アタッチメント

「アタッチメント育児」が教えてくれる「繊細さ」

800px-Mother_and_baby_ducks赤ちゃんや幼児の世話のあり方について、「アタッチメント育児(Attachment Parenting)」という流れがあります。心理学者 John Bowlby氏が六十年代に唱えた「アタッチメント理論」、その後に続く発展研究を基に、小児科医Bill Sears氏が提唱したものです。

 

「アタッチメント育児」には、子供時代に世話をしてくれる人物との間に築かれる強く感情的な絆(アタッチメント)が、その子の一生に大きな影響を与える。子供達の社会的感情的な発達成長を健やかに促すには、世話をする側の繊細さや感情的なサポートが必要であり、そういったサポートの欠如は、将来的にその子が様々な心的精神的問題を抱える要因になり得る、という考え方がその根底にあります。

 

子供との絆を築く「アタッチメント育児」の柱とされるのが、以下の「七つのBs」とされるものです:

 

1.産後の数時間を赤ちゃんと共に過ごす。Birth bonding: The first few hours after birth are regarded as very important to promote attachment.

 

2. . 赤ちゃんの泣き声等のサインには意味があると捉える。Belief in the signal value of your baby’s cries: Parents are encouraged to learn to understand their baby’s cries and respond quickly and appropriately to them.

 

3.母乳を与える。Breastfeeding: This is regarded to have physical and psychological advantages to both mother and child.

 

4.スリングやキャリアーなどで赤ちゃんを身体に近づけておく。Babywearing:The term was first used by Dr. Sears and it means carrying the baby in a sling or other carrier, close to the body of the caregiver.

 

5. 赤ちゃんと同じ部屋やベッドで眠る。Bedding close to baby: Sleeping in the same room and preferably in the same bed as the baby is encouraged, as is frequent (breast)feeding at night.

 

6.してよいこととよくないことの境界を設け、片寄り過ぎない。「何してもいいのよ」でもなく、「それはだめこれはだめ」ばかりでもなく、その間でバランスを取る。「。Balance and boundaries: Appropriate responsiveness (knowing when to say yes and when to say no) is needed to keep a healthy family live.

 

7.周りからのアドバイスや意見に常に従うよりも、親自身の本能や直感も大切にする。Beware of baby trainersBeware of baby trainers: Instead of taking advice about how to ‘train’ the baby to make it cry less and sleep for longer stretches, parents are encouraged to listen to their own instinct and intuition.

 

Sears氏以降も、数多くの実験調査により、その効果が示されているようです。また実際に七つ全てでなくとも、「できる範囲で」とSears氏はその本の中で記しています。

 

この「アタッチメント育児」は、欧米でのそれまでの赤ちゃんの世話のあり方に、より「敏感さや繊細さ(sensitivity)」を喚起させることになったと言えるように思います。それまでは、産後赤ちゃんと共に過ごすことが取り立てて重視されることなく、赤ちゃんの様子より大人の状況が優先され、抱き癖をつけたらいけないとベッドに寝かせたままにし、赤ちゃんは別室で離れて泣かせ続ける内に次第に慣れて一人で寝るようになるといったスポック博士のメソッドのみが支持され、身近な親より専門家やオーソリティーがより絶対的であった、とも言えるかもしれません。

 

「アタッチメント育児」が広まるにつれ、こちらでは「異文化」だった添い寝や一歳過ぎても授乳することに対し、「ああそういう選択もありなのね」と人々の間に寛容さも生まれました。

 

この「アタッチメント育児」を熱烈に支持する人々もいますが、母親に全ての責任がのしかかる、働く母親の罪悪感を煽る、赤ちゃんと共に寝るのは夫婦関係にとってよくないなどの批判もあり、これからも、「アタッチメント育児」が「本流」になることはないかもしれません。

 

私自身は、「アタッチメント育児」を特に意識していたということはないのですが、振り返っても、かなり「アタッチメント育児」万歳な赤ちゃんの世話を心がけてきたように思います。これからも、赤ちゃんや子供達に向き合う際、その子の側に立った「繊細さ」を思い出させてくれるメソッドとして心に留めていけたら、そう思っています。

 

 

参考資料:

”The baby book” by by William Sears, Martha Sears , Robert Sears , James Sears

”The science of attachment parenting” by Gwen Dewar, Ph.D.
http://www.parentingscience.com/attachment-parenting.html

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