生と死

関係者が突然亡くなった時、周りの大人ができること

OLYMPUS DIGITAL CAMERA昨日月曜日の午前のこと。中学校にいる長女から、夫と私と長男のそれぞれの携帯へ、テキストメッセージが送られてきました。
 
「スペイン語のP先生が亡くなったの」
 
いつ?どうやって?とテキストを返すも、よく分からないよう。隣で長男がネットで調べ、似たような名前の学区の非常勤の先生が亡くなったというニュースを見つけ、人違いでしょう、と。
 
金曜日にP先生のスペイン語の授業を受けて、週末もP先生から出された宿題をしていた長女。
 
去年は長男も1年お世話になり、私も2度ほどだけですが少しだけお話したことがありました。
 
まさか・・・、ととても信じられません。
 
 
 
しばらくして、校長から生徒の全家庭に向け電話。録音されたメッセージに、P先生が金曜日の夜亡くなったこと。学校には心理学者や精神科医が待機していますから、必要だと感じたら生徒にいつでもカウンセリングを受けさせてください。具体的に親として何ができるかなど記した手紙を生徒が今日持ち帰りますから、読んでくださいと。
 
 
金曜日の夜中、心臓発作を起こし教室で亡くなっているのを、掃除担当の方が見つけられたと言います。
 
60代のP先生、40年間同じ中学校でスペイン語とフランス語を教えられてきて。周りの親御さんの中にも、かつてP先生の生徒だったという方に会うことがあります。校長先生も生徒だった1人。
 
人生の半分以上を過ごした教室で、ひっそりと亡くなられたんですね。
 
 
 
反抗期まっさかりの中学生。訛りのある英語、老女性ということもあってか、失礼な態度をとる生徒も少なくなかったと聞いています。
「もっと親切にしておけばよかった」
そう廊下や教室ですすり泣く子が多くいたそう。
 
先生方の中には、新しく赴任されたとき、学校に馴染めるようにと最も心配りしてくださったんですと、泣き崩れていた方もいたと。
 
またP先生の死を前に、自らの過去の体験が次々と思い出され、1日中泣きじゃくる子もいたと言います。
 
学校全体が、悲しみに包まれた週明けでした。
 
 
 
 
長女が持ち帰った、心理学者と校長による手紙には、こうありました。
 
「子供達は皆悲しみ方が異なります。それでも、感情というのは行為に表れます。攻撃的になったり、内にこもってしまったり、心配や不安が溢れるということもよくあります。オープンに悲しむ子もいれば、イライラしたり、子供っぽく振舞ったりといった行為を通して、ストレスを示す子もいます。睡眠に困難を感じたり、親のアテンションをいつもより必要とすることもあるでしょう。身体的な痛みを訴える子もいるかもしれません。集中力に欠けたり、するべきことができなかったり、取り組む課題の質が落ちるということも、悲しみを抱える子供達に、よく見られることです。どうぞ子供が一見落ち着いて対処しているように見えるからと言って、その子は大丈夫と、推測しないで下さい」
 
そして、「子供が死に対処するのを助けるために親ができること」として:
 
・子供の質問に答えてください。安全であることを再確認させてあげてください。
 
・死に関してはっきりと明確な情報を子供に与えてやってください。
 
・亡くなった人は決して戻ってくることはないと知る必要があります。
 
・悲しむことから遠ざけ守らないで下さい。子供に喪失感や痛みを共有させてやってください。
 
・言葉を用いて、または言葉を用いず、喪失感や痛みを共有するためにあなたがここにいるのだと分からせてやってください。言葉を用いないサポートは、抱きかかえてやったり、心地良いスキンシップなどがあります。
 
・日頃のリズム、ルーティーンをできるだけそのままするようにしてください。いつものように学校に来て友達と一緒にいるのも大きな助けになります。
 
・もし特別なサポートが必要と感じたら、カウンセラーや、看護師、学校の心理学者、校長まで知らせて下さい。
 
 
質問には明確な情報を与え、感情を抑えつけず、感情に寄り添い共有し、日常のリズムを保つようにすることが大切なんですね。
 
 
 
学校から戻った長女13歳、
 
「全然、実感わかないんだよね・・・」と。
 
週末もP先生の宿題をして、提出しないと!と朝出かけ、やっぱりそれはあまりにも突然で。
 
 
長男15歳は、学校側の一連の対応に、
 
米国はこういうことに過剰反応し過ぎるんだよ。世界見回してみてよ、もっとひどい状況で死と隣り合わせになってる子供達なんて溢れるほどいる。
 
だいたい中学生ぐらいの時って、一番『自分が無い』時期なんだよね。周りの子が泣いてるから泣く。カウンセリングが待機していたりする雰囲気に、自分も患者にならないと、みたいな。一体、心の奥底からP先生の死を悲しむという子が、どれくらいいるんだろう」と。
 
 
「でも、そんな恵まれた米国だけど、死を前にバランスを崩して苦しむ子が今目の前にいたら、対処して癒していかないとね。それと、米国でも大変な環境に育ち、トラウマを抱えていて、こういった出来事が引き金になって苦しさが溢れるという子もいる」と言葉をかけて。
 
 
 
 
昨夜は寝る前、家族皆で、P先生の思い出を話し合い、お祈りしました。
 
40年間子供達の成長を見守り続けたP先生、
地球の北の果ての町で、異文化の架け橋としてその一生の大半を捧げられたP先生、
縁ありこうして少しの間でもお世話になれたこと、
本当にありがとうございました。
 
合掌。
 
 
 

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