ培われていくものです。
そして親切にすることに、「失敗」はそうはありません(もしくは、それほど重きをおかれない)。
それでも勉強や絵画やピアノなど知性や才能に関わることは、うまくいかないことも多くあるものです。むしろ何度も失敗し、「賢さ」や「上手さ」とは正反対にあるような行為を何度も経、自分はなんて無知なんだろうと自覚することが、「本当の賢さ」に繋がるとも言えるかも知れません。
どんな言葉を用い、何を褒めるのか?
親切さや思いやりなどを培うには、
「誰が親切な子になれるかな~?」といった、アイデンティーティーを表す言葉を。
知性や才能を伸ばすには、
「頑張って努力したね!」と、「努力」を。
まだ白紙に近い子供の心にとって、
身近な大人の言葉ほど、力強く刻まれるものありません。
言葉がその子を形作っていく、そんなように感じることもあります。
その子を伸ばす言葉がけを、心がけていきたいです!
“To Get Help From A Little Kid, Ask The Right Way ” Wednesday, April 30, 2014 By Maanvi Singh
http://www.wnyc.org/story/to-get-help-from-a-little-kid-ask-the-right-way/
“Stanford researchers find that a simple change in phrasing can increase voter turnout. ” Stanford Report, July 19, 2011
http://news.stanford.edu/news/2011/july/increasing-voter-turnout-071911.html
“One word can get kids more helpful” by Gwen Dewar Ph.D.
http://blogs.babycenter.com/mom_stories/one-word-can-make-kids-more-helpful-004302014-study-helpers/
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