多様性

子供の能力を狭める「ステレオタイプの脅威」、跳ね返す力をつけよう!

011子供達に向き合う中で、気をつけたいことの1つ。
「ステレオタイプの脅威(Stereotype Threat)」についてまとめてみました。
 
 

「ステレオタイプの脅威(Stereotype Threat)」とは?

自分が属するグループのネガティブなステレオタイプ(個々人の持つ固定観念の集合)を、自分自身もそうに違いないと思い込んでしまうリスクを、「ステレオタイプの脅威」と言います。
 
1995年に発表された心理学者Claude Steele氏とJoshua Aronson氏 による研究以来、「ステレオタイプの脅威」について、300以上の研究結果が報告されています。
 
Claude Steele氏とJoshua Aronson氏は、大学生に対してのいくつかの実験を通し、テストの前に人種を強調された場合とされなかった場合では、テスト結果に違いが出たと報告しています。人種が強調された場合、アフリカン・アメリカンのテスト結果は白人より低くなり、強調されなかった場合は、白人と同じか、アフリカンアメリカンの方が白人より高くなったと言います。
 
「アフリカン・アメリカンは学業面で白人より劣っている」という「ステレオタイプ」が、学生の学業パフォーマンスに影響するためと説明されています。
 
こうした「ステレオタイプの脅威」は、その場のテストの点に表れるだけではありません。どうせ努力してもだめだと学業面に時間をかけることをやめてしまったり、学業の関わるプロフェッショナルに進むことを諦めてしまい、結果、アフリカンアメリカンは白人より学業面が苦手といった「ステレオタイプ」が、ますます繰り返し強められることになってしまうのです。
 
 
他にも様々な「ステレオタイプの脅威」が報告されています:
 
・男性は女性より数学が得意
テストの前に性別を記す欄があるかどうかで、男女間のテスト結果に違いが出ると言います。
 
・女性は男性より交渉が苦手
 
・女性は男性より運転が苦手
 
・白人の男性はアジア人より数学が苦手
 
・白人はアフリカンアメリカンよりスポーツ能力が劣る
 
・経済的に恵まれない家庭は学業面で成功できない
 
・米国の小学生の男子は女子に劣る
 
・老人は記憶力が劣っている
 
・生まれつきの能力を持った子は努力が必要ではない
「ギフテッド」とされる子供が、努力することは劣っていると思ってしまい、努力しなくなってしまったり。
 
などなど。
 
 
これらの「ステレオタイプ」によって、「ああ、自分は~だから、~に違いない」と思い込んでしまい、それがテスト結果や成績やパフォーマンスに表れてしまう、というわけです。
 
青年や大人でも左右されるわけですから、子供が周りの大人などから言われ続けたりすれば、そりゃ影響も大きいですよね。
 
そして、ステレオタイプに影響を受ける → 力を発揮できない → ステレオタイプがより強固なものに、という流れが作り続けられてしまう。
 
 
 
こうした人種や性別や年齢など、より「属性」のはっきりしたものとは、少し異なりますが、
 
大人が子供に当てはめる「ステレオタイプ」にも、気をつけていきたいなと思ったりします。
 
この子はこういう子だから、どうせ無理でしょ。
 この子は~キャラだから、そんなことできるわけない。
 
そんな子供に対する「ステレオタイプ」が、大人の頭の中でぐるぐる繰り返されていたり、子供の前で口に出してしまったり。そういうことが、「ああ、僕/私は~だから、~に違いない」そう子供のパフォーマンスに影響を与えてしまうことって結構あるように思います。
 
 
 
では、どうしたらいいか?
 

「ステレオタイプの脅威」を跳ね返すためにできること

子供に関わる大人として気をつけていけることが、ひとまず2つあります。
 
1.周りの大人が安易な「ステレオタイプ」を、子供の前で口にしない。
 
上に挙げた研究で用いられたステレオタイプなど見て、私自身、でもそうだよなあ、とがちがちの固定観念に影響されている自分に気づいたりもします。女性のドライブとか数学とか、個人的に実感してしまうし。といって、それでも確かに、周りを見回してもそうじゃない女の子も大勢いるわけなんですよね。その子達の可能性を、固定観念突き当てて、狭めることは避けていきたい。
 
今までのステレオタイプの「例外」をどんどん生み出して、ステレオタイプを溶かしていきたいですね。そうすれば、様々な分野にも新しい風が吹き込み、活性化して豊かで新しい創造も生まれるんじゃないでしょうか。
 
あと、自分の頭の中で繰り返している、子供に対する「ステレオタイプ」にも注意すること。その子に押し当てて、その子の可能性を狭めていないか、気をつけていきたいです!
 
 
2.子ども自身に「ステレオタイプの脅威」を跳ね返す力をつける
 
いくつかの研究で効果があるとされているのが、
 
「能力というのは、生まれつきそのままだったり、変わらず固定したものではなく、努力で伸ばしていけるもの」
 
という考え方を身につけさせることです。
 
知的能力については、脳というのはいかに使われることで成長していくかという「脳の仕組み」について、年齢にあわせて詳しく説明することも有効と報告されています。そうした脳の性質を理解することで、より努力したり難しい課題にチャレンジするようになり、結果テストの結果やパフォーマンスも良くなっていったと。
 
 
賢さだって、色々な能力だって、努力を続けることで、どんどん鍛えて成長させていくことが出来るんだよ、毎日ダンベル持ち上げていれば少しずつ重いものが持てるようになる筋力みたいに。
 
どんな家に生まれようが、どんな人種であろうが、どんなキャラだろうが、レッテルを貼られようが、「ステレオタイプ」に固定される必要なんて無い。そんなものにはお構いなしで、自分の持てるものをどんどん磨いて、自分のペースで、成長していこうね、そう励ましていくこと。
 
心に留めていきます!
 
 
 
それでは皆様、素晴らしい週末をお過ごし下さい!
 
 
 
参考資料:
“ReducingStereotypeThreat. org”
http://www.reducingstereotypethreat.org/definition.html
 
“Stereotype threat: How your child’s beliefs about people can hinder his performance in school…and life” by Gwen Dewar, Ph.D http://www.parentingscience.com/stereotype-threat.html
 
 
 

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