昨今こちらの教育界で重視されつつある「grit」、先日のワークショップでも、テーマの1つでした。
「grit」とは、困難にぶつかっても、失敗しても、何度倒れても、起き上がり立ち上がり進み続けていくガッツ、タフさ、やりぬく力です。
心理学者ダックワース氏によると、子供達が最大限の力を発揮するには、知性やスキルや成績よりも、「grit」こそが、大きく関わることになると言います。スペリングビー優勝者や、「エリート大学」、文武共にトップレベルの陸軍大学ウェストポイントなどの教育機関の学生を追跡調査したところ、結局最も将来的に成果を生み出す学生と言うのは、知性や学業成績などよりも、「grit」があるかどうかが大きかったとのこと。
確かに、難しいから、思うようにいかないから、1度失敗したからもう嫌~としゃがみこみ投げ出してしまっていたら、自分の持てる力を最大限発揮することは無理ですね。
「grit」というのは、生まれ持った才能ではなく、誰もが発達させていくことができると言います。
では、どうしたらこの「ど根性」とも言える、「grit」を培っていけるのでしょうか?
1.容易く手に入れさせない。
ゲストスピーカーの方が一つ強調されていたのは、「とにかく、現代っ子の多くが、何でも容易く手に入ると思い過ぎ」と言うことでした。そしてご自身の息子さんの話をして下さいました。
ある時息子さんは、300ドル程する自転車が欲しく欲しくてたまりませんでした。それでもそんな高価な自転車をすぐに買えるという状況にもなく。そこで、親戚からのクリスマスプレゼントや誕生日プレゼントを全て現金にしてもらえないかと交渉して回り、近所の雪かきを手伝い、全ての小遣いを溜め込み、一年してようやく手に入れたそうです。その自転車、どれほど大切にしたか!ドライブウェイに転がされ「しまいなさい!」と叱られることも全くなかったと言います。冬には物置小屋でなく、自分の部屋の天井からぶら下げておきたいとまで。
周りのお金持ちの子に比べ、何で僕/私には、これが手に入れられないのー、「unfair!(不公平)」と、子供達は言うもの。家の子達も、言うことあります。周りの子は皆しょっちゅうバケーションに出かけるのに、スキーリゾートで週末過ごすのに、最新式の電子機器に囲まれているのに、レストランで食事しまくりなのに、何で家は!アンフェアー!と。
「でもね、人生は時に不公平なものなのよ。何か欲しいならそのためにできることをしなさい」と伝えて下さいと。
そうして、自分で何とか工夫して手に入れようと、目標に向かってがむしゃらに進もうとする、その姿勢が、「grit」を培うのですと。
2.「いつも子供の笑顔を見ていたい」を見直す。
「いつも子供の笑顔を見ていたい」、そう思っているのなら、その子育てを少し見直したほうがいいですとも。本当にその子のためを思うのならば、悔しそうな表情も、泣きべそも、しかめっ面も、とてつもなく価値のあること。きつさ辛さを越えるからこそ、その子はかけがえのない力「grit」を手に入れるんですと。
では、「grit」を培うために、その他にもどんなことが助けになるでしょうか?
その場で配られたプリント(‘The Power of Defeat: How to Raise a Kid With Grit: Want to build a kid who has the strength, character, and drive to succeed in school—and in life? Let him fail’ By Jennifer Fink)を見てみます。
3.チャレンジを与える(Put a challenge in front of him.)
本当の達成は、境界や壁を突き抜けた時にやってきます。何か難しいことに打ち勝つ体験をさせてやってください。リスクを負うことは、貴重な学びの方法です。
ダックワース氏は、何か一つでも難しいことを続ける機会を与えてくださいと言います。ディッシプリンを学べるような何かを。「何か」ということは「努力」ほど重要ではありません。
4.やりぬく力を出させる(Promote perseverence.)
何かが上手下手といった「スキル」は、生まれつき持っていたり自然に手に入れられるものではありません。もし「生まれつき持ったもの」と信じているのなら、多くの子供達は何かうまくできないならすぐに諦めてしまうでしょう。
ダックワース氏 の家庭のルールに、「うまくできない時にやめない」というものがあるそうです。最後のシーズンやセッションまではとにかく貫徹する、その後再びサインアップしないという選択はあり。不快さや難しさは、学ぶと言うことの自然な過程、突き進み続けることを励まします。
5.押してやる(Be a nudge.)
誰も子供を無理やり押し続ける「教育ママ」にはなりたくないもの。それでも、お母さんお父さんは僕/私が最大限の力を発揮することを期待していると子供が知ったり、子供達を助ける環境を整えるのはいいことなのです。
子供が「トラックを○周も走ったの!」と嬉しそうに帰宅したとして、それでもよく聞いてみると、クラスの半分の子はその2倍は走っていて、仲良しなお友達のペースに合わせて一緒に走っての「○周走ったの!」だったとするなら、「仲良くするのはいいことだけど、誰か他の子が最大限できることと、あなたができることは違うこともあるのよ」というような話し合いしてみるといいと。
もし、その子が何らかの理由で最大限の力を発揮していないようならば、背中を押してやるということですね。
スケジュールや時間を示していくのも「押してやる」ということ。子供自ら率先して取り組む、なんてことはそうそうないもの。文句言って嫌がっても、決まった「練習の時間」を淡々と続けていくのなら、よりスムーズに取り組むよういなっていくもの。そしていつか、自分がどれほど歩いてきたかとその「利」を理解できる時がくるでしょう。
6.退屈さやフラストレーションを歓迎する(Welcome boredom and frustration.)
しょっぱなから成功するなんてことはめったにないもの。たどり着くまでにはでこぼこ道を通るもの。混乱したり、うまくいかない!とフラストレートしたり、完全に退屈に思ったりというのも、旅の道中のこと。
学ぶということはいつも簡単なものではなく、きつく辛い時というのは何も自分が馬鹿というわけではないと子供達が理解する時、「やりぬく力」が身についていきます。
逆境に向き合い、それを越えるという体験ほど、子供をパワフルに成長させるものはありません。
7.失敗させる。そして周りの大人が失敗から立ち上がる弾性を示す。(Let him fall — and model resilience.)
逆境や困難から立ち上がる瞬間を何度も何度も体験させます。失敗から起き上がる時ほど、子供達が何かを学ぶ機会はありません。
子供は周りの大人を真似して学びます。多くの親が、自分の失敗については話したくないもの。それでも。お父さんお母さんがどうやって失敗から立ち上がって進み続けたかと知る体験ほど、子供達にとってパワフルなことはありません。大人でもむちゃくちゃなことをしてしまい、それでも立ち上がり、解決できると子供達に知らせてやる。失敗を恐れるなと。
ほとんどの「成功」した人々というのは、「112回目に挑戦するかどうかだよ」と言うもの。失敗して諦めてしまうなら、どこにも辿り着きません。
「grit」を培うには?
1・容易く手に入れさせない
2.いつも子供達の笑顔を見ていたい、を見直す。
3.チャレンジを与える。
4.やりぬく力を出させる。
5.押してやる。
6.退屈さやフラストレーションを歓迎する
7.失敗させる。そして周りの大人が失敗から立ち上がる弾性を示す。
「ど根性=grit」、培ってやりたいですね。
押してやる、その底に、「愛情」を持ちつつ。
片方の手で押し、より力の入る利き手では常に抱え、そんな両手のバランスを思い出しつつ。
最後に、ゲストスピーカーの方が大好き!という野球映画「A league of their own」から引用されていた言葉を:
「難しいものなんだよ。もし難しくないなら、誰だってできる。難しいということ、それが偉大さを生み出すんだ!(It’s supposed to be hard! If it wasn’t hard, everyone would do it. The hard… is what makes it great! )」
皆様、今週も素晴らしい日々をお送りください!