ギフテッド教育

「強烈な感情」を持つ子供達のギフトを生かしていくために

夏休み、5人のアクティビティーに走り回る合間に、身のまわりのものを吟味し、キープするものと手放すものとにより分ける、そんな作業を続ける毎日です。これまでなかなか目や手が届かずごちゃっとなっていた部分が整理されていくのは、気持ちがよいものですね。新居に落ち着いても、身のまわり、普段からシンプルにしていこうと思いつつ。まあ引越しの度に、そう決意するわけではありますが。
 
落ち着くのはまだ少し先になりそうで、新居に持っていくものもしばらく倉庫にしまい最小限で生活していくことになるので、この先二ヶ月ほど、ちょっと旅をしているような気持ち。子供達とこの大きな変化の時を楽しんでいます。
 
 
 
今日は、ギフテッド教育の様々な機関で用いられることのある、オーストラリアのギフテッド教育専門家L. Sword氏による「感情的強烈さ(Emotional Intensity)」についての説明と親へのアドバイス” Parenting Emotionally Intense Gifted Childrenをまとめてみます。
 
「ギフテッド」という枠組み内でなくとも、感情的強烈さを持つ子に日々向き合い、へっとへとになっている方にとって、その子についての理解がより深まり、対処法へのヒントになったらと願いつつ。
 
 
 

「知性の深さ複雑さ」と「感情の強烈さ」

「ギフテッドの特徴」とされるものに、多くの子がさらりと通り過ぎる物事を前にしても、より深く複雑に捉えるということがあります。こうした「知的複雑さ」は、時に「深く強烈な感情」を引き起こします。ギフテッドというと、一般的に「知性」が強調されますが、多くの場合、こうして「感情の強烈さ」も持ち合わせているんですね。
 
また単に「より感じてしまう」というよりは、「世界を体験するやり方が根本的に異なる」ともされています。生き生きと、のめりこみ、鋭敏に深い洞察力を持って、取り囲み、複雑に、指揮するように(vivid, absorbing, penetrating, encompassing, complex, commanding )。
 
 
 

「感情の強烈さ」の様々な表れ方

こうした「感情の強烈さ」には、様々な表れ方があります:
 
強烈に感じる:ポジティブ、ネガティブ、極端な感情、複雑な感情。他者の感情、笑い、嘆きなども自己と同一に強烈に感じたり。
 
身体的(somatic)表れ:腹部の緊張感、赤面、火照る、意気消沈(sinking heart)。
 
抑制:臆病さ、シャイ
 
感情の記憶:物事に伴った感情を覚えていて、長い間何度も再び感じる。
 
不安と心配:罪悪感や手に負えない感
 
うつ:死を思う、落ち込み
 
関係に伴う感情:強い感情や愛着、共感力、繊細さ、動物への愛着、新しい環境への順応困難、孤独感、関係の深さについて他者とのギャップ
 
自己批判の強さ:自己評価や自己ジャッジの強さ。自分はふさわしくない感。劣等感。
 
 
「感情の強烈さ」といっても、喜怒哀楽が激しいというだけでなく、極度にシャイだったり繊細だったり、自分を追い詰めたりといった様々な形で表れるんですね。「繊細さ」に関しては、心理学者Elaine Aron氏によると、「極めて繊細な人々:Highly Sensitive Person (HSP) 」というのは人口の10-15パーセントを占めているとも。
 
 
 

感情に重きをおかれない社会で「強烈な感情」を持って生きるということ

以下意訳です:
 
“歴史的に、感情の強烈さは、「内面の豊かさの証拠」というよりは、「感情的不安定さ」のサインとして見られてきた。伝統的に特に西洋では、感情と知性は引き離され、互いに矛盾する現象としてとらえられる。
 
それでも、感情と知性は固く結びつき、ギフテッドとされる人々に深い影響を与える。ギフテッドとされる人々の感情生活は強烈。社会や他者が、合理性や理性のみを強調し、感情的体験を無視するとき、ギフテッドの子供達は、不安になり、落ち込み、孤独感を感じ、社会的に不適だと感じ、感情的に閉じてしまうことがある。
 
全てについて他者より深く感じることは、痛く、恐ろしいことでもある。感情の強烈さを持つギフテッドの子供達は、「自分はおかしいんだ」「多分狂っている」「誰もこんなように感じたりはしない」と、しばしば自分をアブノーマルに思い、内的葛藤、自己批判、不安、劣等感にさいなまれる。
 
医療関係者はしばしば、ギフテッドの人々のこうした葛藤を「極度に神経質」である兆候として捉える。神経系に繊細さを抱え、外界からの刺激を鋭い知覚をもって区別し、自分や他者に対してより分析的で批判的になることが、「多動」や「気が逸れ易い」と描写されたりもする。
 
「感情の強烈さ」を「自分がおかしく間違っている」証拠として体験し、その上他の子も、ギフテッドの子の明らかに些細な出来事に対しても「過剰で強烈に反応」する様子を馬鹿にするかもしれない。そして「自分はおかしい」という気持ちがますます強くなっていく。また社会の不公平さや偽善さへの敏感さが、ギフテッドの子が若い時期に絶望してしまい、シニカルになっていくのに拍車をかける。”
 
 
 

強烈な感情を持つ子をどうサポートするか

では、こうした強烈な感情を持つ子をどうサポートしていけばいいのでしょうか。鍵は、強烈な感情を、内面の豊かさとして肯定していくこと、その上で、日常生活を送る上でそうした特性にどう向き合うかの現実的具体的スキルをつけていくこと。
 
感情を受け入れる:理解されサポートされていると感じる必要がある。強烈に感じることは何もおかしいことではなくギフトなのだと教える。彼らの知性と用いて、自己意識と自己受容を発達させることを助ける。
 
子供のアイデア・意見・感情に耳を傾ける:ジャッジすることなく、遮らず、モラルを突きつけず、アドバイスを与えず
 
規律(しつけ)の大切さ:家庭にとって大切な一貫したバリューやルールを用いた適切な規律(しつけ)は、安心感、自己規律、健やか感情を発達させます。ルールの利点を説明し、結果を示すことで守らせるようにする。
 
感情についてオープンに話し合う:ポジティブだけでなくネガティブなものも。1-10までの目盛りを用いて、今日はどんな感情はどうかなどと聞く。
 
ネガティブな感情に特定し、「最悪」から「そうでもない」まで1-10の目盛りを作り、ネガティブな感情の波に翻弄されているときに、「1から10の目盛りだとどれくらい?」と聞き、落ち着くのを助けるというのも、聞くことのあるメソッドです。我が家でも、癇癪などに用いることがあります。だいたいのことは、1-10の真ん中あたりに落ち着くんです。靴下が片方見つからない!とか、お気に入りの服にシミがついた!とか。自分で、あ、そっか、それほど大したことでもないんだと客観視することで、落ち着いていきます。
 
・繊細さや、強烈さや、情熱のよさを認める。彼らの痛みが心地割るからと言って彼らの感情を押し込めようとしないこと。「繊細過ぎるのよ」とか「目を覚ましなさい」とか「そんなの大丈夫よ」などと言っても助けにならない。
 
・子供であらせる。大人のふりをすることを期待しない。遊びや楽しいアクティビティーは、感情の健やかな発達にとって欠かせないもの。
 
・表現する方法を見出すことを助ける:安心させ励まし、強烈な感情を、ストーリー、詩、アートワーク、音楽、ジャーナル、身体的活動によって表現する方法を見出すことを助けてやる。
 
成果でなく努力を褒め、欠点だけでなく強みを強調する:物理的な能力が知的能力に見合わないときにフラストレーションを起こすと理解し、それらの葛藤への対処を助けてやる。
 
・女子だけでなく男子の感情にも重きを置く。男子が問題について話した意図するときも遮ることなく聞いてやる。これは歴史的に男の子はより理性的にという考えがあるということに背景としているようです。男の子なのにぐじぐじ言わない!そんなうじうじして女々しい!とか日本でも言いますね。
 
繊細さは弱さと同じではないと理解する。年齢相応しい責任を与え、世界や行為の結果から守り過ぎない。
 
・似たマインドを持った人々を支えにする:社会的孤立を防ぐため、似たようなマインドを持った仲間を見つける。またロールモデルを見つけるよう助ける。
 
必要ならばプロのカウンセリングを提供する:健やかな感情の発達と社会的感情の問題を防ぐという両方が必要。
 
 
 
 
 
Sword氏は、まずは親が、豊かな内的世界を持つ証という「強み」として、強烈な感情に価値を置くことが大切と説きます。そして親が自身の感情的体験を受け入れ体現することで、子供の心の支えになるロールモデルになり得ると。
 
「もし感情の強烈さが親によって認められ、強みとしてポジティブに子供に示されるのならば、子供がこのギフトを理解し価値を置くことを助けるだろう。こうして子供達は、自信と喜びを持って、彼らのユニークな自身を、彼らの持つギフトと才能を、この世界に表現する力を得るだろう」と。
 
 
 
 
 
強烈な感情は、豊かな内的世界の証。繊細さと弱さとは、同じではない。
 
強烈な感情を持つ子供達は、本人そして周りをへとへとにさせ、苦しみを生み出すこともありますが、また多くの可能性を秘めています。それは、ギフテッドとくくられる人々だけでのことではなくて。
 
ネガティブな感情に向き合うのは、自身であっても他者であっても、不快なもの。火山のように爆発し、この世の終わりのように打ちひしがれる子供を前に、親自身も火山を噴火させ、立ち上がる力を失ってしまい。それゆえ、感情を無視したり、抑えつけたり、押し込んだりとしがち。
 
ネガティブな感情にオープンになりつつも、それらに振り回されず、呑み込まれず、穏やかに力強く前を向いて進み続けていけたら。親も自身の感情に向き合うスキルを磨きつつ、子供達の持つユニークな特性を生かせるよう、サポートしていきたいですね。
 
このトピックについて、まだまだたくさん書きたいことがあるのですが、ひとまず今日はここまで。
 
少しずつまとめていくこと&探究を続けます!読んでくださって、感謝です。
 
 
 
写真は、一昨日の引き潮の海辺散歩。ジャーンプ!な次男。
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それでは皆様、楽しい週末をお過ごし下さい!
 
 
 

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