「彼にとって
触れることは強打
音は騒音
不運は悲劇
喜びはエクスタシー
友達は愛する人
愛する人は神
失敗は死」
by Pearl Buck
時にこんな詩で表される「感情の強烈さ(emotional intensity)」を持つ人々。
我が家もかなり思い当たります。子供達も、そして私自身も。どうも生きづらいと感じてきた理由は、この「感情の強烈さ」にあったんだなと、子育てを通し少しずつ理解できるようになりました。
今こうした大変化にもおかげさまで落ち着いて皆それなりに楽しく暮らせているのも、子育てを通し、様々な対処法に出合い試す中で、少しずつ少しずつどうしたらより楽に生きていけるのかを教えられてきたことが大きいなあとしみじみ思います。
今日はこの「感情の強烈さ」について、まとめてみます。その特徴や対処法を知ることで、子育て&私自身が少し楽になれたように、そして今も助けられているように、子育てづらさ&生きづらさを感じる方が、少しでも楽になれたらなという願いを込めて。
「感情の強烈さ」には様々な表れ方がある
「感情の強烈さ」と聞くと、まずは喜怒哀楽を激しく表現する明らかに激しい人、が浮かぶかもしれません。それでも、以前も少し紹介したように、「感情の強烈さ」とは、様々な表れ方をするとされています。(「『強烈な感情』を持つ子供達のギフトを生かしていくために」)
内向的表れ:シャイ、人見知り、不機嫌、不安感、落ち込み
外向的表れ:泣き叫ぶ、癇癪、怒りや欲求不満を身体的に表す
シャイや人見知りは、一見「感情の強烈さ」とは無縁にも見えますが、実は様々なことを強烈に感じているからこそだと言われます。でも確かにそうですよね。相手の気持ちや意図や自分の気持ちや言うべきことなどが嵐のように内側に吹き荒れているからこそ、何だかぎこちないような反応になってしまう。そして、ようやく発する自分の反応に対する周りからの反応をも強烈に感じ取ってしまうため、ますますうまく表現できなくなる。
同じ子でも、知らない人の前では内向的表れ、よく知る人の前では外向的表れということもありますね。
我が家でいえば、子供達もよく知らない場にいくと、別人のように静かになります。学校に入った1年間ほどは、先生方から「静かですが必要なことは話すようになってきました」といった報告が続き、学年が上になるにつれ「当時が別人のようです」というコメントをいただくというパターン。私自身振り返っても、多分今なら「場面かんもく症」と診断されていたかもしれないなあと。子供時代、知った人の前では明るい元気な子で通っていたんですが、よく知らない人の前では一切話せなくなってました。
そして「不安感」、これは私自身子供時代からの長い付き合いです。10年前に日常生活が送れないほどのピークを通り、おかげさまで今では本当に楽になりました。私の場合は、自分なりの内観を続けつつ、子育てを通し子供達や自分の特性や対処法を理解していくこと、そしてマインドフルネスが大きな助けになってくれました。今も日々のメインテナンスとして助けられています。
どういった人が「感情の強烈さ」を持つ?
心理学者の間では、どういった人々が「感情の強烈さ」を持つかについて、いくつか可能性があげられているようです。
(’The wound of being ‘too much’ – Emotional intensity’ by Imi, Yin Lo)
1. ハイリー・センシティブ・パーソン (人口の15-20 %)
2.ギフテッド (人口の2%とも)
3.ADHDや双極性障害など、もしくは誤ってそうしたラベル付けをされた人々
「ハイリー・センシティブ・パーソン(HSP)」とは?
心理学者Elaine N. Aron氏の著書『The highly sensitive child』より、「ハイリーセンシティブチャイルド(HSC)」の特徴:
1.驚愕し易い。
2.服の居心地悪さ、靴下の織り目やタグなど肌に当たる部分の不快さについて文句を言う。
3.大きなサプライズを楽しまない。
4.強く罰するより穏やかに正される方が学ぶ。
5.私の心を読んでいるよう。
6.年にしては「ビッグワード」を用いる。
7.普段と違うわずかな匂いに気づく。
8.賢いユーモアのセンス。
9.直感的に見える。
10.興奮した日は寝つけられない。
11.大きな変化時には調子がよくない
12.濡れたり砂がつくと服を着替えたい。
13.たくさんの質問をする。
14.完璧主義
15.他者の悲嘆に気づく。
16.静かな遊びを好む。
17.深い思考を呼び起こす質問をする。
18.痛みに敏感。
19.賑やかな音を気にする。
20.微妙なことにも気づく(何か動いたとか、人の見かけとか)
21.高いところに登るにも安全かどうか考慮する。
22.見知らぬ人が見ていないところでベストなパフォーマンスをする。
23.物事を深く感じる。
13項目以上「はい」だと、ハイリーセンシティブチャイルドとのこと。
とはいえAron氏も言うように、どんな心理テストであっても完璧ではなく。私自身、こういう心理テスト系は、常にあまりにも全く当てはまらない/当てはまるが混濁していて、しっくりこないことが多いです。この項目の場合は、確かに子供達にあまりにも当てはまっているんですが、それでも「大きなサプライズ」や「賑やかな遊び」も、時と場合によっては大好きです。
またどんな「くくり」のなかにも、多様性があり。HSC&HSPも、70パーセントは内向的であるけれど、30パーセントは外向的とのことです。
Aron氏によると、人口の15-20%とされる「ハイリーセンシティブチャイルド」。以上の質問だけを見、周りを見回すと、もっと多いようにも思えます。また子供の時分って、多かれ少なかれこういった敏感さを持っていることが多いのじゃないかなとも。HSC&HSPについて、これからリサーチを続けたいと思っています。
ギフテッドと「感情の強烈さ」
ここでは『Emotional Intensity in Gifted Students』の著者で長年スクールカウンセラーとしてギフテッド教育に関わるChristine Fonseca 氏の言葉をまとめてみます。
氏によると、ギフテッドの子は世界をとてもユニークなレンズで見ているといいます。どういったレンズかという、最もよく当てはまる言葉が「強烈さというレンズ」だと。
この強烈さこそが、驚くような物事を成し遂げることを可能にし、同時に、本人を消耗させることにもなり得ると言うのです。
それは認知的強烈さだけでなく、感情的強烈さでもあり。
認知的強烈さは、思考と情報処理面での、フォーカス、集中力、創造的な解決、高度な論理的思考などを指し、多くの人々にとって、「知的で賢い」といったポジティブな捉え方をされます。
一般的に「ギフテッド」と言うと、こうした認知的強烈さにスポットライトがあたるわけですが、同時に、ギフテッドの人々は感情的強烈さを持ち合わせていることも多いとされます。深く複雑に認知するからこそ、引き起こされる感情も激しいものになると。
極端に高揚したり落ち込んだりと言った感情的強烈さは、ギフテッドの人々が日々感じ、そして一生を通して体験すること、そしてギフテッドの人々が最も誤解され、困難を抱える理由の一つでもあるとFonseca氏は言います。
こうした「感情の強烈さ」は遺伝子のせい?
遺伝子ADRA2B異形を持つ人々は、ポジティブなこともネガティブなこともより強烈に感じ、扁桃体など感情面を司る脳の箇所が著しく活発と報告されています。また、PTSDなどメンタル面の問題も抱え易いと。こうしたことから、「感情の強烈さ」は遺伝子によるところが大きいのではないかとも言われています。
研究論文:http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-05/uobc-hyb050715.php
「感情の強烈さ」への対処法
Christine Fonseca 氏は「感情の強烈さ」がどのように表されようとも、親や教育者がその子の感情的爆発を減らし、対処法を教え助けていくことができると言います。氏は、癇癪などだけでなく上に挙げた「内向的外向的表れ」全てを指し、「感情的爆発」という言葉を用いています。
氏による「感情の強烈さ」への対処法です(’TIPS FOR WORKING WITH EMOTIONAL INTENSITY‘):
1. 早い次期から感情について話す
生々しい感情をより分かり易く定義できる形にすることは、行動をコントロールするのを学ぶ第一歩。
氏はその著書の中で、「感情的語彙」を培っていくことをすすめています。例えば「Stuck(はまりこむ)」というような言葉。自分が怒りや欲求不満などの感情にがんじがらめになって抜けられないといった状態を、爆発する前に「今『はまってる』」と表していく。そういった「感情的語彙」を親子で共通に理解できる言葉として培っていく。
2. 親子で自身の感情が高まるサイクルを見出す
子供は、時に親や教師の怒りのボタンを押すのが驚くほど上手。親として自分のボタンが押され爆発するパターンを見出すようにします。私自身、疲れていたり時間に迫られたりする時に子供が理不尽なことを続けてする、集中しているときに次から次に話しかけられる、そんな時は、「ハイ気をつけてー、くるよー」というような言葉を自分にかけるようにしてます。そうはいっても、不意をつかれたりかなり疲れていたりなどで、つい爆発ということはあるわけですが、それでも爆発の機会をかなり減らすことができます。
氏はこうしたサイクルを子供自身にも見出させるといいと言います。そんなこと可能?!とも思いますが、実際結構できるんですね。まずは落ち着いている時に、「爆発」について話し合ってみる。そして3にあるような、回避手段をみておく。それで、高まってきたという状況に「ほら」と自覚させることで、そのまま回避手段に移るということがあります。年齢にもよりますし、感情的マックスの時に、常にうまくいくわけではないですが。
3. 強烈さへの対処法を開発する
2で触れましたが、互いにサイクルを見出したら、人生が強烈になり過ぎた時、具体的にどうしたらいいか話し合ってみます。Fonseca氏は、深呼吸などリラックスするテクニックをあげています。我が家でも普段から呼吸や身体感覚に集中したりとリラックス法、試してみてます。
4. 爆発から感情的距離を持つ
とにかく爆発したら、自分と子供の感情の間に距離を作り、落ち着いていることが重要と。怒りや欲求不満は、より怒りや欲求不満を引き起し、ますます手のつけられない爆発へ・・・。もう本当によく分かります。まずは大人が感情的に中立であるようにする。その場からひとまず離れるのも手ですね。
5. 今見ている適切でない行為だけでなく、何をみたいかにフォーカスする
多くの場合ポジティブな行為ではなくネガティブな行為に強く反応してしまうもの。それはネガティブな行為にこそ感情的なフックがあるからと。釣られっぱなしにならないこと。必ずあるその子のポジティブな行為にフォーカスすることを忘れない。普段からポジティブな行為に時間とエネルギーをフォーカスするよう、自身に思い出させていきます。
6. 内向であろうと外向であろうと「爆発」を改善への好機ととらえる
爆発の瞬間は、周りを疲弊させます。それでも、それは次により良くなるためへと導くことのできる好機。自らの感情が高まるサイクルをより理解するために生かし、どんな方法がうまくいっていかないのかを吟味する機会にしていく。そんなことを繰り返していくうちに、随分とコントロールできるようになった自分に気づく時がきます。
こうして見てきて思うのは、「どういった人が『感情の強烈さ』を持つか?」のパラグラフについて、子供達は2のギフテッドと審査されていますが、1のHSCでもあり、3のADHDや発達障害のような特徴に目を通すと当てはまっていると思う子もいます。私自身は、1にしてはあまりにも気にしなさ過ぎる面も多々あり、2は定義が曖昧ではっきりしないところもありますが、テストによってはボロボロでしょうし、といって3にしても日常生活に支障が出るという程でもなく。それでも「感情の強烈さ」による生きづらさのようなものを感じてきたわけです。
こうした分類というのは、この子はこう!自分はこう!というよりも、便宜的なもので、助けになる対処法を参考にするためのものなのだと思ってます。すっぽり当てはまらないとしても、よりハッピーな暮らしのために役に立つのなら、どんどん用いていけばいい。そしてそういったグレーゾーンの人って多いのじゃないかなと。
日本では1のハイリーセンシティブパーソンや2のギフテッドなどはあまり知られておらず、こうした「感情の強烈さ」は3の特徴として集約されてしまいがちなのだと思います。そんな中、1や2の存在が「ひとつの個性」としてより広まり、3への対処法以外の方法が、より多くの人々の手に届くものとなるのも大切だろうと思っています。周りにフィットできないゆえ自分はおかしいのかもしれないと悩むことのある本人にしてみても、自らを1や2と同一視することで、ああこれは自分なりの特性なんだと、少し楽になるということもあるでしょう。
「感情の強烈さ」やその対処法について、引き続き調べ、実践し、まとめていきたいです。
それでは皆様、よい夏の日々をお過ごし下さい!