心の傷

心の傷も身体の傷のように手当てする、覚えておきたい7つのヒント

昨日、段ボール二箱の本をよいしょよいしょと抱え腕がちぎれそうになりながら駐車場の車から古本屋へと二往復したんですが、カウンターにのせようとしたところ、中年男性の店員さんが腕を組みながらやってきて、「あんたね、ここ最近立て続けに売りに来てるけど、私達が買わないものを私達が処理しなきゃいけないのはフェアじゃない」と。
 
えっ、フェ、フェアじゃないって、「残りは処分するから」って言ってくださったから置いていったんですけど・・・。
 
「あ、そうだったんですか・・・」とちょっと呆れて店員さんの顔を見ながら。
 
「カウンターに差し出す前に、見せて。それで買えそうなものだけ持っていくから。だいたいね、子供の本は新品同様じゃないとだめなのよ」としかめ面で段ボール箱をのぞく店員。
 
でも結構ひどい状態の本も売ってますよね・・・、と心の中でつぶやいて。
 
ささっと10冊程抜いていく店員。
 
新しく本を購入するための店内クレディットにしてもらい、またよいしょよいしょと二往復で店を後に。
 
 
 
引越し準備でへっとへとの夕暮れ。普段ならすぐに忘れるだろう店員とのこんな出来事が、何だかアタマにこびりついています。
 
あ、そっか、私、ちょっと傷ついてるんだ。
 
先日観た心理学者Guy Winch氏のTEDを思い出し、そんなことを思いました。
 
「歯を磨いて、髪を整え、傷ついたら絆創膏を貼り、と身体のメインテナンスやケアは誰もがするのに、心についてはなぜこれほどまでに、ほったらかしにされているのか? 心も普段からケアされるものだし、心の傷も、身体の傷と同じように手当したらいい」と説くWinch氏。
 
人々の心と身体への向き合い方を対比させ、その大きな違いを指摘しての説明に、はっとさせられ、なるほどなあと。
 
 
 
今日は、そのGuy Winch氏の記事「7 ways to practice emotional first aid(感情へのファーストエイドを練習する7つの方法」を参考にまとめてみます。
 
 

人は心理的な傷に対しあまりにも無頓着

他者からの扱い、他者からの拒絶、孤独感、失敗などで心理的に傷ついたとします。それでも人は、そうした心理的な傷に対し、手当てするどころか、いつまでも反芻し(rumination)したり、自らを責めたりと、傷口をわざわざ広げるようなことをしてしまう場合が多くあると言います。
 
また気持ちが落ち込んでいるというと、「そんなこと忘れちゃいなさいよ」で終わってしまう。足が折れたといって、そんなの歩いている内に平気になっていくから忘れちゃいなさい、なんてことはあり得ないとWinch氏。
 
Winch氏は、ココロも身体と同じように、まずは傷の手当てしましょうと言います。炎症を起こしこじらせたり、後遺症に悩む前に。
 
 
 
 

心理的な傷を手当する7つの方法

とはいえ、心というのは、身体とは違い、とらえどころないもの。どうしたらいんでしょう? 氏は7つのヒントを提示しています。
 

1.まずは心理的な傷に気づく

身体の傷は、痛みを引き起こしますが、心も同じ。まずは、あ、傷を負ったなと気づくこと。もし、嫌な気持ちがいつまでも回復しないようなら、それは心理的な傷を負い、手当てする必要があるということ。「例えば寂しさは、破壊的な影響をココロに与えます。もし周りの人が孤独感にさいなまれているようなら、あなたにできることをしてあげてください」と氏。
 
 
 

2.感情的反応を導き直す

心理的な傷は、他の傷を引き起こしやすいと言います。失敗は、その人を「できること」より「できないこと」にフォーカスさせ、そのためベストを尽くせずより低いパフォーマンスへと繋がり、そしてまたより一層「できないこと」へとフォーカスさせるといったサイクルに陥いらせることがあると。こうした感情的なスパイラルを止めるためにできるのは、感情に引きずられたままの反応、つまり自分を役立たずと感じたり、期待や情熱を失ったような状態から、注意をシフトすること。
 
そして自分が「できること」を書き出し、改善しもう一度挑戦するための計画を立て、スケジュールを組む。
 
また感情に引きずられたまま周りにあたりちらしたり、怒鳴ったり、やけ食いしてみたりといった行為は、結局は傷口を広げてしまうこともあります。行為を起こす前に、一呼吸入れてみる。
 
 
 

3.自己肯定感を守る

「自己肯定感」は心理的な傷をはね返し痛みへの耐性を強める「免疫システム」のようなものと言います。確かに自己肯定感が高いならば、少々のネガティブな出来事なんてへっちゃらで突き進めますよね。氏はだからこそ、自己肯定感を守るのが大切なのだと言います。
 
例えば、氏はこんな女性の例を示します。離婚の修羅場を経、何年かして新しい男性にめぐり合い、レストランで食事をしている時に、「やっぱり君とは無理だね」と席を立ち、去る男性。「当たり前じゃない。私みたいな人間をあんな素敵な人が好きになるわけがない。私みたいにこんな、みすぼらしくて、何のとりえもなくて、つまらなくて・・・」次から次へと自らへ言葉を投げつけ、傷口を広げていく。身体で言えば、傷口をえぐりもっと深く、もっともっと切りつけているようなもの。
 
自己肯定感を低められたと気がついたら、まずするのは、自分へ「慈愛」を向けること。自分の足りなさを抱き、癒してやること。
 
本当によく分かります。どれほど傷口に自分で塩を塗りこんでいるか。立ち上がれなくなるまで叩きのめしているか。大好きなあの人には、決してかけない言葉を、どれほど自分には投げつけている。分からなくなったら、大好きなあの人が辛い気持ちでいるときに、どんな言葉をかけてあげるだろうと思い直してみるのもいいです。
 
 
 

4.ネガティブな考えにのっとられたと気づいたら、ポジティブさで中断する

新しい洞察や解決策を模索することなく、嫌な出来事を何度もマインドで再生し続けている。これが癖になると、より深い心理的な痛みを負う事になると言います。
 
こうした不健全な反芻を粉砕する最良の方法が、何か集中できるタスクに従事すること。例えば、数独、クロスワードパズル、5年生の時の同級生の名前を思い出すなどを氏はあげています。たった2分でも他のことに集中すると、ネガティブな反芻から抜けられると示す研究もあるそうです。
 
マインドフルネスで言えば、呼吸や身体感覚に集中することで、こうしたマインドの反芻を抜けるんですね。
 
 
 

5.失ったことに意味を見出す

「失う」ことは人生の一部だけれど、もし傷を治療しないのならば、前へ進むことを妨げる傷にもなり得るといいます。十分な時が過ぎても、前を向けない場合は、喪失について、新しく捉える必要があるとのこと。例えば、ワイフを失ったけれど、そのおかげで子供とより近くなったなど。
 
 
 

6.罪悪感を過度に引きずらない

罪悪感は適度ならば問題を改善するための行動を起こさせるけれど、過度であるならば、感情的知的エネルギーを無駄にし、取り組むべきことや人生を楽しむことを妨げ、毒となると。
 
最も効果的なのは、謝ることと言います。その際、どうしてそうしてしまったのかなど自分の説明にフォーカスするよりも、どのように相手に影響を与えてしまったのかと相手にフォーカスし、相手の気持ちに寄り添った形で。この人は理解していると感じることで、相手もより許し易くなり、あなたの罪悪感を溶かすことになると。
 
 
 

7.心理的な傷を癒すどんな方法が自分に合っているのかを学ぶ

自分がどう心理的な傷に向き合うのかを観察してみます。肩をすくめておしまいなのか、動揺するけれどすぐに立ち直るのか、気持ちを乱しやすく回復もゆっくりなのか、感情を押しこめてしまのか。分析し、棚の薬を選ぶかのように、どんな時にどんな心理的ファーストエイドが合っているのか、どうしたら感情的な耐性を育めるかを吟味してみるといいと。
 
特にストレスのある難しい感情的痛みを伴う出来事の後など、自身の心理を記すのを習慣にしてみるのもいいと言います。
 
 
私自身の場合は、深呼吸して、マインドフルになってみる。そして以前紹介したように(「ネガティブなことに引きずられない、『ネガティビティー・バイアス』の緩和」、狭くなったズームを引いてみて、よいことや感謝したいことを見てみる書き出してみる。また身体を動かす、などなどが助けになってます。しばらくして気持ちさっぱり、また笑顔になれます。
 
また、こうして書いて伝えるということも、かなり助けになってます。「痛い出来事」も、伝えるために、より探索する機会と捉えられるんです。どうしたら解決できるか、それらを伝えられるかと考えていると、いつの間にか痛み自体が消えてしまいます。
 
あ、傷ついたと気づいたら、どうぞ、自身に合った方法を、あれこれ試してみてください!
 
 
 
 

子育てに生かす

こうしてみてきて思うのは、子育てでも、随分ヒントになるなあと言うことです。
 
子供の心の傷に気づき、手当てしてやる。守り過ぎても免疫はつきませんが、血を流している傷を深めるようなことは避けたいです。
 
周りから低められた自己評価を、「本当にできないんだから!」「もうなんてだめなの!」と親も便乗して同じように傷口を広げないこと。まずはその子の気持ちに寄りそい「できなさ」に慈愛を向けてみます。すると案外、本人自身で立ち上がって歩き始めたりするんですよね。
 
小さな子ほど、まずは痛い気持ちに寄り添ってもらうことで、けろりと回復し、こちらの言い分を「聞く余裕」も出てきます。何かを教えたいのならば、傷が癒えた後で、話し合ってみる。「うまくいかなかったのはどうしてかな。どうしたら今度はうまくいくだろう」
 
そして、できないことばかりでなく、できることに目を向けていく。できないことを改善し、できることを伸ばすための具体的な対策、計画、スケジュールを組んでみる。
 
まずは「傷の手当て=気持ちに寄り添って」やること。そして自ら手当てする姿勢や術を身につけられるよう、サポートしていけたらなと思いますね。
 
 
 
海辺の散歩。
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それでは皆様、今日もよい日をお送り下さい!
 
 
 

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