米国のヨーロッパ、アジア、ヒスパニック、アフリカン・アメリカンは、「業績(achievement)」より「思い遣り(caring)」がはるかに重要と答え、五十の国への調査でもほとんどが同じ結果だったそうです。
親が大切と思う価値観、例えば、他者に親切にする、思いやりを持つ、他者を理解しようとする、人のせいにしない、グリット、ハードワークなどをどう子供達に伝えるか?
子供へ価値観を伝えるには、
1・褒める。それを実行した時。
2.咎める・叱る。それに反することをした時。
3.体現。モデルを示す。
の三つの方法があります。
ニューヨークタイムズの記事「Raising a moral child」には、1.2.3について、それぞれ興味深い研究が載っています。
1.褒める
・結果より努力を褒める。
「百点取ってすごいわね!」よりも「ハードワークを最後まで遣り通して偉い!」
前者だと、評価が損なわれるのを恐れ難しい課題などへのチャレンジを避けるようになり、後者だと、より努力し続ける。
・報酬は褒め言葉で十分。
物等の報酬を与え過ぎると、目の前に「にんじん」がないとやる気が出なくなる。
・八歳頃までは、行為よりポジティブなキャラクター(性格)に言及する方が有効。
「○○ちゃんにあなたのクレヨンを貸してあげて、親切にできわね!」より、
「○○ちゃんにあなたのクレヨンを貸してあげて、あなたは親切な子ね!」
「よく手伝えたわね」より、「あなたは最高のヘルパーね」
「ずるしちゃだめよ」より、「ずるする人になっちゃだめよ」
動詞より名詞の方が子供達に根付き易いと。
十歳頃になると、行為でもキャラクターでも同じ効果だそうです。
2.咎める・叱る
・行為を咎める・叱る。誤った「行為」を「キャラクター」に繋げない。
「○○君から玩具を奪い取るなんて、あなたは意地悪ね」より、
「○○君から玩具を奪い取るのはよくないことよ」
子供達は、咎められることで痛み感じると、「恥(Shame)」と「罪悪感(guilt)」といった「二つの種類の感情」を持つと言われます。
「恥」とは、私はなんて悪いんだろう、
「罪悪感」は、私は何て悪いことをしてしまったのだろうという感情。
「恥」は「キャラクター」を咎められることから、
「罪悪感」は「誤った行為」を咎められることから生まれます。
足が取れやすいよう細工した人形で子供を遊ばせるという実験によると、「恥」を持つ子は、足が取れてしまったことに激しく動揺し、実験者や周りにできるだけ気づかせないよう隠し、「罪悪感」を持つ子は、「取れちゃいました」と実験者に知らせ、どうにか直せないかといった様子を見せたと。
誤った行為をしてしまったなら、後悔し、直そうとする、そう動いていく子を育てるためには、「行為を咎める」ことが重要だと。
・咎め方としては、「残念に感じている様子」を見せるのがいいと。そして「あなたは良くないことをしたけれど、よりよいことのできる思いやりのある子だと知ってるわ」といった、「良いキャラクターを思い出させつつ、行為を咎める」といった言葉をかけるのがいいようです。
3.体現
心理学者J. Philippe Rushtonの古典的実験より。
勝ったらコインを手に入れることができ、それらのコインは自身のものにしてもいいし、貧しい子に寄付してもいいという選択が与えられる、というゲームを小学校と中学校の教室で140人の子供達に。
先生が、自分勝手で意地悪に独り占め、もしくは、寛容に分け与えるという姿勢でゲームに参加した後、子供達に、「ゲームでは貪欲に自分勝手に振舞うことも必要ですよ」もしくは、「人に対して優しく、親切に、思いやりをもって接するのですよ」と話す、または、全く話さないようにする。
その後の追跡調査の結果は、とても興味深いものです。
・先生が親切な姿勢を示した場合は、その後言葉での教えがあってもなくても、先生が自分勝手な態度を示し、言葉で「人に対して思いやりを持つように」と話した場合よりも、85パーセント多くコインを寄付するようになった。
・先生が思いやりを持った行為を示し、その後に「自分勝手に振舞うことも必要ですよ」と教えた場合でも、子供達は普段より49パーセント多くのコインを寄付するようになった。
・時間を空けて二ヵ月後に同じ実験をしたところ、最も寄付をした子供達というのは、先生が思いやりを持った行為を示し、その後言葉では教えなかった場合だった。先生の親切な行為&言葉の教えがあった子達よりも、31パーセント多く寄付したと!
この実験によると、子供達にとっては言葉よりも行為こそがパワフルな教え、そして、言葉のない行為の方が、長い目で見ると、子供達の内に根付くと!
子供達に価値観を伝えるには?
努力 そして キャラクター を褒め
行為 を残念そうに咎め
言葉 ではなく 大人自身の行為 で示す
この記事によると、そういうことになりますね。
子供達と日々接する中、覚えておきたいです!
参考資料:
“Raising a Moral Child” by Adam Grant New York Times Apr.11 2014