ギフテッド教育

ギフテッドの審査を終えて、大切に思うこと

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心理学者オフィスの待合室にて

 
ここ三週間ほどかけて、次男五歳の学校の入学審査があったのですが、一昨日昨日と二日がかりで心理学者による最後の審査が終わり、次男も上の四人の子達と同じプログラム(ハイリーギフテッド)に入ることになりました。
 
IQテストや「ギフテッド」という名称への違和感など、以前少し記してきたのですが(ギフテッド教育)、今の時点で思うことなどまとめてみます。
 

ギフテッドの特徴?

「ギフテッド」という言葉を初めて聞いたのは、長男長女をよく遊ばせることのあったお母さんからでした。その方の娘ちゃんをプログラムに入れたいと思っていると。
 
日本では聞いたこともない概念で、少し調べてみると、「ギフテッド」の子とは以下のような特徴があると言います。今回の次男の審査でも、初日に、これらの特徴が書かれた用紙を渡されました:
 
 優秀者         ギフテッド学習者

答えを知る 質問する
反復6-8回で修得する 反復1-2回で修得する
質問に答える 詳細を討論する、話をそこから展開できる / 質問に疑問をもつ
トップグループ グループを超える
アイディアを理解できる 抽象化思考ができる
興味を示す 非常に好奇心が強い
一生懸命に努力する 遊びながら、集中力に欠けたり、でもよい成績をとる
同学年の生徒といるのを好む 大人や年上の生徒といるのを好む
意味を把握する 推論する
よいアイディア 常識外れたアイディア(とっぴな、ばかげたアイディア)
簡単に学ぶ すでに知っている
学校が好き 学ぶことが好き
受容的 インテンス
課題をこなす プロジェクトを率いる
精巧に真似ができる 新しいデザインを創造する
興味を持って聞く 強い情感と意見を表す
単純で順序立てたやり方を好む 複雑さを求める
注意深い 心身ともに熱中、没頭する
機敏 鋭く観察する
Aを取る 成績はモーティベーションにならないかもしれない
自分にとても厳しい 自分にとても厳しい
情報を吸収する 情報を操る

 
 
子供達を見ると、当てはまると感じる項目もあれば、そうでないと思う項目もあります。対象によっては「一・二回の繰り返しでマスター」どころか、何度繰り返しても覚えませんし、質問されても、ぱっぱと答えるというよりは、いつまでも考え込んでなかなか答えが出てこなかったり(とても簡単に見える問題であったとしても)、どちらかというと、「スローな学習者」と見えもします。遊びほうけていたら成績は下がりますし、大人や年齢の上の子と話すのも好きですが、同じくらいの年齢の子や年下の子と遊ぶのも大好き。中には、複雑なことよりも、シンプルに手順を踏んで示されることを好む子もいます。
 
先日も娘のクラスのお母さんと話していて、周りには目から鼻へ抜けるように「できる」子がいるのに、まさか自分の息子が審査をパスするとは夢にも思わなかったと、しみじみ言っていました。私もその気持ちがとてもよく分かります。
 
これまで九年の間、プログラムの子供達や親御さんと身近に付き合う機会がありましたが、「ギフテッド」と言っても、本当に様々です。十代前半でいくつもの「有名大学」に受かったり、とてつもない発明をしたり色々なコンテストで優勝したりなどの輝かしい業績を手にする「ギフテッド」の子が表に出てくることがありますが、確かに中にはそうした子も一握りいれば、「目につき易い結果」からは程遠いような子も多くいます。
 
 
 

審査

入学時の審査は、認知テスト(99パーセンタイル以上)、学力テスト(読みと算数。98パーセンタイル以上)、IQテスト(99%パーセンタイル以上。これまでWISC, UNIT, WPPSIなどを受けてきました)の三つのスコアと共に、受け答えの様子や問題へ取り組む様子などを基にしています。五人の子供が審査を受けてきましたが、その間プログラムの担当者やスタッフの方々も何度か変わり、これまで四人の心理学者を含む十人以上の方々が審査に関わってきました。
 
小さな子にこれらのテストを受けさせることについて危惧することもありましたが、まだ五・六歳の時点の知能テストなどは、テスターの方と遊び感覚で進めるものも多いようで、五人ともテストの度に「楽しかった」と嬉しそうでした。
 
ただ以前にも少し書いたのですが、幼少期のこうしたテストでこの子は「ギフテッド/ ギフテッドでない」と振り分けることには、私自身かなりの違和感を持っています。
 
今回の次男のテストでも、知識を問うかなり基本的な設問(火曜日の後は何曜日?など)にいくつか答えられず、かなりIQ数値が下がりました(10近く)と言われました。これらを「知っている/ 知っていない」で、振り分けられてしまうわけです。
 
周りでもそんな話を何度も聞いています。時計の読み方が分からなかった、コインの計算の仕方を知らなかった、地球儀の絵を見せられ「地球」と答えてマイナスになった(答えは「地球儀」)、迷路を解いていて枠に鉛筆が当たりポイントに加算されなかった、こういったことで、条件とされる数値に至らなかったと。
 
テストというものではかられることは限られている、はじきだされた数値が何らその子の「賢さの度合い」を表すものではない、そう覚えておきたいです。
 
今回の心理学者の方には、これら答えられなかった基本的な知識というのは、学校に行き始めればすぐに覚えるようなことばかりで、次男君の場合は学校にこれまで行っていないということが問題ですね、と説明を受けました。一応「ホームスクール」をしてきたつもりだったのですが、こういった穴があったかと、謙虚にさせられるコメントでした。
 
 
 

IQは「成功」の要因ではない

入学時に手にしたこれらの数値も、年月を経るにつれ変わっていきます。プログラムの中には、学力テストの点が軒並み悪い子もいます。それは本人が他にやりたいことを見つけたためという場合もありますが、挑戦する意欲や、パッション、やる気などを失ってしまうような場合も多いのです。
 
「IQ」というのは、さして世の中での「成功」には関係ないというような論が多くあります。EQこそが大切、昨今ではGRITややりぬく力、「成長型マインドセット」ややる気こそが大切だとも言われています。
 
「成功」をどう定義するかは人それぞれですが、私自身は、いい大学に入り、いい職業につきといったことよりも、「持てる力を発揮できること」だと思っています。持てる力を最大限発揮したとしても、人目につかないような場やレベルではあるかもしれません。それでも、自身がここだと思う場で、困難に合っても立ち上がり、自身の持てる力を磨き、成長し、最大限発揮し続けられるか、それが人生での「成功」なのじゃないかと。
 
プログラムの様子を見てきて、「成功」するためには、IQ以外に大切なものが多くある、そうつくづく思います。
 
 
 

ギフテッドの子の難しさ

「ギフテッド」という検索でこのウェブサイトに来てくださる方も多いのですが、その中には「ギフテッド」の特徴ともされる、子供さんやご本人の「過度激動」に悩まれている方もいらっしゃるようです。
 
ちなみに、「過度激動」という言葉は、こちら米国では今ではあまり聞かれません。ポーランドの精神科医で心理学者Kazimierz Dąbrowski氏 (1902–1980)が唱えたこの説の原文の英訳には、胎児の間に母親が薬を摂取したり母親のメンタル面に何らかの問題があったりしたためにこうした症状が出ると言うようなことも書かれてあり、「アップデートを必要とする説」ということもあるのかもしれません。
 
それでも、子供達のプログラムにも「社会性や感情面をケアするための専属カウンセラー」がついていたりと、ソーシャル・メンタル面の問題を抱える子は多いと言えるかもしれません。今回次男の審査をした心理学者の方も、「あなたも見てきて知ってると思うけれど、ギフテッドの子って、難しかったり分からない問題に向き合った時、この世の終わりのように泣き出したり、もう全て嫌になっちゃたりという完璧主義なところがある子も多いでしょ」とおっしゃってました。それが次男には見られず、「方法論的(methodological)」で、テストがし易かったと言うことだったのですが、家の子の中にも、こうした完璧主義の傾向を何とか生かす方向で伸ばしていけたらと思う子もいます。
 
過去の「過度激動」の記事に次男の三歳頃の様子を少し挙げたのですが、五人を見ていると、小さな頃ほど、知覚感情面での起伏の大きさが目に付いたように思います。幼少期から貼紙やサインなどを見れば逐一読んで欲しがり、そこで自分が何をしていいのかいけないのかを気にし、大人子供のような面もありました。誤って玩具などがお友達に当たって痛がる様子を見れば、自分がその子より号泣して周りから呆れられたり。男の子は泣き虫繊細タイプ、女の子はどちらかというと癇癪爆発型だったかもしれません、といって、中にはおっとりのんびり型もいます。親の姿勢としては、その子の感情に寄り添いつつも、感情の渦に引きずり込まれず、明るく大らかに構えるのが丁度良いように思います。そうこうして人の間で揉まれ大きくなるにつれ、皆こうした傾向は和らいでいきました。
 
初めてプログラムに入った時、ああ似たような子がいるのだなと思ったのを覚えています。先日も、審査を受けた五歳の息子君を持つ知り合いとピクニックをしていた時、誰かが「ここに熊が出たことがある」と言った途端、普段元気一杯で活発なその男の子、お母さんの傍から片時も離れなくなりました。いつも明るくしゃきしゃきとしたお母さんも優しく「大丈夫よ」と言い聞かせるのですが、「でももしね、今クマが出てきても、誰もベアスプレーも銃も持ってないしね」と、「でももし」で延々と心配し続けます。結局最後までお母さんの傍で、走り回る他の子供達の様子を眺め、「でももし」の不安でいっぱいななまま、帰る時間になってしまいました。
 
「ギフテッド」とされる子が、大きくなるにつれ、挑戦する気持ちやパッションを失ってしまうという背景には、こうした「過敏さ」もあるのだと思います。
 
少しの失敗がこの世の終わりになってしまい立ち上がることができなかったり、周りの評価や様子を感じ過ぎて思うように力が発揮できなかったり、マジョリティーがさらりと通り過ぎることでも、立ち止まって考えたり感じてしまい。それゆえ、周りと自分とは違うと孤独感にさいなまれたり。
 
私自身、子供達にマインド面を整えるスキルや習慣を身につけさせていきたいと思う背景には、こうした理由もあります。大幅に揺れる傾向を持つマインド(思考感情)を、調整していく術を身につけさせていけたらと思うのです。
 
またできることとできないことの差が大きい場合も多く、自分はだめだと思い込んだり、できることが努力なくできてしまうこともあるため、ちょっと試してできないことはすぐに諦めたり、熱し易く冷め易かったりと、なかなか結果に繋がらないということも、周りを見ているとあるように思います。
 
 
 

発達障害とギフテッド

日本では、発達障害とギフテッドが同義語で用いられることもあるようですが、こちらでは違う意味で用いられています。ギフテッドの中にも発達障害を抱える子(2E:Twice Exceptional)がいる、ギフテッドの中には発達障害と間違われ易い傾向を見せる子もいる、ということだと思います。
 
これまでのクラスを眺めてみると、各クラスに一割弱程発達障害などの診断を受けた子がいるかいないかといった様子です。そして本人も周りも、「自分は/この子は、~が苦手」ということを互いに分かって接しています。
 
また、始終考えることに忙しかったり、好奇心に突き動かされじっとしておらず落ち着きがない子はADHDのように見えたり、深く課題に没頭してしまう子が、傍目に「こだわり行動を持っている」と見えたり、興味関心のあることをそのパッションの強さから我先にと口に出してしまう子は、「空気が読めない」と取られてしまうこともあるかもしれません。
 
プログラムに最初に入る時に、当時の担当の方に「自分が世界の中心だと思っているキングやクイーンの子も多いですから圧倒されるかもしれません」と言われたのを覚えています。蓋を開けてみて九年、確かにそういう子もいれば、空気を読み過ぎてなかなか動けない子もいたりと、色々なタイプがいるのだなと感じています。
 
 
 

大切に思うこと

我が家ではほとんどの子が四歳頃から机上で文字や数を操るといった抽象的な勉強を少しずつ導入しましたが、具体的な取り組みの一部は、「四歳から六歳頃までの机上での学習、気づき・思い・取り組み例など」に少しまとめてあります。
 
その中にも書いたのですが、これまでの試行錯誤の中何度か失敗もしながら今思うのは、子供が夢中になったり没頭して何かをする時間をたっぷりもたせてやることの大切さです。
 
子供は、その子自身で興味関心に突き動かされ何かに取り組む時にこそ、伸びていきます。大人はその邪魔をしないこと。横から手を出したり、さっと答えを与えてしまったり、答えを導き出す方法を繰り返し覚えこませたりということは、目先のテストの点には繋がるかもしれませんが、その先の知的探求心には繋がりません。
 
ごつごつと不器用に見えても、あれやこれや工夫して、自分で答えにたどり着くのをサポートしていく。そう安心して夢中になれる環境を整え、メンタル面のサポートをしてやる。
 
我が家が、子供達がまだ小さな時点でわざわざテストを受けさせるのも、ひとえにこのプログラムが、今の通常の学校システムの中では、どちらかというとこうしたことを重視してくれていると感じているためです。
 
幼少期はとにかく、五感を用いた「遊び」をたくさんさせてやることです。「効率的」な大人の目から見ると、「無駄」に思え理解できなかったりしますが、小さな子は、目の前の石ころを転がしたりといった「遊び」から、多くのことを学んでいます。子供同士、または一人で「遊ぶ」時間をたっぷり取ること、それが後の子供達の成長の土台となります。
 
目の前の学校や大学やといったことよりも、五年、十年、二十年、三十年先に、自らの力を発揮するため成長し続けているか、そうゴールを据え、今日も子供達に向き合っていきたい、そう思っています。
 
これからも、試行錯誤を続けていきます!
 
 
 
皆様、残りの週、どうぞ良い日々をお過ごしください!
 
 
 

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