学習支援

サイエンスや数学に強くなる空間的知能の改善ヒント

0213Dのイメージを、ひっくりかえしたり、組み合わせたりと操る空間的知能(Spatial Intelligence)。建築家やエンジニアが、建物などモノ作りに用いたり、彫刻家や仮面彫りが石や流木に、未来の形を見出す能力ですね。
 
言語知能、論理的知能など多様な知能の中でも、この空間的知能の高さは、サイエンス、エンジニア、テクノロジー、数学などの分野での成果に繋がるとされています。
 
我が家にも得意系とそうでない子がいますが、多くの研究が示すのは、改善できる!ということ。
 
今日は、この空間的知能の改善ヒントについて、生物人類学者グエン・デワー氏の記事などを参考に、まとめてみますね。
 
 
 

男女差は確かにあるけれどトレーニングで縮小する

男女を比較すると、空間的知能は男性の方が高い、そう示す研究はいくつもあるようです。これは、胎児として子宮内にいた際のテストステロンというホルモンの量に関係しているとのこと。
 
子供達を見ていても、よく分かります。男の子達の方が断然得意ですね。
 
それでも、働きかけや訓練によって、男女とも、空間的知能を改善できることが分かっています。そして訓練するほど、男女の差も縮小されていくと。
 
例えば、
 
・心理学者David Tzuriel 氏率いる研究チームによると、116人のイスラエルの小学1年生に、3Dのイメージを操るプログラムを用いてトレーニングをしたところ、8週間後には男子と女子の差が消えたと。
 
・心理学者Jing Feng 氏率いる研究チームによると、10時間、銃をうったりといった3Dアクションビデオゲームをすることで、大学生の空間認知力が改善された。その中でも女性の方が改善度が高く、5ヵ月後までその効果が続いたと。10時間でこんな結果が出るなんて!
 
ビデオゲームが、視覚空間的能力を高めるというのは、少し前に「ビデオゲームが子供に与える「よい影響」&「よくない影響」整理」でも紹介しましたね。
 
 
 
 

男の子女の子に拘らず玩具を与える

こうして整理しながら、昔見たTEDの女性スピーチを思い出しました(https://www.youtube.com/watch?v=FEeTLopLkEo)。スタンフォード大学でエンジニアを学び、自分がいかに男性に比べ空間認知力が劣っているかを痛感したというデビー・スターリンさん、その理由の1つを子供時代、男の子と女の子に与えられる玩具の違いに見出します。どの店の玩具セクションを見ても、女の子のコーナーはピンクに彩られ、人形やままごとセットが並び、男の子コーナーはレゴや車など、組み立てたり動かしたりして遊ぶものが並んでいる。小さな時分から、これほど違う遊びをしていたら、それは育まれる能力も違ってくるだろうと。そしてスターリンさんは女の子用のエンジニア力を鍛える玩具を作り、流通させようと試みているといった内容でした。
 
確かに家でも、女の子に比べ男の子達の方がレゴに夢中。そりゃあれだけ作り続けていたら、空間的能力も鍛えられるようなあと思いますね。
 
こうした傾向は、先の子宮内のホルモンの違いにあるように、生まれつき好むものが違うということもあるのでしょうが、その差をより助長する必要もないのでしょうね。性的違いに拍車をかけるのは、社会的文化的すり込み。乗り物や組み立て式の玩具は空間認知力を高め、人形遊びやドレスアップは言語能力、社会性の向上を助ける。こういった遊びの違いが、男の子が3D認識能力に優れ、女の子が言語能力、社会性に優れているという形を生み出していく。それでも、男の子に人形の世話などの遊びを促すことで、共感能力を養い、攻撃性を緩和させ、社会性や言語能力を育てることができる。女の子にパズルや組み立て式玩具を与えることで、空間認識能力を育てることができる。そう、以前のブログにも、SCIENTIFIC AMERICAN MINDの記事(May/June 2010)をメモしておいたことがありました。
 
男の子女の子にこだわらず、色々な遊びの機会を与えることで、バランスよく能力を育んでいけるんですね。我が家でも、その子の好みを見つつ、男女の玩具に拘らず与えていけたらなと思っています。といって、もう皆玩具もそろそろ卒業のようですが。
 
 
 
 

空間認識を促す言葉をかける

空間認知を促すボキャブラリーを豊富に用いることで、空間的能力が高まるとされています。
 
例えば、
 
心理学者Jeffrey Loewenstein氏と Dedre Gentner氏による3歳児への実験:
 
三つの棚のある白い本箱と青い本箱を見せます。
白い本箱を見せながら、
 
1つのグループには、「このカード、ここに置くね」
もう1つのグループには、「このカード、真ん中の棚に置くね」
 
と言いながら白い本箱の真ん中の棚にカードを置きます。
 
次に目を閉じるように言い、カードを青い本箱の真ん中の棚に置きます。「白い本箱と同じところにカードを置いたからね」と伝え、目を開けて探すように言うと、先に「このカード、ここに置くね」とだけ聞いたグループは、青い棚にカードを見つけることが難しかったと言います。
 
 
また、心理学者Shannon Pruden 率いる研究チームが、生後14ヶ月以上の52人の幼児がどのように親と交流するかを調査したところ:
 
形:丸、三角、視覚
サイズ:大きい、小さい、高い
空間的特徴:ゆがんでいる、カーブしてる、角
 
といった、空間認知を表す言葉を豊富に用いていた親の子供の方が、46ヶ月後に空間知能をはかるテストをしたところ、高いスコアを示したとのこと。親によって5語から525語までと、その語彙数の差はとても大きかったと言います。
 
 
なるほどな、と思いますね。
 
「そこのあれさ、あっちのそこらへんに持っていって」そんな言葉よく言ってるなあ、と我が身を振り返りつつ。(笑)
 
変わりに、「その長方形の箱の上に置いてある3センチぐらい厚みのある本、あなたの左斜めにある楕円形の葉っぱが曲線を描いて垂れ下がる観葉植物の隣にあるあなたの背丈と同じ120センチほどの本棚の3番目の右端に置いてくれるかな」
 
こんなように子供時代から話しかけられていたら、確かに空間認知力も育まれるでしょうね。こう書いてるだけで私の場合ちょっと目がまわったりしますが。できる範囲で楽しみながら今からでも心がけてみようかなと思いますね。
 
 
 
 

日常生活の様々な場面で空間認知を促す質問をする

「このバッグに今日買ったもの全部収まると思う?」とスーパーのレジで。
 
「シーツをどちら向きにしたらベッドにぴったりかぶさるかな?」と寝室で。
 
「このパン切ったらどういう形になるかな?」と台所で。
 
「この靴紐、次は穴の上から入れるのかな、下から入れるのかな?」と玄関で。
 
その際、頭の中でどうなるか描いてみてと、視覚化するよう促すのも助けになるとのこと。
 
 
 
 

地図を見たり、作ってみる

3-4歳くらいになると、地図を理解するようになると言います。地図帳を見たり、壁に貼ったり。家の間取り図を作り、いくつかの場所にモノを隠し、地図にマークをして探しに行くといったゲームをしたりなど。地図に親しむ。

 
 
 
 

カメラを使わせてみる。

様々なアングルから写真を撮ることで、3D認識力が高まるそう。一昔前は「フィルム」でしたから、子供に使わせるなんてとんでもなかったですけど、今はデジタルですものね。便利になりましたねえ。
 
 
 
 
3Dイメージを操る空間的知能、私自身かなり弱いかも、娘達の何人かも私ほどではないにしても弱いかも、と感じるんですが、子供達と一緒に、鍛えていけたらなと思いますね。
 
それでは皆様、楽しい週末をお過ごし下さい!
 
 
 
参考資料:
‘Spatial intelligence in children: Why training matters’ by Gwen Dewar Ph.D.
http://www.parentingscience.com/spatial-intelligence.html
 
‘Improving spatial skills in children and teens: Evidence-based activities and tips’ by Gwen Dewar Ph.D.
http://www.parentingscience.com/spatial-skills.html
 
 
 

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