我が家でも子供達、毎日のように宿題があります。キンダーはたまにプロジェクト程度ですが、2年生はスペルや算数や文章読解、5年生は本のチャプターごとの要約や算数、中学生は毎日様々な科目の課題が出され、遅くまで取っ組み合う日もちゅこちょこ。
こちら米国で宿題の目安になっているのが、「学年×10分方式」です。
1年生なら10分、4年生なら40分、7年生(中学1年)ならば70分、12年生(高校3年)ならば120分となります。
これは、心理学者ハリス・クーパーー(Harris Cooper)氏の研究に基づいているそうで、宿題というのは学校で取り組む内容をよりしっかり身に着ける助けになるけれど、毎日宿題に溺れるような量であっても逆効果、と報告されているためと言います。
小学校の時分は学校でも、もし、~分以上かかるようでしたら言ってください、調整しますからと、先生に言われたりしますね。
といって学校や先生の方針によっても違い、子供達が通っているプログラムは学年が上になるほど課題量がかなり多くなるとも言われ、中学生以降は「学年×10分方式」どころじゃなかったりする日も多々あります。それでも日本の塾通いなどの子に比べると、こちらは勉強面はのんびりと言えるのでしょうね。その分、スポーツや音楽やボランティアなど課外活動を活発にしている子が多いです。
さて、タイトルにある「宿題は手伝わない方がいい?!」ですが、過去、こんな研究が発表され、話題を呼んだことがあります。
これまで30年近く親の関わり方と子供のパフォーマンスについて研究を続けてきた社会学者KEITH ROBINSON氏とANGEL L. HARRIS氏の調査研究によると、
小学生時代に、親がつきっきりで宿題を手伝うほど、年齢が上になるにつれ、その子の学業面の成果やテストのスコアが低くなっていった
というのです。
これは、課題問題を前にする度、子供達が手伝ってもらうことに慣れてしまうため、自らの頭で考えたり、工夫したりという力が培われないためと説明されています。
宿題への取り組みにも、子育てで覚えておきたい大切なコンセプト、「足場作り(Scaffolding)」が重要なんですね。
「足場作り(Scaffolding)」の大切さ
「足場作り(Scaffolding)」とは、建築現場などで見られる「足場」をイメージすると分かり易いです。建築物が完成すれば、全て取り払われます。
子供に関わる大人の大切な役割とは、こうしていずれは必要でなくなる「仮の足場」を作ってやること。子供の代わりに建築物を作ってやるのではなく、子供自身が建築物を完成するための足場を用意してやることと言われています。
「足場作り(Scaffolding)」とは、ロシアの社会文化心理学者ヴィゴツキー氏の言葉ですが、発達心理学の祖ともされるピアジェ氏が子ども自身と周りの物に着目して発達について明らかにしていったのに対し、ヴィゴツキー氏は、親など周りの人々との関係を通して、発達というものを研究しました。そして親の「足場作り」が、子供の成長にとっていかに大切かを描き出していったのです。
「発達」というのは、大きくなるほど、必ずしも「新しいことができる」ということを意味するわけではないですよね。手伝ってもらうことなく、どれだけできるようになっているか、ということも「発達」。
KEITH ROBINSON氏とANGEL L. HARRIS氏の宿題の研究は、こうした「足場」を調整し、徐々に手伝うことを加減していく「足場作り」というサポートのあり方が、まさしく「宿題」についても当てはまる、ということを表していると言われています。
といって、自分ではまだ全く解決できない課題を前に、全部1人でしなさいと突き放してしまっても、問題を解決する力が身につくわけではありません。それはまだ子供達が到底手の届かない遥か高くまで、足場なしで飛びなさい!と言うようなもの。
では、具体的にどうやって宿題を手伝っていったらいいのでしょう。
宿題のサポート工夫あれこれ
これらの研究を基に、心理学者のピーター・ビシュトン氏は、次のような最も有効で具体的な宿題の手伝い方、というものを提案しています。
1. 子供に呼ばれたら手伝う
隣でつきっきりで座って逐次口出すのではなく、台所仕事など何かに従事しながら、少し離れたところにいる。そして、「教えて!」「分かんなーい」などと子供が呼ぶようだったら、赴いて手伝う。それくらいがちょうどいいと。
2. 答えを教えない
「これはこうでしょ」と答えを真っ先に言ってしまうのではなく、その子が自分の頭で考えられるような言葉がけをしてみます。「ここ、もう一度考えてみたらどうかな?」「これはどういうことだと思う?」「そこからもう一度やり直してみるといいよ」「ここのところママに説明してみて」など。
まずは自分で取っ組み合ってみる → ああどうしても分かんない → 少しヒントをもらう → また取っ組み合ってみる → 分かった! というような流れだと、その課題が、よりその子の身につきますね。
3. 宿題の大切さを話し合う
学校で習ったことなど、宿題を通して、復習したり、応用したり、予習してみたりすることで、より身につくのよ。など、なぜ宿題をするのかを改めて整理。
4. 宿題のための決まった時間枠を設ける。
「学校から帰ってから○時間は、宿題の時間」と決めてしまうことで、学習習慣が身につくと言います。宿題が無い日は、その時間枠は本を読んだり百科事典をみてみたりと、学習時間に用いるようにするといいと。
5. 子供自身に計画を立てさせる。
上のような枠内で、では何をどれくらいするかの計画を立てさせます。「こうしなさい」より、共に計画を立てることで、自ら取り組む姿勢が身につきますね。
我が家では、「就寝時間までに終わらせる」というゆるい枠組があるのみで、帰りの車の中で、「今日は宿題どれくらいある?」「いつする?」と聞き、あとは本人の自主性にまかせてます。寝る前寸前にしているようだったら、「どう? 早目に終わらせておくと、後でもっとゆったり色々なことできると思わない?」などと翌日言葉がけしてみる。本人も「確かに」と思うようで、自ら調整しているようです。
6. 静かで整理された宿題に集中しやすい環境を整える。
子供がすっと課題に入り込めるような環境づくり。
これは家ではかなりチャレンジング。上の子達は自分の部屋でドアを閉めて。下の子達は、周りに何が起こっていようと取り組むといった様子です。
7. 文脈を変化させ、学習内容をより深く定着させ応用力を身につける
取り組み中に休憩時間を挟むのは、リフレッシュの意味もありますが、一旦文脈を変化させることで、学んだことがより定着するといった効果もあると言われています。同じような効果は、場所を変えたりしても得られると。また、時間が詰まって休憩や移動の時間が取れない場合は、取り組む教科を変えてみることでも、より学習内容が身につくとも言います。
同じ文脈で問題を解いてばかりだと、他の文脈に当てはめるとたちまち訳が分からなくなってしまう、そんな「特定の文脈学習(Context-Specific Learning)」の問題もあると言います。
宿題など教室を離れた家庭での取り組みは、学んだ内容を様々な文脈で試すことで、学習内容をより深く定着させ応用力をつける機会でもあるんですね。
また机に向かって問題を解いてばかりならば、机に向かって解く問題には強くなるけれど、実生活へ応用する力が身につくわけではないですね。机上で学んだ足し算を、買い物や料理の際にも当てはめてみるなど、様々な場面に生かしてみる。そんなサポートができたら、いいですね。
我が家も毎晩習い事の送り迎えなどで何とか食事だけさせていっぱいいっぱい、そこまでなかなか行き届きませんが、なるべくできる範囲で、心がけていきたいです。車の中で、学校で学んでいることを話し合うなどもできますね。
宿題は、学校で習っていることを身に着けるだけでなく、目の前の課題にどう取り組むかのスキルを身につける機会。
計画 → 遂行 → 振り返り → 修正
そんな過程を何度も繰り返し、「あれ?うまくいかないな」という思いも何度もして、
こつこつ徐々に、自分なりのよりよい方法を身につけていってくれたらいいな、そう思ってます。
それでは皆様、新しい週、良い日々をお送り下さい!
参考資料:
‘Parent as Teacher- Homework and Beyond’ Sceintific Secrets for Raising Kids Who Thrive, The Great Course