「家族揃って食べる」ということ、そのメリットと工夫について

025家族で一緒に食事するのって大切なんですよー、という言葉、よく聞きますよね。
 
これはどうしてなんでしょうか?
 
今日は、家族で食事をすることのメリット、日本での「食卓を囲んで家族団欒」の歴史、では忙しい現代、家族で食卓を囲むためにどんな工夫ができるかについて、ざっとまとめてみます。
 
 
 
 

なぜ私達は「食べる」のか?

まず「食べる」という行為には、
 
栄養補給や健康のためという生理的機能
美味しいものを食べて満たされるという心理的機能
食文化の創造と継承といった社会的もしくは教育的機能
 
があると言います。私達はあたかも車にガソリンを補給するかのように、単に身体を維持するためだけに「食べて」いるわけではないんですね。
 
 
 
 

家族で一緒に食べるメリット

家族で一緒に食べることのメリッについては、米国で多く研究されているようです。
 
家族で食事することで:
 
家族の絆が強まる
マナーを学ぶ
ティーンの問題行動が少なくなる
学業成績がよくなる
摂食障害や肥満の予防になる
薬物中毒・アルコール中毒の出現率低下
野菜を食べるようになる
より経済的
 
などなど報告されてます。その日の出来事などシェアして親子間の豊かなコミュニケーションが取れ、家族の絆が強まるなら、確かに、子供の問題行動の確率も減っていくのでしょうね。しかも、多人数で食材をシェアすることで、経済的。
 
 
 
 

日本政府による「家族揃って食べましょう!」の呼びかけ

日本で「家族で食事する時間を取りましょう」というようなことが言われるようになったのは20世紀終わり頃だそうです。その背景には、衝撃的な少年犯罪の影響などもあったと言います。
 
道徳の副教材『心ノート』や、文部省による『家庭教育手帳』にも、食卓の絵がたくさん掲載され、「家族で食卓を囲むのは大切なことで、その時にコミュニケーションをとりましょう」とあるそうです。
 
中教審答申の『食に関する指導体制の整備』では「食生活は心 の成長にも大きな影響を及ぼすものであり、家族が一緒 に食事をとる機会を確保すべきこと」とされ。
 
2006年の「食育基本計画」では、「食卓での家族団らんは国民の豊かな人間形成を支える。詳しく、昨今、家族と暮らしている環境下において一人で 食事をとるいわゆる〈孤食〉や家族一緒の食事で特段の 事情もなく別々の料理を食べるいわゆる〈個食〉が見受 けられる。食を通じたコミュニケーションは、食の楽しさを実感させ、人々に精神的な豊かさをもたらすと考えられることから、楽しく食事を囲む機会を持つように心掛けることも大切である」とされているようです。
 
日本政府も青少年の問題行動などを懸念し、家族間の絆を深め子供達のコミュニケーション力を高めなくてはと、「家族での食事」を呼びかけてるんですね。
 
 
 
 

日本での「食卓を囲んで家族団欒」の歴史

政府が懸念するように、現代は核家族化が進み、「個食」や「孤食」と寂しい思いをする子供達も多いけれど、一昔前の日本は、大家族が揃ってわいわい楽しそうに食事していたんだろうなあ、と漠然としたイメージを持っている方も多いかもしれません。私もその中の一人でした。
 
それでも実は、日本で「家族団欒楽しく食事」という光景が見られるようになったのは結構最近だったと言います。食について長年研究された人類学者の石毛直道氏によると:
 
まず、1920年台以前というのは、皆「箱膳」で食事をしていたと言います。そして家長を筆頭に誰がどこに座るかが厳格に決められ、子供達は一切私語が許されなかった。話を切り出すのは主に父親、そして内容も仕事についてがメイン。食事は、子供達を厳しく躾るための場だったと言います。
 
そして「箱膳」が「ちゃぶ台」に取ってかわれる1925年頃から、家族間の階級も薄れてゆき、子供の私語も少しずつ許されるように。同じ食卓を囲むことで、確かに互いの距離感も縮まりますよね。
 
その後、「ちゃぶ台」が「テーブル」に取って変わられる1970年代頃から、子供も自由に話し、会話を始めるのも主に子供から、内容も「ニュースや芸能」がメインになっていったと言います。
 
教育学者の表真美氏によると、「日本で食卓を囲み家族団欒というのが実現していたのは、実は1955-75年にかけての20年程」なのだそうです。それまでの食事の場とは、「話すの禁止」など子供を厳しく躾る場として機能していて、80年代以降は、「孤食」という言葉が出てきたように、親の残業や子供の習い事や、テレビや電子機器の普及で家族での食事が難しい状況になっていると。
 
私達が漠然と描いている「食卓囲んで家族団欒黄金時代」とは、結構最近のことで、しかもかなり限られた時期のみのことだったんですね。
 
 
 
 

忙しい現代に食卓囲んで家族団欒時間を取り入れる工夫例

・毎日とはいかずとも「週に2・3度でも一緒に食べる」から始める
できる範囲から始める。
 
・テレビや電子機器のスイッチを切る
食べる時はスイッチを入れないルールにしてみる。
 
・簡単にできる料理を取り入れる。
作る時間を減らし、一緒に座る時間を増やす。
 
・家事の分担
ママだけ、パパだけでなく、食事準備をママ・パパ・子供に分散させ、一緒に座る時間を増やす。
 
・祝う機会を見つける
家族親戚の誕生日や様々な文化圏の祭り行事やピアノ発表会や写生大会入賞や逆上がりができるようになったや知り合いのおめでたい出来事や歴史上の出来事や偉人関係の記念すべき日などなど、とにかく祝う機会を見つけ、その都度一緒に食べる。
 
・ファミリーディナー日を作る
映画の日、ゲームの日などのように、「この日は家族で食べる日」を決める。我が家も週に1度少しおしゃれしてパンを焼きと10年近く続けてますが、このファミリーディナーを軸に一週間がまわっている感があります。
 
・子供の一人がメインに料理する日を作る
何を作るか一緒に調べ、食材を買い。料理担当の子供の何とも誇らしげな様子。
 
・スケジュールを見直す
家族団欒の時間を削っても価値のあることなのか吟味してみる。
 
 
我が家も5人のアクティビティーで、毎日家族皆で一緒に座るというのは難しい状況。それでもできる範囲でなるべく、心がけていきたいですね。
 
 
 
 
 
「家族で食卓を囲み団欒」に関係するメモ:
 
・タイでは一人で食べるのはバッド・ラックを引き寄せると信じられている。
 
・韓国語で「家族」とは、「一つ屋根の下で食事を共にする」という意味も含まれる。
 
・韓国ではお一人様を歓迎しないレストランも多い。
 
・ネイティブアラスカンの村で名前をいただき家族として迎えられた時に言われた言葉が、「マイコは、私達と一緒に食事をしたから」でした。
 
・ユダヤでは祭り行事などで、何千年もの前の歴史上の出来事を象徴する食べ物を共有し、また普段からコッシャー(食べることを許されている食材)を共有することで、ユダヤとしてのアイデンティティーを再生産し、文化伝承している。
 
などなど、私達は「ただ食べてる」わけじゃない、ということ、様々な地域の文化歴史も含め、考え続けてみたいなと思います!
 
 
 
それでは皆様、今日もよい日をお送り下さい!
 
 
 
参考資料:
『食卓文明論』石毛直道著 中公叢書
「食と団ん 歴史をふりかえり、今後を考える」 表 真美

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