アカデミックのサクセスには、「ワーキング・メモリー」が大きく関わっているとされます。
「ワーキング・メモリー」とは、触れた情報を、より複雑なタスクをこなせられるよう、ひとまずの間、脳にうまくおさめておくシステムです。
例えば、
「教室の後ろにおいてある緑色のペンを持って、あの右の壁に貼ってある白いポスターの左側に、あなたの友達の名前を七人分書いてください」
といったインストラクションに、さっと従える子と、途中で分けが分からなくなってしまう子がいる。そして、前者のさっとこなせる「ワーキングメモリー」に優れた子が、アカデミックに秀でていいくと。
またこのワーキングメモリーは、現在「賢さ」を測るための一つの主な指標になっているIQテストとは、重ならないことが分かっています。IQが高くても、ワーキングメモリーが高い子もいれば低い子もいる。そしてIQが高くても、ワーキングメモリーが低い子ほど、学校でアンダーアチーバー(持てる能力より低い成果を出す子)になる可能性が高いと。IQに代わり、「ワーキングメモリー」を「賢さ」や「ギフテッドさ」を測る指標に用いるといいなどという意見も。
「ワーキング・メモリー」を測るテストを開発した心理学者Tracy Alloway氏は、教育者が「ワーキング・メモリー」を高めることにより力を入れることで、多くの子をアンダーアチーブから這い出させることができるとします。
Alloway氏による「ワーキングメモリー」の弱い子の特徴:
• 教室などでのグループ活動の際、控えめで、質問を投げかけられても答えられないことがある。
• インストラクションに沿うのが難しい。
• 複雑なタスクの途中で分けが分からなくなってしまったり、途中で投げ出してしまう。
• 手順を飛ばしたり繰り返したりといったエラーが見られる。
• 完全な情報を思い出すことが難しい。
• 簡単に注意がそれてしまう。
• 記憶と記憶を操ることを同時に必要とする活動が苦手。
上の特徴を見て思うのは、ワーキングメモリーが「低く見える」裏には、様々な理由があり得るということ。例えば:
・バイリンガルなど他言語を聞いている子は、ワーキングメモリーが低いように見えることがある。処理する情報が二倍三倍なため。それでも中学高学年から一気に伸びていく。
先の「教室の後ろにおいてある緑色のペンをもって、右の壁に貼ってる白いポスターの左側に、あなたの友達の名前を七人分書いてください」について言えば、
・疑問が次から次へと生まれる。なぜ青色でなく緑色でなくちゃいけないのだろう、僕は青色の方が好きだな。なんであんなに大きなポスターなのに、左側だけに書かなくちゃいけないんだろう。僕の本当のお友達といえば四人くらいだろうか、お友達の名前を書いてそれから何をするんだろう?など疑問だらけで前にさっと進めない。
・想像力溢れる。緑のペンでポスター一面に森を描き、など想像の世界に浸り、何をするのか忘れる。
・好奇心旺盛。ペンを取りに歩いていく途中に目に付いたことに心奪われ、何をしていたか忘れる。
・聴覚or視覚優位。口頭やビジュアルでのインストラクションかで、耳での処理が苦手な子や視覚での処理が苦手な子のワーキングメモリーも大きく変わる。
ああこういう子、身近な周りにも、我が家の子の中にも結構いるなあと。そして確かに年とともにうまくコーディネートできるようになっていく場合も多いと。
大きくなるにつれ徐々に発達していくということを念頭に置き、その子の持ち味を伸ばすよう心がけつつ、「ワーキング・メモリー」改善へと注意を払っていく。そうバランスよく働きかけていけたら、そう思います。
「ワーキング・メモリー」改善については、次の「ワーキングメモリー改善アイデア」へ。
参考資料:
http://tracyalloway.com/
”Working memory in children: How to improve attention problems and learning difficulties in kids” by Gwen Dewar, Ph.D. http://www.parentingscience.com/working-memory.html