ホームスクール

ホームスクール

063既成の学校に通わせることなく、自宅を拠点とした教育を行うことを「ホームスクール」といいます。米国では盛んで、年々ホームスクールを選ぶ家庭が増えているとも言われています。米国でホームスクールを選ぶ理由としては、85%の親が安全性、ドラッグ、性的ハラスメント、いじめ、否定的ピア・プレッシャーなどの「社会的環境から守るため」をあげ、72%が「宗教的モラル的に導くため」、68%が「既成の学校の学力指導への不満」をあげています(2003年の調査Wikipedia)。ホームスクールは親が主導となり、既成の学校では提供できないと思われる教育環境を施すためのものです。

ホームスクール用のカリキュラムは数多くあり、家庭の方針に合ったものを選ぶことができます。宗教性を強調したものや、モンテソーリ式やウォルドルフ式のものもあります。そして親が自宅で教えるだけでなく、オンラインで授業をとる、チューターを雇う、ホームスクールをする者がグループになって少人数で共に学ぶ、など様々なスタイルを選ぶこともできます。ホームスクールを支援する団体も様々あり、また主要な大学のほとんどがホームスクールの学生の進学を認めています。政府からは、1人の生徒に付き年間二十万前後の補助金が出ます。

我が家では、長男と長女のキンダーガーデンを、ホームスクールしました。キンダーガーデンと言うと、日本で言う「年長」にあたりますが、こちらではキンダーガーデンから、小学生と同じ環境で学校に通い始めます。周りの子供達が皆学校に通い始める中で、朝自宅で学習、昼からはホームスクール仲間と集まり科学の実験やアートプロジェクトをしたり、友達と遊んだり。博物館や科学館などのホームスクール・プログラムに定期的に出かけ、英語の発音読み書きの授業は、チューターにもお世話になりました。

 

ホームスクールを選んだ理由は、ウォルドルフの環境に何年か親しんだ後では、突然公立の学校に通わせるということでは、あまりにもそのギャップが大きすぎるように思われたこと。そして、本をスラスラと読み、二桁の足し算引き算などもできてしまっていた子供達を、文字や数を一から学ぶ環境に毎日六時間以上おくことに対する心配もありました。

 

 

・ホームスクールで育つ子供達
周りのホームスクールの状況を見ていると、子供たちは学力的に先をいっているケースが多かったです。子供達一人一人に合った方法とペースで進んでいくので、当然ともいえるかもしれません。全国的な調査でも、ホームスクールをした生徒は、公立学校に通う生徒よりも学力が高いとされています。また情緒面でも安定し、満ち足りた雰囲気の素直ですれていない子供達が多かったよう感じます。守られた環境で、ゆったりと自分のペースで進むことができ、ストレスも少ないためといえるかもしれません。学校という集団での体験を経ないことから、社会性や協調性などの面を心配する声もあるようですが、むしろフレンドリーで物怖じせず、周りに気配りのできる自信に溢れた子供達の方が多かったように思います。全国的な調査でも、ホームスクールをした生徒は、卒業してからも社会的に活動的な人々が多いとも言われています。また「とても幸せな人生。人生はエキサイティング」と答える人々が、一般の学校を卒業した人々よりも、格段に多いという結果もあるようです。

二年間というホームスクールの間、いくつかのホームスクール家庭と交流しました。ホームスクールが成功するかどうかは、親に大きくかかっています。規則正しくカリキュラムを進め、他の子供たちと交流する機会を作り、その子の様子を観察し、いい面を引き出し伸ばしてやるよう導き、神経質になり過ぎず大らかに見守り、張りすぎず緩みすぎずの学習環境を整えてやる。それには、親の果てしない献身的な日々の努力が必要になります。ホームスクールを通し、既成の価値観に捕らわれることのない、素晴らしい親達に出会うことができました。こんな親の選ぶ環境で、温もりに包まれて育つホームスクールの子供達は、何て幸せなのだろうと思ったものです。

 

 

・ホームスクールから公立学校へ

それでも長男長女とも、小学校一年から公立の学校に通うことになります。私も夫も英語が第二外国語であるということ、より複雑精致な英語を操る力をつけるためにも、英語を母国語とする人々に囲まれる必要があると感じたことが、一つの理由です。また妊娠出産と繰り返す中で、上の子達のホームスクールにかける時とエネルギーが、下の子達の世話によって限られてしまうというジレンマもありました。そして学力面では、その子その子のペースに合わせ、どんどん先を学ぶことのできる環境が用意された「ハイリーギフテッド」プログラムへの入学が許されたことも大きかったです。

 

我が家がホームスクールを続ける上での困難と、子供時代から多様な価値観に囲まれ、時には理不尽な扱いを体験しつつもそれらを乗り越え力強く育つといった、既成の学校へ通うことのポジティブな面も考慮した結果、こうした決断となりました。子供達も、同じ年齢の友達に囲まれ学んでいくという環境を、とても楽しみにしていました。

 

 

・日本でもホームスクールを

ところで、このホームスクール制度、日本にこそ導入されたらいいのにとつくづく思います。ホームスクールを支援する団体は、日本にもいくつかあるようですが、制度として定着していけばと思っています。こちらでは、学校に合わないためホームスクールを始めたという家庭も、たくさんあります。「不登校」や「引きこもり」といような言葉も、ホームスクールがオプションとして行き渡っているのなら、聞かれなくなるでしょう。

 

確かにホームスクールができる生活状況にある家庭も、今の日本の状況では多くはないのかもしれません。それでも少人数のホームスクール・グループや、サポート団体などがもっと認められ、政府から補助金なども支給されるようになれば、共働きの親であっても、ホームスクールを選択することは可能となるでしょう。

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