一昨日、ホームをベースにした教育を支援するチャータースクールへ出かけ、長男十四歳担当先生と共に、各教科の学習をどのように行うかの最終手続きをしてきました。
通常の学校ならば、学校へ登録すれば、自動的にどのクラスを取るか決まってきますが、このチャータースクールでは、オンライン、自宅学習、インターン、NPO活動などあらゆるリソースが「学習」として扱われるため、一つ一つの教科の学習計画をコンピューターに打ち込みと、手続きに通常の何倍もかかります。
担当先生と相談しながら長男が打ち込み、私は横で見守り足りない資料を家に取りに帰ったりと四時間ほどかけて。
オンラインコースと大学授業と自宅学習とNPO活動を盛り込んだこの先数ヶ月間の学習計画。費用は、州政府から一人当たり四千ドル(約四十万円、結局去年より大幅引き上げ)補助が出、そこから自動的に引き落としとなります。
明後日には再び航空関係NPO活動で二週間留守にする長男。今回はスタッフとしてキャンプを運営する側に回るのですが、それらも「リーダーシップの授業」として高校単位にカウントされます。
八月中旬に帰宅したら、さて、新しい出発です!
こちらはホームスクール支援が充実しているといえども、全米でホームスクールをしている生徒は約3-5%と言われます。カナダでは1%とのこと。少ないとも思えますが、全米で二十人に一人いるかいないかというように考えると、それほどマイノリティーではないとも言えるかもしれませんね。
米国では高校は義務教育。もしホームスクールがなかなかうまくいかないということならば、すぐに通常の学校システムに戻ることも可能です。
ホームスクールをする家庭には、我が家のように異なる可能性を試し様子を見てみようというものから、通常の学校システムに背を向け、独自の道を模索していこうというものまであります(アンスクールなど)。
以下は、「既存の学校は創造性を殺してしまう」と話し、「今までで最も聴かれたTEDスピーチ」とされるケン・ロビンソン氏(過去記事「人には二種類あります」言及。)にインスピレーションを受け、九歳でホームスクールを始めた家庭の例です。
今十三歳のローガン君(Logan Plonte)本人のスピーチ、「異なる学びのあり方」の可能性を示唆してくれます。
「大人はね何になりたい?ってよく聞くんだけど、宇宙飛行士だとか医者だとか、まあ大人の期待に沿うような答えを言うわけだけど、ほんとはそんなのまだまだ分からないものじゃないかな。でもね、確かに分かっていることっていうのはある、僕たちは大きくなったら、『幸せ』でありたいんだよ。
でも今の学校は、『幸せ』であるなんてことを、全く重視したりはしない。僕は『幸せ』であるということを探求するテーマの一つにしたいんだ」
ローガン君のホームスクールは、心理学者Roger Walsh氏が掲げる「幸せであるためのライフスタイル変化セラピー(Therapeutic Lifestyle Changes)」を構成する以下の八つの項目を踏まえて組まれています:
- 運動
- 栄養バランスの取れた食生活
- 自然の中で過ごす時間
- 他者へのサービス・貢献
- 人と人との関係
- リクリエーション
- リラクゼーション/ストレスマネージメント
- 宗教的・スピリッチュアルな関わり
この八項目、日々の生活を省み、かなり納得です。
ローガン君の日常は、スターバックスでオンラインコース、巨大装置を作り物理の学習、帽子をデザインし売る組織でのインターンシップ、弓矢を作ったりと自然の中で過ごす時、大好きなスキー、などを通して進められています。
そしてローガン君は、これら学びのあり方を「ハック・スクーリーング」と呼びます。
「ハッカーのマインドセットを持ち、ヘルシー、ハッピー、クリエイティブであること。」
「ハッカーっていうのは、地下室で青白い顔してコンピューターに向き合ってウィルスを撒き散らすといったイメージがあるかもしれないけれど、そうじゃなくて、既存のシステムを変化させていく人々のことを言うんだ。
ハッカーとは革新者、システムがより良く違ったように働くようチャレンジし変化させる人々のこと。『どう考えるか』という、マインドセットなんだよ。
僕達はよりハッカーなマインドセットを必要とする世界に生きている。それは技術的なことだけじゃなくて、何だってハックできる、教育だって。僕は何か一つの特定のカリキュラムやアプローチを用いるわけじゃない、僕は教育をハックするんだ。ハッカーのマインドセットが世界を変えることができるんだと思う。
『ハック・スクーリーング』はね、システムじゃなくて、マインドセットなの。だから、誰にだって用いられる、伝統的な学校でさえね」と。
私自身、ここ何年か「ライフハック」などの言葉が用いられるようになる以前は、「ハッカー」というと、まさしく「地下室で青白い顔してウイルスを撒き散らし」とイメージを持っていたんですが、「今までのやり方に風穴を開け、変化させていく人」ということなんですね。
「ハック」と言えば、「Code for America」のコミュニティーオーガナイザー、キャサリン・ブレイシー氏による、2013年九月のスピーチも印象的でした。
ブレイシー氏は、「ハッカー」としてベンジャミン・フランクリンを挙げ、
「ハッキングは既存システムへのアマチュアによる革新にすぎず、極めて民主的な行為です。それは批判的思考であり、既存のやり方に疑問を持つことです。ある問題にただ不満を言うのではなく、解決に努めるという考え方です。
色々な意味でハッキングはアメリカを築きました。ベッツィー・ロスはハッカーでした。「地下鉄道」(過去記事「ブッククラブ、多様性の海に漕ぎ出し違いに勇敢に向き合うということ」に少し紹介)は素晴らしいハッカー組織でした。ライト兄弟からスティーブ・ジョブズまでハッキングは、常に米国民主主義の基盤でした」
と。
ハッカー/ハッキングとは、
「システムがより良く違ったように働くようチャレンジし変化させる革新者」
「既存のやり方に疑問を持ち、ある問題にただ不満を言うのではなく、解決に努めるという考え方」
ハックする、それは何も大それたことだけでなくて、
日常生活で、
これは今までこうしていたけれど、こうした方がよりいいんじゃないかな、
そう様々工夫し行動していくこと。
そんなマインドセットを言うのかもしれませんね。
子供達の持つ「ハッカーなマインドセット」、
潰さないよう接していけたら、
そう思いつつ。
↓
参考資料:
「ハック・スクーリング:ハッピーになるための教育」 (日本語字幕有)by ローガン・ラプラント
「 なぜ優れたハッカーは良い市民となるのか 」(日本語字幕有)by キャサリン・ブレイシー
http://www.ted-ja.com/2014/07/catherine-bracy-why-good-hackers-make-good-citizens.html