睡眠

夜の不安感や悪夢にどう対処したらいい?

023夜電気を消すと、不安になり「恐い」とつぶやく。どこかで見た恐ろしいイメージや悪夢が蘇り、一緒に手を繋いで眠って欲しいと言う。

 

夜不安感に包まれる、それは子供にとって、それほど珍しいことではないようです。オランダの研究では73%の4-12歳までの子供達が夜不安感を経験し、オーストラリアでの調査では8-16歳の64%が、夜心配感や不安感が押し寄せることがあると報告されています。

 

人類の歴史を遡ると、その99%が狩猟採集時代。暗くなると無防備な子供が一人にされることはあり得えず、親は外的から守るため、必ず子供と一緒に寝ていたといいます。子供達が夜抱く不安感とは、長い間培われたそんな人類の性質の表れなのではないか、そんな説もあります。

 

夜一人で眠る。こちら米国では、生後六ヶ月頃から、「そろそろ一人で寝る訓練をさせてもいい頃ですよ」と小児科でも指導されます。三歳になる頃には、一緒に寝ていると言うと、はっきりと「別々に寝た方がお互いよく眠られますよ」と勧められます。

 

長女も二年生の時、教室で「お母さんと寝てます」と言ったところ、「それはよくないですね。もう一人で寝る年ですよ」と皆の前で先生に言われ、ショックを受けたことがあります。

 

住宅事情もありますが、親と一緒の寝室で眠るということは、こちらではとても珍しいこと。周りを見ていても、就寝時間になると、お休みなさいとハグを交わし、一人部屋へ行き電気を消しベッドに入りすやすやと眠る、よちよち歩きの頃から、そうできる子も多くいます。

 

早い内から慣れさせないから、一人で安心して眠ることがより難しくなるとも言われますが、そうとも一概には言えないと、早い内からトレーニングを受けただろう上のオランダやオーストラリアの子の調査結果を見ても思います。そしてまた私自身の体験を振り返っても、そう思うのです。

 

私自身、物心ついた時には、両親と離れ、兄と二段ベッドで眠るよう「訓練」されていました。ところが日中は普通の快活で元気な子だったのですが、夜になると毎晩のように押し寄せる不安感を感じていました。地震が起きるんじゃないか、兄の眠っている二段ベッドの底が抜け潰されるんじゃないか、夜中泥棒が入ってくるんじゃないか、押入れに誰か潜んでいるんじゃないか、お化けにどこか連れて行かれてしまったらどうしよう、私は多分尋常でない病気にかかっていて明日にはもう生きていないだろう。

 

今思うと、まあよくこれほどネガティブなアイデアが出るものだと感心してしまうくらい。そして毎晩必ず真夜中ばちりと目を覚まし、暗い廊下を母親の寝室目指して行くのです。あの母親の布団の中に潜り込んだ瞬間を、今も覚えています。温もりに、心の底から安心してすやすやと眠りに落ち。

 

こんな私自身の体験からも、夜一人で安心して眠られるかどうかは、「訓練や慣れ」というより、子供の性質のようなものが大きく関わっているように思います。

 

世界中の多くの国々では、今でも親子隣り合わせに眠るのが普通です。西洋の限られた国々でのみ(特にアングロサクソン系)、一人で眠るよう赤ちゃん時代から訓練されます。

 

そして親が一緒に寝ることをサポートする説もあります。共に眠ることは、親子間のアタッチメントを築くための「柱の一つ」であるというのです。一緒に寝ることは自立心を損なうという見方もあれば、いやしっかりとした安心感が育ち、自立心をより育てることになるという見方もあります。九百人のケベックの二歳以上の幼児を調査したところ、母親のベッドで眠った子供の方が、後に悪夢に悩まされることが少なかったという結果もあります。

 

こうした研究、そして自身の体験からも、一人で安心して眠られるようならば一人で寝かせ、もし不安感を抱えるようならば、一緒に寝てやるのが一番、そう思います。家でも、夜不安になりがちだった五人の子供達、赤ちゃん時代から隣で寝ています。それでも小学校も中学年以上になると、自然と一人で眠られるようになるもの。

 

以下は、夜不安感を抱えてしまう場合、「一緒に眠る」以外の対処方法例です:

 

1.空想と現実の区別について話す。空想と現実が入り交ざってしまう子ほど、想像力豊かでもあると言えますが、悪夢を見やすいという研究もあります。また小さな子ほど境界は曖昧なもの。成長と共に、境界がはっきりとし、恐がることも少なくなりますが、「このモンスターは物語だけに出てくるのよ」「この映画は俳優の人達が演じていてね」など、空想と現実の区別について話すのもいいです。

 

2.眠くなる時間に床につく。眠くない状態で横にならせると、空想妄想が頭を駆け巡ってしまうもの。その子に必要な睡眠時間を見直してみます。

 

3.特に寝る前に恐いテレビの映像や話を聞かせない。「このイメージをどうやったら取り除ける?」子供達がそう泣きべそ顔で寝る前に聞いてきたことが今まで何度かあります。私自身、地震の映像を見て、何週間もそのイメージが蘇り恐くて寝られなかった思い出も。今でも私自身はホラー映画など苦手ですが、敏感な子には、特に小さな頃は、あまり強烈な映像を見せないようにします。

 

4.スキンシップ。寝る前に抱きしめたり、普段から温もりにしっかり包んでやると夜も安心します。

 

5.日中のストレスの緩和。日中何か心配事を抱えていると夜不安感を持ち易いもの。ゆったり過ごせるよう心がけます。

 

6.柔らかい縫いぐるみを抱っこして。お気に入りの縫いぐるみを隣に並べたり、抱きしたり。縫いぐるみなどを与えらた子供達の方が、より不安感や悪夢などの問題を抱えることがなかった、という実験結果もあります。

 

7.悪夢はすぐに夢だと覚まさせる。悪夢にうなされ起きた場合は、すぐにそれは現実ではない夢だと分からせるようにすると、また落ち着いて眠りに戻れます。

 

8.少し明かりをつける。私自身子供時代どうしても恐くてしょうがない場合は、懐中電灯をつけ眠ったこともあります。青いライトは、眠くなるのを妨げることもあるため避けるといいようです。

 

9.落ち着いて対応する。不安で恐くてしょうがない子供に心をかき乱され、ますます不安感を煽らないようにします。子供の前では、穏やかに落ち着いて大丈夫よ、と抱きしめ声をかけつつ、着実に改善に向けできることをしていきます。

 

10.リラックスさせる。鼻から吸い口から吐き、寝る前にゆったりと呼吸するようにしてみます。不安になっているときなども共に呼吸してみるのもいいです。

 

11.医師や専門のセラピストに相談する。最近の研究(2014)では、夜こうした問題を持つ子供は、日中も不安感(anxiety)、衝動性(impulsivity)、注意欠如(abnormal attentional control)など様々な問題を抱えることがあるともされています。セラピーの方法も様々あるようです。

私自身振り返り、今の時代ならセラピーを受けていたかもしれないなと思います。確かに心身面で様々な問題を抱えました。私自身のように、愛情をかけてもかけても底なし沼の不安感を持ってしまう子もいるものです。それでも両親の温もりを体験できていたこと、それがそんな底なし沼から這い上がるための、大きな力となっていたと感じます。

 

 

今こうして子供達を前に、そんな自身の体験を生かせることもでき、全て良い体験だった、そう思えます。夜不安感を抱えることのあった子供達も、大きくなるにつれ、一人ですやすやと眠りにつくようになっています!

 

参考資料:

”Nighttime fears in children: A guide for the science-minded” by Gwen Dewar, Ph.D., http://www.parentingscience.com/nighttime-fears.html

”Nightmares and night terrors in children: An evidence-based guide” by
Gwen Dewar, Ph.D., http://www.parentingscience.com/night-terrors-in-children.html

“Assessment of brief interventions for nighttime fears in preschool children.”by Kushnir J, Sadeh A. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21594575

“Nighttime fears and fantasy-reality differentiation in preschool children.” by Zisenwine, Kaplan M, Kushnir J, Sadeh A. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22760490

“Nighttime fears of preschool children: a potential disposition marker for anxiety?” by Kushnir J1, Gothelf D2, Sadeh A3. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24262125

”Longitudinal study of bad dreams in preschool-aged children: prevalence, demographic correlates, risk and protective factors.” by Simard V1, Nielsen TA, Tremblay RE, Boivin M, Montplaisir JY. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18220079

“The Attachment Parenting Book : A Commonsense Guide to Understanding and Nurturing Your Baby” by William Sears & Martha Sears

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