学習方法の違い

ごそごそ動いた方が学習効果アップ!ADHD・ギフテッド・舞踏家タイプの子

今担当しているクラスでも気が付くのですが、子供達が集まると、一定の割合で「じっとしていない子」がいます。机に向かっても、ごそごそ、少し目を離すと、踊り始めていたり(日本の教室では「踊る?」となるかもしれませんが、実際こちらの教室だとあるんですよね。これがまた惚れ惚れするリズム感だったりします)。
 
実は、我が家にも「ごそごそタイプ」がいます。去年も先生に、「息子さん、テスト中何だか動きたくてしょうがない様子だったので、前の席から後ろの教室の隅っこに移動させ、立ち上がったり外を見たり壁に持たれたりとできるようにしたんですよ。より集中できたようでした」と報告していただいたことがあります。
 
本人としては、「じっとしてなきゃいけないときは全然できるから」と「自信」があるようで、まあもう高校生ですし、見ていてもそうなのかなとは思うのですが、寝不足だったり、運動をしばらくしてないと、「ごそごそ度」が増すとも感じてます。
 
今日は、こうした「ごそごそ(fidgeting)タイプ」について、まとめてみます!
 
 
 
 
 

ADHDの子はごそごそした方が学習効果あり

まずは、去年2015年に発表された「二つの研究」の紹介です。
 
1. セントラルフロリダ大学研究チームによると、 8歳から12歳まで52人(ADHD29人、定型発達23人)を対象に、文字や数字を操りワーキングメモリーを遂行するタスク与えたところ、ADHDと診断を受けている子は、立ったり、スピンしたり、ごそごそしたりとより動いた方が、より高い成果をあげたとのこと。
(http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150417190003)
 
2.  カリフォルニア大学研究チームによると、10歳から17歳の44人(ADHD26人、定型発達18人)を対象にした実験では、コンピューターテストを受けている間、動きの強烈さや頻度を図ったところ、ADHDの診断を受けている子は、インテンシブな動きをした方が、著しく良い成果をあげたとのこと。
(http://www.sciencedaily.com/releases/2015/06/150611082116.htm )
 
カリフォルニア大学の研究を率いたArthur Hartanto氏は、「先生は、子供が動くのを罰するのではなく、残りのクラスを邪魔しない限り、ごそごそさせてやるべきです。叱るよりも、ADHDの子が周りを邪魔せず動けるアクティビティーを探してやってください。それが、その子達が考えるのを助けることになるのですから」と。
 
 
 
既に教育現場で、こうした「ごそごそすることで学習効果アップ」の試みを取り入れている学校もあるようです。例えば、このウォールストリートジャーナルの記事では、全校生徒の60パーセントをADHDの子が占めるという米国フィラデルフィアの学校(Quaker School at Horsham)が紹介されています。この学校では、授業中、立ったり動いたりが許され、手でくにょくにょと握るグッズ(記事に写真あり)などを、生徒が好きなときにいつでも用いられるよう教室に常備してあるといいます。ガムを噛むのも効果があるそうです。
 
また、ADHDの子をサポートする、ごそごそくるくる回ることのできる椅子(Howda chairsやHokki Stool)や、
こうして椅子に取り付け足をゆらゆらできるバンド(Bouncy Bands)なども、市場に出ているようです。
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(写真:The Bender Bunchより)
 
ミシシッピ医科大学小児精神科医Dustin Sarver氏によると、「通常の脳に比べADHDの子にはより不活性な脳の箇所があり、動くことによってその箇所が活性化され学習能力が上がる」のだそうです。
 
 
 
ADHDとされる子は、昨今、米国で一年に3%増加しているとされ、最も新しい調査によると、全体の11パーセントを占めるとも言われます。
 
「2」の研究に携わったカリフォルニア大学教授Julie Schweitzer氏によると、「ごそごそと動くことを教室に取り入れることで、ADHDの投薬量を下げられるか、または軽いADHDの子が薬を飲まないですむかについては、引き続き研究が必要。それでも、もし投薬を避けたいと思っているのならば、他の行動療法などと共に、取り入れてみるのがいいでしょう」とのこと。
 
 
ADHD傾向のある子には、「じっとして集中しなさい!」と叱るのではなく、「ごそごそ」させた方が、学習の助けになるということ、覚えておきたいですね。
 
 
 
 
 

アラスカ州の「ギフテッドプログラム」での試み

アラスカ州のプログラムでも、椅子の変わりに「ボール」に座る、という選択肢が与えられていました。
 
授業中こうしたボールにゆらゆら揺れたりぴょんぴょん飛んだりしながら机に向かうんです。
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ほとんどの子が、自らボールを選んで座ってました。
 
また先生によっては、授業中いつでもガムを噛んでいいクラスもあり、テスト前には生徒全員にガムを配る先生もいました。
 
他にも教室の後ろに、こんな半球状のトランポリンがおいてあり、
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落ち着かない生徒を、先生が定期的に「飛んできなさい」と後ろに送るクラスもあったんです。
 
プログラムの先生方によると、「頭が活発に動いているのだから、身体も少し動いた方が、より集中できるんです」とのこと。他州の教育会議で学ばれてきたそうです。
 
「ボールクラス」を体験した我が家の子供達に聞いてみても、「ちょっと動いた方が集中できる」とのこと。
 
 
 
 
 

「動きながら考える」と舞踏家ジリアン・リン氏

「キャッツ」や「オペラ座の怪人」の振付師やダンサーとして活躍し、2014年には87歳にして「大英帝国勲章」を受章したジリアン・リン氏。
 
リン氏が小学生だった頃、「学習障害」として、病院の診断を受けるよう学校から通知を受けたそうです。ごそごそごそごそ、とにかくじっとしていなかったといいます。
 
医師は、しばらくリン氏を診察したあと、「お母さんと話してくるからね」とリン氏に告げ、ラジオをつけ、診察室から出て行きます。そして、窓からリン氏の様子をお母さんと共に眺めつつ、こう言いました。
 
「見てください。この子は、ダンサーなんですよ」
 
ラジオのリズムに合わせ、身体を動かすリン氏。
 
「ダンススタジオに、連れて行ってあげてください」
 
1930年代の英国に、こんな医師がいたんですね!
今なら、「投薬」の相談になるのでしょうか。
 
それ以来リン氏は、ロイヤルバレー団に入り、ソリストをつとめ、ダンス界を駆け上っていったのでした。
 
リン氏曰く、
「ダンススクールには私みたいな子ばかりいたのよ。みんなじっとしてられないの。考えるのにまず身体を使わなくちゃいけないのよ
 
「学校教育は創造性を殺してしまっている」ケン・ロビンソン氏テッドスピーチより)
 
 
 
 
 

多様な学習環境を作り出していくということ

ごそごそした方が、学習効果の上がる子がいる。確かにクラスでも、ごそごそしがちな子には、「じっと座りなさい!」というより、「ごみ捨ててきてね」「パレット洗ってきてね」「この紙みんなに配ってきて」と動いてもらう方が、落ち着いていくと感じています。
 
ちなみに、「定型発達の脳」を持つ子には、動くことで学習効果が下がる子もいるとのこと。
 
脳の特性も多様なんですね。
 
立ったり座ったり、ボールにぴょんぴょんゆらゆら、ガムをくちゃくちゃしながら授業とは、一昔前では考えられない光景。そして今でもマジョリティーの学校では「とんでもない」という雰囲気なのだと思います。こちら東海岸の公立学校も、まさしくそういった様子。
 
こうした「多様な脳」に合った学習方法の研究がすすみ、公にされるにつれ、「脳の特性によって選べる学習環境」が徐々に実現していくことを願っています!
 
ちなみにアラスカの教室では、元々はADHDと診断を受けた生徒の親御さんと担任の先生が話し合った末、「教室の後ろでミニトランポリン」の試みが始められたんです。教育システムや学校全体を変えていくのが難しい場合、こうして個々の先生と親とが力を合わせ、生徒ひとりひとりに合った学習環境を作り出していけるといいですね。
 
 
 
それでは皆様、春の陽光をお楽しみください!
 
 
 

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