米国の大学の学費は、世界中を見回しても、高いと言われています。
多くの学生は、学生ローンによって通うことが可能となるのですが、卒業した時点での一人当たりの借金は、2013年の時点で平均して30,000万ドル(約300万円)近く。学費は1983年以来5倍となり、こうして借金の額も上昇し続けているにも関わらず、大卒者のサラリーはそれほど変わっていないようです。
また米国経済が低迷するにつれ、膨大な借金を抱えながらも、卒業後も思うような職につけないケースも増え、現在42%の大卒者が「大卒」でなくてもよい職種についているという統計もあります。かつての「大学進学が中流階級への仲間入り」「大卒の方が、高卒より収入がいい」そんな言葉も、定かではなくなりつつあるようです。また米国でトップに位置する大学の卒業者の41%が、思うような職につけなかったと思っているという調査結果もあるようです。
「学びたい」ということならば、現在オンラインコースで、諸経費や生活費抜き授業費を払うのみで、トップクラスの大学の質の良い授業を受けることも可能です。
オバマ大統領が、「大学へ行かなくとも貿易について学んだ者の方が、大学でアートの歴史を学んだ者よりよほど収入を得ている」と一月に発言し、アートの歴史の教授から謝罪要求されるなどあったようですが、それは現実的な問題としてあるようです。
今週の “The Economist”の「大学に価値はあるのか?」と題した記事には、こうした現状の説明と共に、例え膨大な学費を払ったとしても、二十年後にリターンのある大学とマイナスになる大学が載せられています(PayScaleによる調査)。卒業後二十年しても赤字のままの大学も多いと!
また何を「専攻」するかもその「リターン」に大きく関わってくると。エンジニアは手堅く、高卒よりも二十年後には一億円以上多く稼いでいるだろう、それに対し、アート専攻はかなり厳しく、一部の大学(コロンビアやカリフォルニア大学サンディエゴ校など)を除き、高卒より一千五百万円ほど少ない収入の場合もあると。
他の記事(US News)からになりますが、ソーシャルワーク、小学校教師、演劇、人類学、考古学などの専攻も卒業後の収入面からみると、ワースト5。
ソーシャルワークや小学校教師が入っているところ、この国の先行きを想います。
「経済面」から見た米国での大学進学の厳しさ。
こうした事実を踏まえた上で、それでも私自身は、もし子供達がパッション溢れどうしてもこれがしたい!という気持ちが強いのならば、アートなり、考古学なりの道を目指して進んでいったらいいと思います。
私自身振り返り、こちらでワースト1に位置づけられもする「人類学」専攻で(笑)、当時もうそれ以外のことは目に入らなかったわけですが、それでもそうして大学大学院で学んだことや時期というのは、周りの同じような興味を持つ友人達たちとの出会いも含め、私にとってどうしても必要でかけがえのない過程だったと今振り返っても思います。まあ今人類学者になっているわけでもなく、周りにはっきりと分かる形で表れているわけではないですが。
お金は確かに重要だけれど、その人の内面の中心部分を形作る、どうしても変えられないものというのがあるのでしょう。それが文学であったり、音楽であったりする人もいる。それらを会計やビジネスに置き代えるのは、どうしても無理な場合もある。
もし、そうした「これがしたい!」と確固とした気持ちが大学進学を決める時点ではっきりとしていないようなら、またはあれとこれとで悩むようならば、将来的になるべく経済面での「リターン」の多い専攻を選ぶよう導く、または、オンラインコースも充実しているわけだし、ひとまずは大学進学しないという選択もある。
そう子供達を見守っていこう、そう思っています。
オバマ大統領、「大学の学費をもっと皆の手が届くよう下げることで、多くの人々がより多くのチャンスを手に入れることができる」と今月二日に言ったようですが、現状が改善されていくことを願いつつ。
参考資料:
“Is College worth it?” The Economist 5TH-11TH Apr.
“5 College Degrees that aren’t Worth the Cost” US News
写真 by Ingfbruno Wikimedia Commonsより