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あの3月から4年、福島の生物相、そしてこれから

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あの3月から4年。

 
 
 
1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故後の1994年に、非居住区域に入ったテキサス技術大学の生物学者Ronald Chesser氏とRobert Baker氏は、「生態系は破壊されておらず、その豊かさと健やかさに驚いた」と報告しています。事故後20年を記念して2003年に国連によって設立された「チェルノブイリ・フォーラム」は、こうした研究結果を基に、「チェルノブイリ非居住区域はユニークな生物学的多様さの聖地のようになり、生物相にポジティブな変化が起きている」と発表したそうです。
 
それでも1999年に非居住区域の調査に出向いたサウスキャロライナ大学の生物学者Timothy A.Mosseau氏とParis-sud大学の生物学者 Andres Pape Moller氏が、ツバメについて調べたところ、寿命の短縮、オスの生殖機能の低下、より小さな脳、腫瘍、遺伝的奇形、白内障などが見られたと言います。そして、「低レベル放射能区域が、生物学的多様さの聖地という見解は、限られた範囲での根拠にのみ支えられている」と批判しています。
 
Mosseau氏とMoller氏は、低レベルの放射能にさらされることが、虫から鳥、微生物から哺乳類まで全生物相にどれほどネガティブな影響を与えるかを、その後60以上の論文に発表しています。
 
 
 
その両氏が、2013年に福島の非居住区域に入り、それ以来2014年11月まで12回福島を訪ね調査を行っています。
 
そして「生物相が豊かになっていくといった兆しは全く見られない。それどころかなぜかチェルノブイリの2倍の割合で鳥が死んでいる」と報告しています。
 
といって、Mosseau氏とMoller氏は、鳥や植物などの調査結果が人にそのまま当てはまるわけではないとしています。生物の種によって放射能から受ける影響は異なると。その中でも最も影響を受けるとされる種の1つが「蝶」だそうです。琉球大学の大瀧丈二准教授によると、福島で被爆した蝶を、健康な蝶と掛け合わせても、何代にもわたって遺伝子の奇形が見られ、しかもその奇形率は世代を重ねるごとに増していったとのこと。
 
一方、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の2014年のレポートは、福島の高度に汚染された区域での生物相への影響は「不明」、汚染レベルのより低い地域では「大したことはない」としています。
 
Mosseau氏とMoller氏は、「彼らは潜在的に関連する多くのデータを無視している」と批判しています。
 
 
 
先月2月号のScience Americanの記事「Swallow of Fukushima(福島のツバメ)」に、上のような経過が載っています。こうして見て分かるのは、記事の科学者が口を揃えて言うように、とにかく、「低レベルの放射能に長い間さらされると生物がどうなってしまうのか」、現時点ではよく分かっておらず、本当にこれからということ。
 
これだけの放射能レベルなら安全、と公に出ている基準と言うのは、原子爆弾被爆者を基にしたものと言われます。100 ミリシーベルト(mSv)以下の低レベル放射能に長い間さらされるという状況でのデータではないと。
 
ちなみに、両氏が入った時点での福島の非居住区域では、1時間に330マイクロシーベルト、通常の3000倍の放射能レベルで、10時間で1年分の放射能量に達してしまうという、氏がそれまで浴びた中で最高だったそうです。
 
1年に1mSvの被爆量を目標に、非居住区のクリーンアップと整備を目指していた日本政府ですが、今も漏れ続ける原子炉へかかりきりで達成できてないと記事にあります。今は、1年に20mSvで83,000人の居住者を戻す計画だそうです。これは、原子力発電所の労働者との契約にある被爆レベルとのこと。
 
 
 
冒頭の「チェルノブイリ非居住区の生物相の豊かな多様性に驚いた」としたBaker氏は、福島に出向く予定はないとのことですが、氏が最近行ったチェルノブイリのハタネズミのDNAの研究では、低レベルの放射能にさらされることで、遺伝子奇形率は増加するというMosseau氏とMoller氏の見解を支持する結果を報告しているとのこと。
 
「もう全てそこにあるんです。あとは、観察され、描写され、発表されるのを待っているだけです」とMosseau氏は言います。
 
 
 
 
確実な研究を待っている間にも、子供達は日々成長しています。
 
政府の示す基準は、恣意的なものでしかなく。
 
今も処理ができておらず垂れ流しの放射能。
 
 
 
再稼動に向けての動きの中、「素朴な疑問」が溢れます。
 
・これだけの事故を防ぐことのできなかった当時の原子力発電所の管理能力や運用体制がどれほど改善されたのか。
 
・今の状況から、「環境に優しい原子力」と、どうしたら思えるのか。
 
・廃炉のための費用や、賠償金や交付金などを考えると、経済的に合理的ではないのではないか。
 
・動かせば溢れ続ける使用済み燃料プールをどうするのか。
 
・日本の人口が増えるとは思えない中、本当に必要なのか。地震の多い小さな国土に50基以上も。
 
・原発がなくても、電気は足りているのではないか。
 
 
2022年の原子力発電所全廃に向けて動くドイツ。そのモデルに学ぶこともできるはず。
 
日本の未来のために、世界の未来のために、考え続けていきたいです。
 
 
 

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