ディスレクシア

読めば読むほど読める脳になる、ディスレクシアの改善

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学習障害の最も大きな原因とされるディスクレシア(読字障害)。人口の約十パーセントに見られるとも言われます(もっと多いという説も)。
 

五月十五日付けの「ニューヨークタイムズ」に、最近の研究についての記事が載っていました。ディスクレシアとは、一生変わることのない障害ではなく、「体験」によってその症状も随分と軽くなる、果ては正常な脳と似たようにもなり得るという、とても希望の持てる内容でした。

 

以下、まとめてみます。

 
 

長い間、「視覚がうまく機能しない障害」とされてきたディスクレシア。だから“b”と“d”が区別できなかったり、単語の初めの文字と終わりの文字がひっくり返ったり、「行」を飛ばしてしまったりするのだと。それでも最近の研究では、ディスレクシアとは、目ではなく、言葉を処理する過程、「個々の文字の『音』を『単語』として集める過程」に問題があるのだとされています。

 

ヒトにとって、「読字・読書」というのは、「話し聞く」のとは違い、「文化的に課されたスキル(culturally imposed skill)」と言います。話したり聞いたりは、自然に容易く身に着けられるものの、読み書きを身に着けるには、脳にとってとてつもない変化が必要とのこと。そして、読めば読むほど、そんな脳の変化も大きくなると。

 

確かにそうですよね、狼に育てられたといったような極端な例でなければ、普通に人の間、コミュニティーで暮らしていれば、話して聞くことはできるようになる。それでも、読み書きはどんな文化であっても特別な訓練が必要です。そして練習すればするほど熟達していく。

 

ディスレクシアの子というのは、「読み」を身につけるこの最初の段階での脳の変化が起こりにくくなっているのだそうです。神経学的に、「音」を正確に把握する箇所は正常に機能しているものの、それらの「音」を「単語」に形作る段階で、聴覚と脳の言語中枢がうまく繋がらないのだと。そのためディスレクシアを「切断症候群(disconnection syndrome)」と呼ぶ研究者もいるそうです。

 
 
 

ディスレクシアというのは遺伝子に組み込まれていて、一生治ることはないともされてきました。それでも、最近の研究では、ディスレクシアとはかつて科学者が信じたように、遺伝子に大きな原因があるといった本質的な脳の違いではなく、「体験の産物」ということが分かってきたようです。

 

つまり、正常の脳は、「読む体験」を繰り返すことでどんどん「読める脳」に変化していく。

 

ところが、ディスレクシアの脳は、最初の段階で読むことが難しくなかなか読めない→難しいので読みたくない→読まないから尚更読むために必要な脳の変化が起こりにくい→脳に変化が起こらないから読めない→難しいので読みたくない→脳の変化がなかなか起こらない→読めるようにならないから億劫で読みたくない→なかなか読めるようにならない→と繰り返し、「読む体験」が圧倒的に少なくなってしまうのです。

 

ディスレクシアの子に、困難ながらも「読む体験」をいかに積み重ねさせるか、それが大きな鍵なのですね。

 

そして読むのが難しくて億劫なところ、何とかかんとかして読むよう努力を続ける、すると、脳に変化が起こり始め、結局は正常な脳と同じような脳になっていくのだそうです!

 

この初めの段階での「読む努力」は、集中的な「正字法(orthographic)」「 音韻学的(phonological)」なトレーニングもとても効果的のようです。

 
 
 
 

この記事を読み、子供時代「重度のディスレクシア」と診断され、高校生で初めて本を読み、成人してからの努力で今では書類に囲まれた暮らしをしている夫の歩み、とても納得しました。

 

彼が「人並み以上の努力が鍵」と言っていたこと、まさしく、なぜか生まれ持った繋がりにくい回路を何度も何度もなぞることで、繋げる作業だったといえるのかもしれません。

 
 
 

遺伝する確率が高く「家系の特徴」ともされるディスレクシア、診断は受けていないのですが、昨年、あれ?という穴が見られ(分かるはずの問題が解けていない。どうも設問が読めていないよう等)、先生を含めプログラムの担当者の方たちと話し合いが持たれた次女十歳。家庭での補足学習と共にもう少し様子を見守りましょうということだったのですが、今では、特に補足学習することなくとも、これといった問題なく過ごしています。

 

「読めば読むほど、正常の脳に近くなる」というのも次女を見ているとかなり頷けます。四年生になる頃まで、学校ではかなり読まされていたものの、家庭では自分から手を伸ばすことのなかった本。「パーシージャクソン」シリーズ(初めて自ら読んだまとまった量のシリーズもの)にはまり、読み続けている内に、次から次へと他の本に手を伸ばし始め。

 

また周りのお友達のほとんどが「本の虫」ということも大きいように思います。常に何かしらの本に夢中な仲良しな子もおり(この中の二人の子の家にはテレビがない)、話題も本についてが多い。この夏休みはその仲良しグループ五人の中の一人のお母さんの呼びかけで「読書クラブ」ができ、課題図書を決め五人の子&ママで定期的に会うことに(どうも親も読んで一緒に話すということのようです)。大好きなお友達と一緒ということで次女も大張り切り。早速課題図書になっている本を片っ端から読んでいます。
 
 

小さな頃から「本の虫」で読解などは得意な方だったものの、スペリングや手書きが苦手な長男十四歳。ディスレクシアの特徴ともされる、「視覚的・空間的・概念的・直感的脳(visual, spatial, conceptual, and intuitive brain)」(‘Power of Dyslexic Thinking’  by Robert Langston  psychology today)がかなり見られますが、診断されるほどの穴はなく、今後自分の「弱み」を自覚して、手書きの練習をしつつ、書いたものは必ず見直す、スペルチェックを必ず用いるなどの対処をしていくよう心がけると話し合ってます。

 

 
 

次女と長男の例は、診断を受けていないのでディスレクシアの例としてここで取り挙げるのは適切ではないかもしれませんが、グレー的な症状が見られ、この記事と照らし合わせかなり納得しました。

 
 
 

 

「目の前のことごとくできてない結果に関わらず、可能性を信じサポートし続けてくれる存在が大きい」そう夫が言っていたのですが、例え周りがすっとできてしまうことでも、四苦八苦となかなかできなかったり、それでも周りと比べず、励まし、自分のペースでこつこつと進むことをサポートし続けること、ディスレクシアの子が「読む体験」を積み重ねるには、そんな環境が大切なのですね
 

 

 
 

また「読めば読むほど読める脳」になる、これはディスレクシアに限ったことではないようですね。普通の脳でも、読むほどに、より熟達した読める脳になっていく。子供達が自分から本に手を伸ばすような、ついつい読みふけってしまうような環境を整えていけたら、そう思ってます!
 
 

 

 学校や市の図書館には様々な「読書促進プログラム」もあります。

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・学校では毎日読書した時間を記録し、特定の時間に達すると、シャツやトルフィーがもらえます。毎月提出することになっています。(我が家はよく忘れますが)

 

・毎年課題図書について内容や登場人物や作者などどれほど覚えているかを競う「バトル・オブ・ザ・ブック」という競技会が米国全国規模であります。その課題図書リストが夏休み前に発表されます。図書館には毎年それらの本が表紙をラミネートされて何冊か揃えられています。早速いくつか借りてきました。

 

 ・夏休み中、図書館が催す「Summer Reading Celebration」。読書二十分ごとに一つの升目を埋め、五百分、千分溜まると賞品がもらえるというもの。上の三人は無関心ですが、七歳三女と四歳次男は燃えてます。

 

 ・図書館では夏の読書リストなども公表されます。

 

 報酬のために読むというわけではありませんが、こういうものがモーティベーションやきっかけとなり、読んでいる内にますます「読める脳」になり、読書にはまるということもありますね。

 
 

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写真 by Nicki Dugan from San Francisco, USA Wikipedia Commonsより

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