詩と俳句

少女の生きた戦争

今月のブッククラブのテーマ本で、今週次女十歳と共に読み終わった本が、「Inside out & back again」by Thanhha Laiです。フランス出身のお母さんのお薦めでした。
 
ベトナム戦争時代、アメリカに移民してきた少女が主人公の、著者自身の体験に基づいたフィクション。当時の様子が、少女の視線から「詩」の形式で描かれています。
 
時に笑みがこぼれ、しみじみと切なく、涙溢れ。パパイヤの香りに包まれるような、子供が読んでも大人が読んでも、素晴らしい作品です。
 

800px-Indian_papaya
 
少しこちらに訳してみます。
 

Missing in Action

Father left home
on a navy mission On this day
nine years ago
When I was almost one.
 

He was captured
on Route 1
an hour south of the city
by moped.
 
That’s all we know.

 
This day
Mother prepares an altar
to chant for his return,
offering fruit,
incense,
tuberoses,
and glutinuous rice.
 

She displays his portrait
taken during Tet(New Year)
the year he disappeared.
How peaceful he looks,
smiling,
peacokc tails
at the corners
of his eyes.

 
Each of us bows
and wishes
and hopes
and prays.

 
Everything on the altar
remains for the day
except the portrait.
Mother locks it away
as soon as her chant ends.

 
She can not bear
to look into Father’s
forever-young
eyes.
 

行方不明なまま

お父さんは、
九年前の今日、
軍のミッションで家を出た。
私が一歳の時だった。
 
そうして街から一時間ほどいった「ルート1」で、
モペット(小さなエンジンとペダルのついた自転車)に捕まえられた。
 

私達が知っているのは、それだけ。
 

この日から、
お母さんは祭壇を用意して、
フルーツと香と月下香のお花とお米を供えて、
お父さんの帰りを祈っている。
 
お父さんがいなくなった年の、
新年に撮った写真を飾って。
写真の中のお父さんは、
穏やかな顔をして笑っている。
孔雀の尻尾を目の角につけて。
 
私達はおじぎをして、願い、祈る。
 
祭壇には、
この写真以外は全部一日中置いてある。
でもお祈りが終わると、
お母さんはすぐに写真をしまってしまうの。
 
お父さんの若いままの目を見るのが、
堪えられないって。
 
 
 

Unknown Father

I don’t know
any more about Father
than the small things
Mother lets slip.
 
He loved stewed eels,
Patt chaud pastiries,
and of course his children,
so much that he
grew teary
watching us sleep.
 

He hated the afternoon sun,
the color brown,
and cold rice.
 
Brother Quang remembers
Father often said
tuyet sut,
the Vietnamese way
to pronounce the French Phrase
Tout de suite
meaning right away.

 
Mother would laugh
when Father followed her
around the kitchen
repeating,
I’m starved for stewed eel,
tuyet sut, tuyet sut.

 
Sometimes I whisper
tuyet sut to myself
to pretend
I know him.
 

I would never say tuyet sut
in front of Mother.
None of us would want
to make her sadder
than she already is.

 

知らない父

お父さんについて、何も知らない。
お母さんが口を滑らせる、少しのこと以外は。
 
お父さんは、ウナギのシチューとPate Chud パストリーが大好きだったんだって。
そしてもちろん、子供達のことも大好きだった。
あんまりにも大好きだったから、私達が寝てる姿を見ながら、涙を流してたって。
 
お父さんは、午後の太陽が大嫌いだった。
茶色と、冷たいご飯も大嫌いだった。
 
お兄ちゃんは、お父さんが「tuyet sut」ってよく言っていたのを、覚えているって。
フランス語の「tout de suite」を、ベトナム語っぽく発音した言葉。
「今すぐ!」っていう意味なの。
 
お父さんはよく台所で、
「ウナギのシチューはまだかい?ああ飢え死にしそうだよ。tuyet sut!tuyet sut!」って言いながら、
お母さんについて回って。
お母さんはその度に笑っていた。
 
時々、私はささやいてみるの。
「tuyet sut」って自分に。
お父さんを知っているかのように。
 
お母さんの前では、絶対に「tuyet sut」と言わないわ。
誰もお母さんをこれ以上、悲しませたくないもの。
 
 
 

戦禍を逃れ米国に渡り、アラバマ州に暮らすようになった少女。英語のうまく話せない異国から来た少女、学校でいじめられ続けます。
 

War and Peace

MiSSS SScott

shows the class

photographs
 
of a burned, naked girl

running, crying

down a dirt road
 
of people climbing, screaming,

desperate to get on

the last helicopter

out of Saigon
 
of skeletal refugees,

crammed aboard a

sinking fishing boat,

reaching up to the heavens

for help
 
of mounds of combat boots

abandoned by soldiers

of the losing side.

 
She’s telling the class

where I’m from.
 
She should have shown

something about

papayas and Tet (new year)
 
No one would believe me

but at times

I would choose

wartime in Saigon

over peacetime in Alabama

 

戦争と平和

スコット先生が、クラスの皆に写真を見せる。
 
土の道を泣きながら走る、火傷した、裸の少女。
サイゴンを出る最後のヘリコプターに、叫びながら必死になってよじ登ろうとする人々。
安全な地に辿り着こうと、沈みそうな漁船に塊になって、乗り込もうとする痩せこけた避難民。
負けた軍人の、戦闘用ブーツが、いくつも置き去りにされている様子。
 
スコット先生は、クラスの皆に向かって、私がどういうところから来たか教えるの。
先生、もっとパパイヤや新年のお祭りの様子を見せてくれたらよかったのに。
 
私が、時々、この平和なアラバマより、
戦争中のサイゴンの方がいいと思ってしまうなんて、
誰も信じないだろうな。

 
 
 

Eternal Peace

Mother wears

her brosn do dai

brount from home.

 

Each of my trothers

wears a suit,

too small or too big.

 

I wear a pink dress

of ruffles and lace,

which I hate,

but at least

It’s definitely a dress.

 

Each of us faces the altar,

holding a it incense stick

between palms in prayer.

 

Father’s portrait

stares back.

 

This is as old

as we’ll ever know him.

That thought

turns my eyes

red.

 

Mother says,

We’ll chant

for Father’s safe passage toward eternal peace,

where his parents await him.

 

SHe pauses,

voive chokes.

 

Father won’t leave

if we hold on to him.

If you feel like crying,

think

at least now

we know.

 

At least

we no longer live

in waiting.

 

永遠の平和

お母さんは故郷から持ってきた茶色のアオザイを着て。
お兄ちゃんたちは、小さ過ぎず大き過ぎずのスーツを着込んで。
私は大嫌いなひらひらのピンクのドレス。でも少なくてもドレスではあるから。
 
皆で祭壇に向かって、
火のついたお香を手に持って、
祈る。
 
お父さんの写真が、皆を見つめている。
いつまでもこの年のままのお父さん。
そう思うと涙が出てくる。
 
お母さんが言う。
「祈りましょう。
お父さんが、お父さんの両親の待つ、
永遠に安らかなる地へ旅立てるように」
 
お母さんは少し間をおいて、声をつまらせる。
 
「もし私たちがお父さんにしがみついていたら、
お父さんは行かれない。
もしあなたたちが泣きたくなったら、
思いなさい。
今私達は知っていると。
私達はもう、
待って生きることはしないのだと。」

 

 

 

Start Over

I’m trying to tell

Misssisss Wasshington

about our ceremony for Father.

 

But it takes time to

match every noun adn verb,

sort all the tenses,

remember all the articles,

set the tone for every s.

 

Misssisss WaSShington says

if every learner waits

to speak perfectly,l

no one would learn

a new language.

 

being stubborn

won’t make you fluent.

Practicing will!

The more mistakes you make,

the more you’ll learn not to.

 

They laugh.

 

Shame on them!

Challenge them to say

something in Vietnamese

and laugh right back.

 

I tell her

Father is at peace.

 

I tell her

I’d like to plant

frlowers form VIetnam

in her backyard.

 

I teel her

Tet is coming

and luck starts over

every new year.

 

新しい始まり

ワシントン先生に、「お父さんのための儀式」について、話そうとする。
名詞と動詞を全部合わせて、文章に整えて、全部の助詞を思い出しながら、「s」のトーンに気をつけて。
そうしていると、ひどく時間がかかってしまう。
 
ワシントン先生は言う。
「もし完璧に話せるまで待っていたら、
誰も新しい言葉なんて習うことはできない。
頑固であることは、
その言葉を流暢に話せるようにはしないのよ。
練習が流暢にしてくれるの!
失敗をたくさんするから、どうしたら失敗しないか学べるの。」
 
皆が笑う。
 
「恥を知りなさい!
ベトナム語で何か言ってみるように言ってやりなさい、
そして笑い返してやりなさい。」
 
先生に言う。
お父さんは、安らかな地にいると。
 
先生に言う。
先生の裏庭に、ベトナムの花を植えてあげたいって。
 
先生に言うの。
Tet(新年のお祭り)はもうすぐ。
運は、毎年新年になると、
また初めから新しく始まるんですよって。
 

 

 
 

 

読み終わった次女、
「読みながらね、最後にはお父さん、帰ってくるんだろうなって思ってた」
とポツリ。

 

少女の生きた戦争、
胸に。

 

 

 

パパイヤの写真 by Jagbot (Wikimedia Commonsより)

 
 
 
 
 
 

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