ストレス

「子育てのきつさ」の一因「感情労働」からくるストレス、その緩和法

『マイコー雑記』やこちら『ユア子育てスタジオ』に、「子育てのきつさ」について吐露していただくことがあります。
 
「子育てのきつさ」ってなんでしょう?
 
24時間ノンストップなお世話といった「身体的きつさ」と共に、「一体全体どう育つか分からない先行きの不安感」や「期待通りに育ってくれない失望感」、「手に入る自分の時間が細切れでしっかりとした達成感が得られない」などの「精神的きつさ」もあると思います。
 
それぞれのきつさに、それぞれ異なる対応策があるわけですが、この記事では、最近いただいた吐露や私自身の体験からも「子育てのきつさ」の一因になり得る・・・としみじみ思う「感情労働」について、整理してみます。
 
 
 
 

「感情労働(emotional labor)」とは?

本来めまぐるしく移り変わる多様な感情を抑え、「決められた感情」のみ表すことを求められる「労働」を「感情労働」といいます。
 
どんな職業であっても、ある程度の「感情労働」を必要とするわけですが、例えば、ホテルマンやウェイトレスや受付係などの接客業、医者、看護師、そして保育士や先生などは、多大な「感情労働」を必要とします。
 
接客業では、どんな無礼な客であろうと感情的な不快感を表すことなく対応する必要がありますし、医者や看護師も、患者の病状の先行きがたとえどんなに不確かであっても、安定した態度で患者に接する必要があります。また、保育士や先生なども、ネガティブな感情ばかり吐露していては、子供達を健やかに導くことはできません。
 
「感情労働」とは、「肉体労働」や「頭脳労働」という分類にはおさまりきらないこうした「感情面の働き」に着目し、考え出されたコンセプトです。
 
 
 
 
 

子育ては「濃密な感情労働」

この「感情労働」というコンセプト、「子育て」にも、まさに当てはまると思いませんか?
 
『ウキペディア』の説明ですが、

「感情労働に従事する者は、たとえ相手の一方的な誤解や失念、無知、無礼、怒りや気分、腹いせや悪意、嫌がらせによる理不尽かつ非常識、非礼な要求、主張であっても、自分の感情を押し殺し、決して表には出さず、常に礼儀正しく明朗快活にふるまい、相手の言い分をじっくり聴き、的確な対応、処理サービスを提供し、相手に対策を助言しなければならない」

とあります。
 
この「感情労働に従事する者」「子育てに従事する者」と言い換えても、まあ「腹いせや悪意、嫌がらせによる」というのは言い過ぎですが、だいたい当てはまりますよね。
 
 
 
 
 

「感情労働」は評価されにくい

「感情労働」は、認められにくいです。給料を手に取る仕事であっても、その場に適切な態度を維持するために、本人がどんなに無理をして「適切な感情」を表そうが、「給料内容」へと換算されることはありません。
 
ましてや家庭内の子育てといえば、そもそも子育て自体、「寝不足で体力的にきつかろう(肉体労働)」が、「情報を集めその子に最適に思えるメソッドを試してみよう(頭脳労働)」が、社会的には「子供を持ったら当たり前」と捉えられるでしょう。そんな待遇状況で、「感情労働がきつい・・・」などという言葉が、日の目をみることもありません。
 
 
 
 
 

「感情労働」のストレスをため込んだらどうなる?

「感情労働」のストレスは、内面に行き交う感情と、外に向かっての表現との「ギャップ」から起こります。
 
それで、上の「ウキペディアの説明」にあるように、あまりにも「自分の感情を押し殺し」、ストレスをため込んだ末、どうなってしまうのかというと、「燃え尽き(バーンアウト)」です。
 
使命感が強く、一生懸命でな人ほど、疲れ果て、意欲を失い、怒りがコントロールできなくなったり、突然冷淡になったり、うつ状態になったりと「燃え尽き」てしまうといいます。
 
 
子育てにあてはめるのなら、「親はこうでなければ」「子供にはこうすべき」と、自らの感情を押し込め、ひたむきに子育てを頑張る人ほど、「燃え尽き」てしまう場合があるともいえるかもしれません。
 
 
昨今、親の不安感やストレスなどの心の状態が、子供の成長に影響を与える、という研究結果も多く発表されています。また、育児関係の情報にも、「ママがハッピーなら子供もハッピー」といった言説が聞かれることもあります。
 
こうした研究や言説も、「ママが人生を謳歌することが大切」というように考えられるならいいんですが、「子供をハッピーにするためにママがハッピーでなくては」と頑張ってしまう人にとっては、ますます「感情労働」に拍車をかける情報となるかもしれません。
 
そうして「感情労働」のストレスを溜め込んだ苦しい状態で子供に接するならば→子供からの反応もより難しいものとなり→子育てがますますきつくなるといった、「負のスパイラル」にはまり込んでしまいます。
 
 
 
 
 

「感情労働」からくるストレスの緩和法

「感情労働」のストレスへの対応法としては、この記事にもあるように、自らの性質を見直し、いっそのこと「感情労働」をそれほど必要としない職種へと変えてしまう、といったアドバイスもされます。「感情労働」には、向き不向きがありますからね。
 
でも子育てって、「じゃ、私の性質には合わないんで、止めます」とはいきやしません。
 
 
では、どうしたらいいんでしょう?
 
実は私自身、長男が赤ちゃん時代には、ちょっとあやすだけでもどっと疲れて寝込みそうになるほど、「感情労働」のストレスをもろに感じるような母親でした。それが今では、街で赤ちゃんを見かけるだけでも、もう可愛くて可愛くて目じりが下がり、知り合いの赤ちゃんに会えば、いつまでも抱っこしていたくなるほどです。今日は、幼児ちゃんを持つママとメールの交換をしたんですが、それだけでもう、胸がきゅーんとなり愛おしくてしょうがないんです。
 
17年かけこんな大変化を遂げた私ですから、「感情労働」のストレスをどう緩和したらいいのかも、私なりによく分かります。
 
いくつかのヒントを、ざっと整理してみます。
 
 

・自分メインテナンス

こちら、
タフな子育てであるほど『親の自分ケア』が大切、『セルフ・コンパッション』の具体的方法例
にも書きましたが、自分で自分をリフレッシュし、気持ちを充電するために、できることをしていきます。
 
私自身は、ストレッチや自分マッサージ、呼吸法やマインドフルに自然の中を散歩したりとすることが助けになってます。
「感情労働」は評価されにくいのだと自覚し、日々従事している自分を、自ら労ってやりましょう。
 
 
 

・「表面演技(surface acting)」から、より「深い演技(deep acting)」へ

表面的な「ふり」も、確かにポジティブに働くことがあります。口元を少し吊り上げ目じりを下げることで、本当にハッピーな気分になるといったことは、科学的にも証明されています。
 
とはいえ、それも「ある程度」までのこと。これらの記事研究からも、表面的にその場を取り繕う対応「表面演技」と、より心からの対応「深い演技」とでは、前者の「表面演技」の方が、ストレスレベルが高いと分かっています。
 
表面的な対応より、自らの『コアバリュー(中心的価値観)』に合致した対応の方が、よりストレスをため込まない」というんですね。腹の中では舌を出して接客するよりも、「大切なお客様に満足していただきたい」といった「コアバリュー」を思い出し、より合致した対応をした方が、ストレスを感じないというんですね。
 
 
では、「子育てのコアバリュー=子育てで最も大切にしたいこと」ってなんでしょう。
 
私自身は、実はそれはとてもシンプルなことで、「子供と過ごすこの限られたひとときを楽しむ」だと思っています。
 
あれをできるようにしてやり、これも教えてやらないと、といったことよりも、とにかく「一緒に楽しむ」こと。それこそが前回の記事で紹介した子供の「心のグラス」を満たす最もパワフルなことだと思っています。この「子育てで最も大切なこと」を思い出し、より合致した対応をしていくことで、ストレスを溜め込むことも少なくなるというんですね。
 
 
つまり、楽しんでいる「ふり」よりも、本当に楽しんじゃうというわけです。
そして、そう一緒に楽しめるよう工夫してみます。
そもそも楽しんでいるなら、「燃え尽き」にもなりませんから。
 
 
 
 
 

・子供と過ごすときを楽しむ工夫をする

その子を初めて抱いた瞬間、病気から快復した時、より大きな怪我に至らなかったありがたさを思い出してみたり、その子の良い面を書き出してみるといったことも、「子供と共に過ごすことの喜び」を高める助けになります。
 
 
また、子供の喜びばっかり、親の喜びばっかりではなく、親子で楽しめる着地点を見つけ、「子供も楽しめ自分も楽しめる」ことを一緒するようにするのも、ひとつの方法です。
 
「子供とたっぷり遊んでやりましょう!」といったことがよく言われる中、逆行するようですが、私自身は、実はままごとや鬼ごっこなどを我が家の子供たちと一緒にしたことは、プレスクールのお手伝いをしていたとき以外、これまでほとんどありません。家庭では、7人分の家事や雑用や仕事やで物理的に無理だったということもありますが、子供たちと過ごせる限られた時間、何かを創ったり、自然の中へ散歩に出かけたりといった、なるべく「子供も喜び自分も楽しめる」ことを「一緒にしよー」と誘うようにしていました。
 
それ以外の遊びに誘われても、「よし、この用事終わらせたら、○○創るのはどうだろう?」や「じゃあ、もう少ししたら散歩にいこうか」などと答えます。すると、子供は自分なりに自分を楽しませる遊びを見つけていきます。
 
また外遊びでも、つきっきりで一緒に遊ぶということはなく、年齢に適し安全に遊べる場と確認したなら、目の届くところにあるベンチなどに座り、私は本を読むなどすることもよくありました。
 
 
頑張っているお母さん方の吐露を聞くと、「もう十分子供にしてあげてますから、自分が楽しむことを考えていいんじゃないでしょうか」、そう声をかけたくなることがあります。
 
子供は、楽しそうなママの姿を見て、楽しい気持ちになっていきます。
親子で「ウィンウィン」となるよう、工夫していきたいですね。
 
 
 

・内面に行き来する多様な感情を認める


感情とは、多様に移り変わるものです。以前紹介しましたが、以下のような「多様な感情を持つ人ほど健やか」という研究もあります。

「『多様な感情を認めることが健やかさの鍵』って、子育てにどう生かせる?

 

普段、抑えられた悲しみや怒りといったネガティブな感情を認めてやりたいです。覚えておきたいのは、認めることと、それらの感情を行動に移すことは違うということです。

 
とはいえ、時に行動に移し、子供の前で怒ったり涙流しても、いいんですよ。というか、私自身は、子供達と接する内に、やり過ぎない程度に色々な感情を見せてやった方がいいかも、とさえ思うようになっています。その方が、子供達も、ネガティブな感情への「免疫」を培っていきます。子供に接している時の基本が、「この人楽しそう」であれば、いいんだろうなと。
 
ネガティブな感情をないものと示していくよりも、怒り、不安、悲しみなどのネガティブな感情から、より穏やかで落ち着いた感情へと戻っていく姿勢を見せる方が、子供の感情面の発達にとって助けとなります。
 
 
 
鍵は、「ネガティブな感情を出しても、引きずらない」こと。
 
ぱっと怒っておしまいにする、わーと悲しんでもいつしか微笑んでいる、どうしようどうしようと心配してもしばらくしたら「まあ、大丈夫よね」と安心してみせる。
 
多様な感情が行きかう様に触れることで、子供達も、「あ、そっか、怒っても悲しくても、また笑顔を取り戻せるんだな」と、豊かな感情を持ちつつも、より所となる「安定した軸」を学んでいきます。
 
 
また特に「強烈な感情を持つ子」や「敏感な子」は、感情が激しいがためにそれらを抑え込む弊害もより大きく出てきます。その際、親などが、多様な感情に向き合い、落ち着いていく様子を体現していくのは、子供にとって、大きなメリットとなるでしょう。
 
 
 
 
 
子供と一緒に泣いて笑って楽しむときを、
大切にしたいですね。
そうして親子共に楽しむときこそが、
親子の「心のグラス」を満たすことにもなります。
 
裏庭から続くトレイルにて。
015
 
肩の力を抜いて、できることを、日々こつこつと。
それでは皆様、収穫の秋をお楽しみください!
 
 
 

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