ギフテッド教育

ギフテッド&ギフテッドと診断されていないアンダーアチーバー、その原因・特徴・支援

「ギフテッド」というと、小学校から高校ぐらいまでの学業なんて、すーいすいと難なくこなしてしまう、そんなイメージを持たれている方も多いかもしれません。実際、他の国々よりギフテッド教育に力を入れているとされる米国でも、教育関係者の多くがそう捉えています。
 
ところが、ギフテッドについての専門家によると、「ギフテッドと診断された半数近くの子が、学業不振」という報告もあります。また高校をドロップアウトする生徒の20パーセント近くが「ギフテッド」という統計もあるようです。確かにアラスカでも、こちら東海岸でも、ギフテッド教育についての集まりとなると、「アンダーアチーバー」というトピックが必ず取り上げられています。アラスカでは毎月のように、プログラムスタッフや親御さんが集まり、「ギフテッドのアンダーアチーバー」について話し合う会が催されていました。
 
もし、「診断されていないギフテッド」の子供たちを含めるのなら、「落ちこぼれのギフテッド」の数とは膨大なものになるだろうとも言われます。「ギフテッド」とカテゴライズされることもなく、周りも自分も「この子/ 自分は落ちこぼれ」といった認識で一生を過ごす人々がどれほどいるかということです。
 
 
上の子達が、キンダーや小学校時代から同じ教室で学んだクラスメートも、今では中学生や高校生になりました。そして、これまでの我が子や周りの子供たちの歩みを見る中で、私自身「ギフテッドの半数は学業不振」という状況がよく分かります。
 
また現在放課後スクールで「学業不振」とされる生徒を教えながら、日々考えさせられています。
 
ということで、今日は「アンダーアチーバーの原因、特徴、支援」について、まとめてみます!
 
 
 
 

「アンダーアチーバー」とは?

本来持てる力に比べ、学業面などでより低い成果を出している生徒のことをいいます。例えばIQが高めでありながら、学業ではAの成績がなかなか取れなかったり、普段の言動などからも十分な能力があるように見えるのに、学力テストの結果が散々だったりする場合など「アンダーアチーバー」と診断されます。
 
 
 
 
 

ギフテッドのアンダーアチーバーとギフテッドと診断されてないアンダーアチーバー

「ギフテッドのアンダーアチーバーとギフテッドと診断されていないアンダーアチーバーとの特徴はよく似ている」と報告されています。本来持てる力は異なるかもしれません、それでも、それらを何らかの理由で発揮できないという点では同じこと。そのため、ギフテッドのアンダーアチーバーへの対処法は、ギフテッドと診断されていないアンダーアチーバーにとっても有効とされています。
 
以下主に「ギフテッドのアンダーアチーバー」についての資料に基づきますが、以上の理由から、ギフテッドかどうかに関わらず、用いていけるものだと思います。
 
 
 
 
 

アンダーアチーブの原因

アンダーアチーブの原因は、以下の3つの側面からとらえられるとされています。
 
1. 学校
2. 家庭
3. 特性

 
1.学校
過度の欠席、進むペース・カリキュラム・学習スタイルのミスマッチ、友人関係、教師の理不尽な態度や期待、学習環境の乏しさ
 
2.家庭
どんな行為が望まれるかが不明確、オーガナイズされていない、情緒的サポートがない、教育方針の一貫性のなさ、教育の重要性が強調されていない、過度の自由、過度のコントロール
 
3.特性
乏しいメンタルヘルス、情緒的不安定、自己評価の低さ、完璧主義、失敗の恐れ、うつ、自分が手綱を握っている感のなさ(External locus of control:「統制の所在」が外的)、学習障害(ディスレクシア ディスグラフィア、ディスカリキュラ、ADD,ADHDなど)
 
こうした環境や特性が絡み合い、学業への「やる気」がなくなってしまう。または、「やる気」があっても発揮することができない、というアンダーアチーバーが生まれてしまうんですね。
 
 
 
 
 

アンダーアチーバーの特徴

そうして、以下のような特徴となって現れ、ますますアンダーアチーブが促進され、負のスパイラルに陥ってしまうといいます。
 
自己評価の低さ
学校や学習についてネガティブな態度
競争への不快感
持続力の欠如
目標に向けての行為の欠如
社会的孤立
スキル面や整理面での弱さ
クラスの妨害やクラスアクティビティーへの抵抗
 
 
 
 
 

私自身これまで出会った子供達から思いつくこと

私自身これまでギフテッドプログラムやその他で様々な子供達を見てきて、アンダーアチーバーについて以下のようなことが思い当たります:
 
・「感情の強烈さ」(どんな人が「感情の強烈さ」を持つ?その特徴と対処法)や不安感が強かったりで、失敗から立ち上がれなくなりダウンスパイラルに。
 
・ある程度まで何の努力もなしにトップできていたのが、学年が上がるにつれそうもいかず、それでもどう努力していいか分からず、学業への関心ややる気を失ってしまう。
 
・興味を持つと没頭してしまうことから、学校のペースに合わせて進むのが難しい。
 
・先生や学校の理不尽さが我慢できなくなる。
 
・良い成績を取り、良い大学に入るために努力するということに関心を持てない。
 
・感受性が元々強い上、思春期のホルモの変化などもあり、ムードや機嫌の浮き沈みがより極端になる。
 
 
 
 
 

アンダーアチーバーの支援

支援について強調されるのが、個々のニーズを分析し、個別に対応することの大切さです。上の「アンダーアチーバーの原因」を見ても明らかですが、ディスレクシアが大きな原因になっている子に対し、いくらファイルの整理の仕方やノートの取り方を教えたって、改善するわけではありません。まずはその子を観察し原因を突き止めていくこと、そしてその子その子に合った対応策を練っていくことが重要なんですね。
 
その際、参考になるのが、以下のようなことです:
 

・凸凹を分析する

得意なことと、苦手なことを見ていきます。
 
「感情の強烈さ」が見られたり、「完璧主義」だったりする場合、この「凹部分」が本人の中で誇大に強調され、自己評価を低めていることがあります。また、「こんなこともできるの!」と「こんなこともできないの!」の差が激しい「2E(ギフテッドでありつつ学習障害や発達障害、またはグレーゾーン)」などの場合も、周りが簡単に出来ることができない自分は「全然だめ」と思い込み、自信ややる気を失ってしまうことがあります。
 
 

・凸を伸ばし、凹へ対処するスキルを身につける

得意を励まし伸ばしていくことで、自己評価も高まり、自信がつきます。弱みを克服することばかりにとらわれるよりも、強みをどんどん励まし伸ばして、苦手部分を引き上げたり、弱みへ対処するための具体的なスキルを身につけていくことを目指します。
 
我が家でも思い当たります。長男はスペルや手書きなどが「弱み」ですが、自分がパッションを持つNPO団体の活動で周りのスタッフとのメールでのやりとりを頻繁にすることで、自ら書いたものを必ず再度チェックする、できる限りキーボードを用いるようにするといった術を身につけていきました。これは弱みの「克服」というより、自分の弱みとうまく付き合っていくための具体的方法を自覚し身につけるということです。そしてそれを可能にしたのも、机上でのスペルのドリルを何度も繰り返して苦手に取り組むより、自らが興味を持ち得意と感じる分野を通してだからこそ、可能だったのではないかと思います。
 
パッションを持つこと得意なことに突き進む中で、「苦手」へも向き合う自信が生まれ、具体的行動を起こせるようになっていきます。
 
 

どんな学習スタイルが合っているかをみる

例えば「創造的な子」はアンダーアチーバーになり易いという報告があります(参考資料1)。「なぜなら彼らの思考スタイルは学校でよしとされる収束的スタイルより劇的に多様であるため。学校は、よりオリジナルでない生徒をよしとしがちなのも、創造的な子の問題を悪化させる」というのです。
 
そして対処法としては「競争や加速を避け、彼らの才能を創造的に考え、学び、表現することに用いることができると、これらのアンダーアチーバーは改善する。創造的な生徒にとっては、創造する自由と、スキルや整理面での弱さのサポートといった解決策が必要。」といいます。
 
今、放課後スクールで「アートサイエンスクラス」を教えながら、これらの言葉がとても説得力あるリアルなものとして迫ってきます。「落ちこぼれ」とされる子の中には、はっとさせられるほど創造的な子がいたりするんですよね。じっくり考え試し表すというより、与えられたレールに乗ってぱっぱとこなすのが「よし」とされる環境では、こういった子達はやる気をどんどん失い、アンダーアチーバーにならざるを得ないのかもしれません。
 
 

・「成長型マインドセット」を育

アンダーアチーバーの改善には、これひとつで全て解決!というような「万能な方法」があるわけではありません。それでも、「成長型マインドセット」を育むことが、「万能な方法」に近いというのは確かでしょう。「自分は能力もスキルもないし落ちこぼれから抜け出ることなどありやしない」と思い込むよりも、「能力やスキルというのは成長させていけるもの」と思い込んでいた方が、断然改善へと向かうことができますよね。
 
その際、周りとではなく、昨日の自分と比べて、自分のペースでこつこつと進んで行くのを励ましていくことが大切です。周りにとってほんのわずかな「上達」に見えたとしても、その子にとっては「大きなブレークスルー」かもしれません。「持てる力や条件」は全く違うのですから、周りと同じように一直線に並べて評価したところで意味はありません。ましてや、そうした評価に、ズタズタに傷つけられているかもしれない子達なのですから。その子なりの「できるようになった!」を積み重ねてやりましょう。自分なりにこつこつと積み重ねていくなら、必ず、こんなにも遠くまで歩いてきたんだ!と振り返る日が来ます。
「マインドセット、やる気の持続」参照)
 
 

・失敗から立ち上がる力をつける

様々な面で何らかの困難を抱えている子供達ですから、目の前にスムーズな道が広がっているわけではありません。失敗を乗り越える力をつけてやりたいです。失敗から立ち上がるたびに、より力がつくのだと励ましていきます。失敗こそが成功の元なのだと。失敗から立ち上がって歩き続けた&続ける人々の伝記を読んだり出来事を話したり。親も失敗したときが、成長のチャンス!と捉えている姿を体現してやりたいです。
 
 
 
 
 

「一つのスタイルを当てはめできない子をふるい落とす」から、
「多様なスタイルで個々の能力を引き出し伸ばす」システムへの移行

以上のように、アンダーアチーバーとは、家庭だけの問題ではないですから、教師や学校や医療関係者との連携が必要となってきます。それでも、何十人もの生徒を抱える教師と一人一人の生徒に合った対応策を練っていくというのは、現実的にはかなり難しいですよね。こちら米国でも地域によって教育費が年々カットされ、教師の数も減り、以前と同じ仕事量をより少ない教師で切り盛りしているというような現状がありますから。
 
それでも、一つのスタイルを当てはめ、できない子をふるい落としていくような今のオーソドックスな学校システムでは、埋もれてしまう能力や才能が溢れ過ぎていて、「未来の世界にとっての大損失」に見えて仕方がありません。
 
何とか、「一つのスタイルを当てはめできない子をふるい落とす」から、「多様なスタイルで個々の才能を引き出し伸ばす」システムへと移行できないでしょうか。それが何か「飛びぬけた才能」である必要なんてないんです、ただ、「自分はだめだめ」だと思ってしまっている子達が、「自分はこれができるんだよなあ」と、その子なりのペースでこつこつと取り組み伸びていけるような場が様々あれば。
 
非現実的な理想論でしょうか?
 
こちら東海岸に越してきて以来、痛感しているのが、アラスカ州アンカレッジの公立学校のシステムがどれほど恵まれていたかということです。公立学校に、フリースクール、様々な言語のイマージョンプログラム(ロシア語、日本語、ドイツ語、ネイティブアラスカン語などで半日授業)、シュタイナー教育、モンテッソーリ教育、ホームベースプログラム(オンライン授業や大学の授業やNPO活動など好きなように組み立てて個々にあったカリキュラムを組み立てられる。費)、権威や序列を重んじる伝統的な教育、ギフテッド教育など、ホント多様な選択肢があったんです。
 
こちらに越してきたらば、オーソドックスな公立学校か、でなかったら私立かの選択・・・。
 
でもアラスカという地に、現実的に既に成り立っているんですから、不可能なわけじゃないんですよね。
 
日本でも、オンライン高校(N高等学校)という試みがいよいよ始まりますね!
 
「多様なスタイルで個々の才能を引き出し伸ばす」方向へと向かう流れを応援しつつ、身近なところからできることをしていきたい、そう思っています。
 
 
 
それでは皆様、温もり溢れる日々を!
 
 
写真は、近所の海辺散歩!
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参考資料:
1.‘Meeting the needs of gifted underachievers – individually!’ by Smutney, J.
http://www.davidsongifted.org/db/Articles_id_10442.aspx
 
2.‘Gifted Underachievement: Root Causes and Reversal Strategies’ by Alexander R. Pagnani
http://www.giftedstudy.org/newsletter/pdf/underachievement_handbook.pdf
 
3.‘The underachievement of gifted students: What do we know and where do we go?’ by Reis, S. & McCoach, D.
http://www.davidsongifted.org/db/Articles_id_10094.aspx
 
 
 

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