「子供は遊びから学ぶ」、子供達の成長を見守る中で、本当にそう思います。
では具体的に、「遊び」とは子供の成長にどんな関わりがあるのでしょう?
・大脳皮質の発達成長を促す。「遊び」の効用は、動物を用いた実験に如実に現れます。たくさんの遊び道具や遊ぶことのできる環境を与えられたネズミは、遊びのない退屈な空間に閉じ込められたネズミよりも、大脳皮質(cerebral cortex)がより発達し、脳の細胞の成長を司るbrain-derived neurotrophic factor (BDNF)が著しく成長し、難しい迷路を駆け抜けゴールに辿りつくなど、記憶力や問題解決能力が高くなることが分かっています。
・衝動性を抑え自身を律すること(self-control)を身につける。全ての哺乳類は「遊ぶ」ことが分かっています。動物学者によると、子犬や小熊のじゃれ合いなど、動物は「遊び」を通して、「衝動性」を抑えることを学んでいるとされます。これ以上強く噛んだら、相手を傷つけてしまうかもしれないな、そう自らの衝動を制御する感覚を学んでいると。ヒトの子供にとっても、「遊び」は衝動性を抑える効果があるとされます。
・問題に対する多様な解決法を身につける。心理学では、「問題」には、「convergent(収斂的)」と「divergent(散開的)」の二つのタイプがあるとされています。前者は答えが一つであり、後者は答えがいくつもある場合。「遊び」は、後者のような散開的問題を解決する能力を発達させるとされます。
・課題へ取り組む意欲を高める。十分から二十分の、インストラクションのない自由な遊び(放課)をはさんだ方が、生徒の取り組みの質や効率が上がるという実験結果があります。それでも三十分以上になると逆に効果は下がり始めるとも。
・失敗を恐れずのびのびと練習できる。「ごっこ遊び」は、異なる立場の人々になり切ることで、多様な人々を理解する機会となり、人の繋がりの中で生きていくための練習となります。
・論理的思考、言語能力を発達させる。「ごっこ遊び」は、「~だったらどうだろう?」という論理的思考が育ち、また言語能力を発達させるという実験結果もあります。
・人が最大限の力を発揮できる「フロー状態」を身につける。子供達は、遊びを通して自らより深く興味を探索することで、リラックスしつつ集中した「フロー状態」を体験します。遊びは、こうした努力を努力と思わないフロー状態を身につけることを促します。
米国では、世界恐慌時代、戦時中、冷戦中、激動の六十七十年代の子供達よりも、現代の子供達のほうがより不安感や欝を抱えていると言われています。そしてそれは、「遊び」の時間が足りないからではないかと言う説もあります。多くの「先進国」で、自由な遊びがより見られなくなるにつれ、子供達はよりこうした心や行動面の問題を抱えるようになったと言うのです。(by 心理学者Peter Gray)
遊びは、ルール、自律心、決定力、感情の調整、他者との交わりを自ら楽しんで学ぶ最高の方法。
九十パーセント近くの子供達が、コンピューターで遊ぶよりも、テレビを見るよりも、外で友達と遊ぶことの方が好きと答えたという調査結果(by IKEA )もあります。
人類学では、「遊び」は、理性が抑制しようとするカオスや無秩序を認め受け入れるため、西洋の科学にとって扱いにくく、否定手的に捉えられることもあるとされます。
それでも、カオスや無秩序を取り込むが故、「遊び」は人間生活のなかでの創造性の源泉でもあるのです。
子供が小さければ小さいほど遊び中心に、学習も遊びを通してがいい、そう思います。
大人も生活に遊び心を取り入れ、時に創造の風に触れ心の調整をしていけたら、そんなことも思いつつ。
参考資料:
“The cognitive benefits of play: Effects on the learning brain” by Gwen Dewar, Ph.D
http://www.parentingscience.com/benefits-of-play.html
“Lack of free play harms kids: The evidence”
by Gwen Dewar, Ph.D. http://blogs.babycenter.com/mom_stories/8-26-2011-lack-of-free-play-is-harming-our-kid/
『文化人類学I』 E.A.シュワルツ・R.H.ラヴェンダ著 古今書院