学習支援

学業で成功する鍵「知的好奇心」、潰す環境&育む環境

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これは何だろう?

触ったらどんな感じだろう?

こうしたらどうなるかな?

どんな仕組みになってるんだろう?

 

目を輝かせ、好奇心溢れる子供達。

 
ある心理学者の研究(“The Hungry Mind” by Sophie von Stumm, Benedikt Hell and Tomas Chamorro-Premuzic )によると、アカデミックで成功するためには知性努力と共に、知的好奇心が鍵だと言います。
 
それでも、幼い頃は好奇心の塊のようだった子供達も、年齢が上になるにつれ、多くの場合、好奇心がフェードアウトしてしまうと言われています。確かに周りを見回しても、3歳児のように目を輝かせ、どうして? なぜ?と好奇心に突き動かされる高学年の子供達が、どれほどいるでしょう。
 
 

ではなぜ、好奇心はフェードアウトしてしまうのでしょうか?

生物人類学者のGwen氏は、以下の「3つの理由」を挙げています。
 

1. 周りの大人の行為を見て自身を規制してしまう

以下のクリップに、この様子がとてもよく現れています。
 
実験者に玩具を見せられ、興味を示す15ヶ月の女の子。そこへ見知らぬ人物が来て、実験者が玩具を触る様子を少し強い口調で「腹が立って我慢できないわ!」などと非難します。するとその様子を見た女の子は、一切その玩具に手をつけなくなります。

クリップにはありませんが、この「見知らぬ人物」が部屋を去った後、女の子は母親(抱っこする人物)の顔を見、玩具で遊び始めたとのこと。
 
つまり、周りの大人が厳し過ぎたり、思いやりや愛情にかけるような言動が多い場合など、子供がのびのびと好奇心を広げ探索できる気持ちになれないということですね。
 
 
 

2. 周りの子供達に順応するため

子供は、周りの子と仲良くしたいという気持ちから、自身の好奇心を抑えてしまうことがあります。
 
4歳児を対象にした実験で、ほとんどの子が、「間違っている」と確信していながらも、他の子達が「正しい」というと周りに同調してしまうといった実験結果もあります。
 
また小学校高学年にもなると、「I don’t care(どうでもいい)」という態度がクール、一生懸命何かに夢中になるという様子は「かっこ悪い」といった風潮もあるなあと、子供達を見ていて思いますね。
 
 
 

3.「親切な大人」の存在

子供自身に探索させるよりも、答えや答えに至る方法を示してしまう「親切な大人」が周りにいる場合。
 
MITとカリフォルニア大学バークリー校での以下の「2つの実験」が、このことを分かり易く示してくれます。私自身普段感じていることが、まさしく表されていると感じる実験です。
 
MITでの実験:
4つの管のついた玩具を4歳児に見せます。1つの管をひっぱると音がなり、もう1つの管を覗くと鏡があるといったように、それぞれの管に、異なる仕掛けがあります。
 
グループAには、実験者が、「こんな玩具を見つけたわよー!」と言いながら玩具を見せ、偶然管を引っ張って音が鳴りびっくりした!といった演技をします。「うわあ、今見た?ちょっともう一回やってみよか?」と驚きながら、もう一度管を引っ張り音を鳴らしてみます。
 
グループBには、実験者が、「先生らしく」振舞います。「今からあなた達に私の玩具がどう動くか見せましょう。見て下さい、ほら!」と言いながら管をひっぱり音を鳴らします。
 
その後、AとBの両方のグループの子供達に、その玩具で自由に遊ばせるようにします。子供達全員、示された管をひっぱり音を鳴らして遊びます。それでも、グループAの子供達が、好奇心旺盛に長く遊び他の管の仕掛けも発見したのに対し、遊び方を直接指導されたグループBの子供達は、好奇心をあまり見せることもなく、他の管の仕掛けを発見することも少なかったと。
 
 
バークリー校での実験:
MITでの実験より、少し複雑な仕掛けの玩具が4歳児に示されます。取っ手を握り、てっぺんのパッドを押し、横についている輪を引っ張るといった3つの行為の組み合わせの順番によって、音がなったりならなかったりする玩具です。5回音のなる組み合わせ、そして4回音のならない組み合わせが混ぜこぜで示されます。
 
グループAには、実験者が、「分けがわからない」といった様子で玩具を示します。「見て見てこの玩具、なんだろうねえ、どうやって遊ぶんだろう。試してみようか」と言いながら。
 
グループBには、実験者が、「先生らしく」振舞います。「この玩具は、こうしたら音がなるんですよ」と。
 
その後、「やってみて」と子供達に渡します。
 
グループAでは、子供達は好奇心旺盛に玩具に向き合い、音楽を鳴らす「最も知的な方法」を見出したと言います。実は、仕掛けの3つ全てを組み合わせることなくとも、特定の2つの行為を特定の順番でするだけで、音が鳴るということを見出したのです。実験者が先生らしく振舞ったグループBの子供達は、実験者の真似をして3つの仕掛けをいじるだけで、より「知的で効率のよい新しいやり方」を発見することはなかったと。
 
 
これら2つの実験から分かることは、直接的な指導は、子供達の学びを狭めてしまう可能性があるということ。『教える』ことは、子供達が特定のことを学ぶためには、とても有効な方法。それでも同時に、予期しなかった情報や結果を発見するといった、より広い範囲での学びを妨げてしまいます。
 
教室で「先生」が指導するといったような場合、先生が何か面白いことがあったら教えてくれるだろう、といった推測が、子供達の視野を狭くし、先生が示す特定の情報しか考慮しなくってしまう。逆に先生がいないと、より広い範囲の情報や選択肢を考慮するようになるといった、調査報告もあります。
 
発達心理学者のAlison Gopnik氏は、以上のことを踏まえ、こんなことを言います:
 
「大人は、子供というのは『教えられる』ことによって最も学ぶと思っています。子供自身が探索したりといった自発的な学びは、普通ではないと。それでも実際は、『自発的な学び』こそが最も中心にある土台なのです。それこそが、子供が先生から学ぶことを可能にしているのです」と。
 
「先生」から「教えられる」と、確かにより早く正しい答えを手に入れることができる、それでも小さな子に自然な、より広い学びのあり方を失ってしまう可能性もある。そして、本来は自然なはずの、好奇心に突き動かされた自発的な学びのあり方さえ損なわれる可能性もあるということなんですね。
 
 
 
 

 では、好奇心を伸ばしてやるにはどうしたらいいのでしょう?

以上の好奇心をフェードアウトさせてしまう「3つの理由」とは、「反対の環境」を想像してみると、ヒントになります。
 

 1.子どもがのびのびと自由に探索できる環境を整える

愛情と思いやりのあるサポートがあり、してはいけない、触ってはいけない物に溢れていない環境を整えます。
 
 
 

2.人と比べるような言動を子供の前でしない

ヒトは集団で生きる生き物。集団に馴染むために小さな子でも自分はマジョリティーとは違うということを隠してしまうというのは、自然なことでもあります(大人であっても、マジョリティーの意見をたとえ間違っていると確信していても、多くの人が肯定してしまうと示す実験もあります)。それでも、身近な大人が、そうした「ヒトの性質」により拍車をかけるようなことは、しないようにします。
 
○○ちゃんがこうしてるからしよう、○○君もしてるじゃない、と他者と比べて何かをするといった言動は控えるようにします。自分が選択する道を自分のペースで進んで行くといった姿勢を励まします。
 
 
 

3.子供自身に答えややり方を探索させる

すぐに答えややり方を示すよりも、子供自身で答えに至らせることが、長い目で見ると「より親切」なことなのだと思い出します。MITやバークリー校での実験者のように、「共に探索を楽しんで」みる様子を参考に。そして、子供自身が自由に探索できる時間をたっぷりと与えるようにしたいです。
 
子供に物事を「教える」、その行為を具体的に見直していきたいです。好奇心の芽を摘み取っているのか、子供自身が知的探索へと進み続けることを励ましているのか。
 
 
 
最後に、

4.子供達の傍で、体現する

子供は周りの真似をして成長していくもの。いくつになっても、「なんでだろうね?」「それはどうしてだろう?」そんな好奇心に目を輝かせる様子を、子供達の傍で、体現していけたら、そんなことを思いつつ。
 
 
 
好奇心をフェードアウトさせる環境&育む環境、覚えておきたいです!
 
 
皆様、どうぞ今日も良い日をお送りください!
 
 
 
参考資料:
‘Why Preschool Shouldn’t Be Like School
New research shows that teaching kids more and more, at ever-younger ages, may backfire.’
By Alison Gopnik 
 
‘Encouraging curiosity steers kids towards academic success’
By Gwen Dewar, Ph.D.
http://blogs.babycenter.com/mom_stories/adults-who-encourage-curiosity-steer-kids-toward-academic-success-11042014/
http://www.slate.com/articles/double_x/doublex/2011/03/why_preschool_shouldnt_be_like_school.html
 
 
 

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