マインドフルネス

マインドも身体もより健やかに? 神経科学から見た「瞑想」の可能性

IMAG011911月号の「Scientific American」に、「瞑想の神経科学:瞑想者のマインド」という特集が組まれました。(‘Mind of the meditator’ by Matthieu Ricard, Antonine Lutz and Richard J. Dacidson Scientific American November 2014)
 
米国や英国など世界的に高まりつつある「瞑想」への関心。今年になって、タイム誌やこうした米国主流の科学雑誌でも、特集が組まれています。日本でも、10月の終わりに第1回マインドフルネス学会が早稲田大学で開かれ、11月の初めには、NHKが「注目が集まっている」として特集を組んでいます:「NHKニュースおはよう日本」http://www.nhk.or.jp/ohayou/marugoto/2014/11/1106.html
 
 
 

なぜ今、「瞑想」へのニーズが高まっているのか

「いずれ『歯磨き』のように、多くの人々の『日課の1つ』になるだろう」といった声もありますが、ではなぜ「瞑想」というものが、今これほど必要とされつつあるのでしょうか?
 
私自身は、
 
1.マインド(思考感情)をワンダーさせる因子の増大
2. 「身体」を以前より使わなくなったため
 
があるのだと思っています。
 
1. マインド(思考感情)をワンダーさせる因子の増大
・テクノロジーの発達によって、瞬時に世界中の情報に触れることのできる現代。手の平のスマートフォンをオンにすれば、いつであろうとどこであろうと、次から次へと情報がなだれ込んできます。
 
・物事の変化のスピードも速いです。途切れることのない新しい情報の連なり。
 
・また多くの職種が複雑化し、「これだけしてればいい」という姿勢では生き残れず、「マルチタスク」を要求されます。
 
マインド、あちらこちらに飛びっぱなし。それが現代人の日常とは言えないでしょうか。
 
 
2. 「身体」を以前より使わなくなったため
身体を動かすことで、「マインドワンダーはまりっぱなし状態」から抜けられるもの。必死に身体を動かし汗かくなら、マインドもすっきりリセットします。
 
一昔前は、オフィスでスクリーンの前に座りっぱなしだったり、ボタン1つで家事をこなせるなんて夢のような話でした。田畑を駆け回り、水汲みや洗濯にと川を行き来ししていたら、マインドワンダーにはまり込む「余裕」なんてなかったでしょう。
 
 
 
こうした1と2のような状況の中、「マインドワンダーさせ因子」に囲まれながらも、スクリーンの前に何時間も同じ姿勢ながらも、何とか「マインドを集中させる術」を身につけられないか、それが「瞑想」というものの必要性が高まっている理由にあるのではないでしょうか。
 
情報を操る最先端に位置するグーグルやインテルなどのIT業界の優良企業が、雇用者に対しマインドフルネスを率先して取り入れているというのも、分かるように思います。溢れる情報に呑み込まれマインドワンダーしていては、先端を歩いていけませんから。
 
 
 

一昔前は、一般人には必要ではなかった?

以前は宗教に関わる者達のみに受け継がれてきた「瞑想」という行為が、「マインドを集中させ健やかな気持ちをもたらすリフレッシュメントのツール」として、一般社会で必要とされつつある。
 
それは、便利になり日常生活で身体を動かす必要がなくなったから、エキソサイズマシーンなどを用い故意に身体を動かす時間を設ける必要が出てくる、といったことと同じような仕組みに見えもします。
 
便利になり日常生活で一つのことにじっくり向き合うという機会もなくなったから、瞑想などで故意に集中力を鍛える時間を設ける必要が出てくる、と。
 
週1でマインドフルネス実践の集まりをしている友人とも言い合うことがあります。昔はこんなマインドフルネストレーニングなんて時間をわざわざ取る必要もなかったんだろうね。毎日空の様子見て、土や湿気の状態など肌で感じて、田畑の作物の調子を五感をフル活用して整えていたら、目の前の物事からマインドが飛び放たれて戻ってこないなんてこと、あり得ないものねと。
 
 
普段マインド飛びっぱなし&身体動かさなさ過ぎてやばい現代人の私自身、実践を通し、大いに助けられていると感じています。戻る場所、戻り方というものが、よりはっきりと分かるようになっていくといった気持ちです。「歯磨き」のように、一日3分でも1分でも実践することで、確かにマインド・リフレッシュになるなと。
 
そして、子育てで大切な「3つの力」について、どんな状況にあっても「安心する力」を培う「スキルの1つ」として、大いに役に立つ!と思っています。
 
 
 

瞑想時の脳には何が起こっているのか?

今回の「Scientific American」の特集記事は、2000年から15年近く、出家・在家仏教徒、仏教徒ではなくても瞑想をしているという人々の参加を得て、ウィスコンシン大学など20近くの大学機関で行われた実験研究結果をまとめたものです。
 
それによると、「瞑想は、脳の回路を変化させ、マインドや脳だけでなく、身体全体により健やかな作用を及ぼすと分かりつつある」とのこと。
 
一体それはどういうことなのか、具体的に見ていきます。
 
「瞑想」というのは、仏教に限らず、主な宗教の全てにある「黙想的な習慣行為」(contemplative practice)」にそのルーツを持つとされます。
 
細かく分けていくのならば、様々な種類の「瞑想」があるわけですが、ここで扱われるのは、仏教を通して発達し、今日仏教から切り離され、医療機関や企業や学校など様々な場に取り入れられつつある「3つの種類の瞑想」についての研究です。
 
それらは:
1.       集中した注意喚起を促す瞑想 (Focused Attention Meditation)
2.       マインドフルネス瞑想 ( Mindfulness Meditation or Open-monitoring Meditation)
3.       愛と思いやりの瞑想(Loving Kindness Meditation
です。
 
この記事では言及されませんが、仏教では、最初に1をマスターし、それから2に移ると伝統的に教えられてきたと読んだことがあります。それが時代を経て、1を飛ばして2に向かうようになったと。
 
私自身マインドフルネスを学び実践しつつ感じるのは、医療機関や学校などで用いられている手法でも、1と2を一緒くたにして教えているんだなということです。1も、マインドフルネス瞑想の一部として捉えられているようなところがあります。
 
 
 

神経科学から見た「3種の瞑想」

1.2.3それぞれの瞑想は、それぞれ違った作用があるといいます。
 
1.集中した注意喚起を促す瞑想 (Focused Attention Meditation)
「4つのサイクル」からなっています。
A.マインドワンダー → B. ワンダーしてると気づく → C. 戻す → D. 集中
これを「子犬をしつけるように何度も何度も」繰り返します。
 
瞑想時の脳をスキャンすることで、それぞれのサイクルによって、脳の異なる箇所が活性化されることが分かっています。
 
A. マインドワンダー状態というのは、いわゆる脳がデフォルトの状態です。
 
B. あ、ワンダーしてると気がついた状態では、島皮質前部(anterior insula)や前帯状皮質(anterior cingulated cortex)を含む顕著性ネットワーク(salience network)が活性化します。
 
C. 呼吸に意識を向けるなどして戻す状態では、背外側前頭前野(dorsolateral prefrontal cortex)と下頭頂小葉(inferior parietal lobe)が活性化します。
 
D. 集中し続けている状態では、背外側前頭前皮質が活性化しつづけています。
 
熟練した瞑想者ほど、このサイクルのシフトがスムーだと言います。そして、熟達した瞑想者や、集中してトレーニングを受けた瞑想者は、たとえ気を散らす条件(マインドワンダーさせ因子)に囲まれていたとしても、隙なく集中した状態(vigilant)を長く保つことができることが分かっています。
 
 
2.マインドフルネス瞑想
呼吸など何か1つのことに集中することなく、思考、感情、身体感覚の変化の流れに注意を向けます。ジャッジせず、コントロールしようとすることなく、親切に思いやりを持って、思考、感情、身体感覚どれにもはまりこむことなく、「観ている状態」であり続けます。
 
周りからの刺激に気づきつつも、反射的に反応することなく、「アテンションの隙間」を最小限にすることで、アテンションを保ち続ける状態が培かわれていきます。
 
こうして、刺激によって引き起こされるマインドの動きや身体感覚に呑み込まれることなくが少なくなり、ストレスホルモンの増大を防ぐことになるとも言います。
 
オープンモニターリング(Open-monitoring)瞑想とも呼ばれるこのマインドフルネス瞑想では、不安や恐怖を司るinsular cortex やamygdaleの活動が落ち着いていくと分かっています。いくつかの研究が、マインドフルネス療法によって、不安症や鬱の症状が改善されたと示しています。
 
私自身、この「不安感が落ち着く」ということを実感しています。元々子供時代から、地震の映像を少し見ただけで何ヶ月も寝入ることが難しかったような不安感の強い子供でしたが、この不安感の強さというのが、様々な面に影響を与えていたと今振り返っても思います。マインドフルネスを実践していくにつれ、刺激と反応の間に、以前よりは「スペース」をおけるようになってきたと感じています。
 
 
3.愛と思いやりの瞑想(Loving Kindness Meditation
友人であろうと敵であろうと、他者に対して、慈悲心(benevolence)を培う瞑想です。医療機関などでも、1・2の瞑想とセットで用いられています。
 
「愛と思いやりの瞑想」では、他者の立場に立ち気持ちを寄り添わせようとする際に活性化するtemporoparietal  junction やmedial prefrontal cortex やsuperior temporal sulcusが、活発になると分かっています。
 
この瞑想は、他者に対する愛情や慈悲心を培うこともですが、他者に共感することで自身が疲れきってネガティブな状態に落ち込んでしまったり、奉仕活動に従事する人々や教師やカウンセラーなどの「燃え尽き症候群」の回復や予防に役立つともされます。
 
例えば、病気の子の傍に寄り添うには、不安一杯顔の母親よりも、ポジティブで明るく元気な母親の方が、子供も安心して回復するわけですが、元気に振舞った子供の世話人の60パーセントが、後に「燃え尽き感」を抱いて落ち込んでしまうという調査結果もあるようです。
 
こうした相手に共感し、手を差し伸べ改善してやりたいとするほど、自身がネガティブに落ち込んでいってしまうといった状態に、この「愛と思いやりの瞑想」が役立つと示す実験結果がいくつかあるようです。
 
 
 
その他にも「3つの種類の瞑想」によって:
 
認知能力の向上 (特別なEEG:Electroencephalographyのパターンが保たれることにより)
加齢を防ぐ   (加齢と共に薄くなる脳のbroddman 9 and 10などのdarker’s tissueが活性化されることにより。また人を若く保つことにもなる細胞分裂が活性化するとも。)
分子レベルで起こる炎症や生物学的なストレスの低減
 
などを示唆する研究結果も出ているようです。
 
 
 

副作用について

「何らかの効果がある」ということは、「副作用」もあるものです。これまで学んできたなかで、指摘されたことをあげてみます。
 
・自身に深く向き合うことになるため、その過程で、より落ち込みが増す場合もある。
マインドフルネスでは、自身の内に、どんな「思考や感情」を見出したとしても、「信じない」のならば、それらは力を持たないとされます。それらは「行き来するもの」であり、「その人自身」ではないと。
 
・過程において出会う何らかの思考・感情・身体感覚に「意味づけ」し、はまりこんでしまう。
何らかのビジョンや強い身体感覚などを体験するかもしれません。それでも、それらも単に「行き来するもの」として、その「来ては去って」の流れを観ていくことです。もう一度同じ体験をしようと目指すよりも、その都度フレッシュな体験を見出します。同じ瞑想という行為であっても、その都度体験は異なります。
 
 
 

瞑想の可能性

記事の最後は、これからもより長い期間をかけた研究や、「瞑想の副作用」についての研究も進められるべきであるとしつつ、
 
「15年間の研究を通して分かったことは、瞑想というのは、脳の機能や構造に、大きな変化をもたらし、健康にとって重要な生物学的過程に、本質的な影響を与える」と結論付けられています。
 
最近の神経科学の研究では、大人であっても、脳というのは、体験によって深く作り変えられる、と報告されています。「瞑想」体験が、マインドワンダー因子溢れ、身体を動かす機会の少ない現代人に、より健やかなライフをもたらすことができるのではないか、そんな可能性が期待されています。

 
 
といって、何から始めたものか、という場合は、まずは何をするかがガイドされているユーチューブやアプリなどを用いてみるのも、とっつき易いかもしれません。どこでも手軽に3分・5分と試すことができます。
 
日本語のものがどういった様子か試したことがないのですが、私自身は、子供達や友人達と実践する時に、英語のアプリを用いることがあります。
 
興味がある方、是非お試しください!
 
 
 
読んで下さりありがとうございます。
皆様、今日もよい日をお送りください!
 
 
 

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